俳優の唐沢寿明さんの主演映画「杉原千畝 スギハラチウネ」(チェリン・グラック監督)が5日に公開される。映画は、第二次大戦中、リトアニア領事としてユダヤ難民にビザを発給し続け、6000人近い人々の命を救ったといわれる外交官・杉原千畝の壮絶な半生を描く。杉原千畝を唐沢さんが演じ、堪能な語学と独自の情報網を武器に「インテリジェンス・オフィサー」(諜報外交官)として任務を遂行していた知られざる一面にも迫っている。
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1934年、満洲国外交部で働く杉原千畝(唐沢さん)は、堪能なロシア語と独自の諜報網を駆使し、ソ連との北満州鉄道譲渡の交渉を優位に成立させる。その過程で仲間を失った千畝は、失意のうちに日本に帰国。友人の妹であった幸子(小雪さん)と出会い、結婚した千畝は、在モスクワ大使館への赴任を希望するが、警戒するソ連から入国拒否され、リトアニア・カウナスにある日本領事館に赴任する。千畝は新たな相棒・ペシュと諜報活動を始め、欧州情勢を分析して日本に発信し続けるが、やがて第二次世界大戦が勃発し……というストーリー。
まだまだあまり知られていない偉人や英雄は数多くいる。この映画で取り上げられている杉原千畝も名前は聞いたことはあるが、どういったことをした人物なのかよく知らないという人もいることだろう。かくいう筆者も杉原が“日本のシンドラー”と呼ばれ、ユダヤ難民を救ったという概要しか知らなかったのだが、今作を見て、改めてそのヒューマニズムあふれる行動に心を打たれた。杉原自身の仕事は主にいわゆる諜報活動であり、難民たちを救う理由もなければ、日本政府からユダヤ人を救うことになるビザの発行は許可されていなかった。自身の立場や家族の身の安全などが危うくなる状況で、思い悩みながらも彼らを救うべく決断を下した杉原の行動は、日本人としてだけではなく人間として知っておくべきなのではと感じる。何が正しくて何が間違っているのかは分からないが、少なくとも杉原の決断が多くの人を救ったのは確かだ。静謐(せいひつ)な雰囲気を漂わせた作品ながら、そこには静かに燃える熱さが感じられた。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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