1977年に製作された「エピソード4/新たなる希望」を皮切りに、これまで6作品が作られてきた「スター・ウォーズ」シリーズ。その新たなる3部作の第1章「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(J.J.エイブラムス監督)が18日に公開された。今作で、悪役として登場するのが、赤い十字型のライトセーバーを操るカイロ・レンだ。エピソード4から6にかけて“ダークサイド”の象徴だったダース・ベイダーの存在を受け継ぐ者として描かれている。演じた米俳優のアダム・ドライバーさんに、話を聞いた。
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「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は、「エピソード6/ジェダイの帰還」(83年)の約30年後が舞台。砂漠の惑星ジャクーで暮らす孤独なヒロイン、レイ(デイジー・リドリーさん)を中心にストーリーが進んでいく。「家族の物語」がテーマで、家族が世代を経るごとに繰り広げられる“愛と喪失のドラマ”になっているという。
ドライバーさんはオファーを受けたときのことを「作品のあまりのスケールの大きさに圧倒された」と振り返る。しかし、その気持ちをエイブラムス監督にぶつけたところ、「物語というのは、瞬間、瞬間を一つ一つかみ砕いて積み上げていくことで、最終的に全体像が作り上げられていくものだ」との助言を受け、「これはすごく大きなSFの世界の話ではあるが、今まで自分がやってきた現実の世界(を舞台にした作品)の仕事とまったく変わらない」と自信を持ち、これまで通りの「決め込まないで役に取り組む姿勢」を貫いたという。
カイロ・レンを演じるに当たり、ドライバーさんが心掛けたのは、シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカス監督が影響を受けたといわれる黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」(58年)などを参考にし、そこから「自分のイマジネーションを広げ、できるだけ現実に地に足をつけた人物像を描いていく」ことだった。
カイロ・レンについてドライバーさんは「いつ爆発してもおかしくない人物」と表現する。エピソード4から6にかけての悪役ダース・ベイダーに抱いていた「自分自身を抑制できる、ほとんど完璧な人物」とのイメージとは対照的だ。「普通の人なら悪ととらえることが、彼の世界では悪ではなく正義なのです。彼なりに自分の行為を正当化している。そこが、カイロ・レンというキャラクターを立体づけていく、とても重要な部分でした」と語る。
189センチの長身を、今回はマスクとコスチュームで覆い隠す。「普通なら、その人の目を見て人物像を推しはかるものですが、今回はマスクがあるせいで目が見えない。そこに、カイロ・レンという人物と、この映画のメタファー(隠喩)が隠されているように思います」とドライバーさんは話す。カイロ・レンが操る赤い十字型のライトセーバーも、カイロ・レンの「ハンドメードでまだまだ粗削り」で、それも「彼を象徴している」と話す。
これまで、「J・エドガー」(11年)や「リンカーン」(12年)に小さな役で出演し、「フランシス・ハ」(12年)ではヒロインのルームメートを演じ、せりふをもらった。そして、米テレビドラマ「GIRLS/ガールズ」(12年~)でヒロインの情けない恋人を演じ、注目されるようになった。作品を経るごとに役が大きくなり、周囲の反応から、「いろんな方が自分の作品を見てくれているということは、だんだん感じるようになってきている」と実感している。
ただ、これまで、「役者としては、誰からも知られていないような、スパイのような存在でいることがベスト」と考えていたドライバーさんとしては、人に気付かれるようになったことは、「ありがたい」半面、「もう、スパイではいられないんだなあ(笑い)」と複雑な心境でもあるようだ。それでも「こうして日本に来られたり、いろんな文化に接することができたり、自分の作品を好んでくれる人たちと出会えるということは、ものすごく大きな喜びです。とても感謝しています」と笑顔を見せた。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1983年、米カリフォルニア州サンディエゴ生まれ。高校時代から演劇に興味を持つが、2001年9月に米同時多発テロが起き、海兵隊に志願。イラク派遣を目前に事故を起こし入院。米国内基地で任務をこなすことになった。退役後、インディアナポリス大学に入学、2年目にジュリアード音楽院の演劇部門に編入。09年に卒業し、「J・エドガー」(11年)や「リンカーン」(12年)などに出演。その一方で、12年から続く米テレビシリーズ「GIRLS/ガールズ」のヒロインの恋人役で注目されるようになる。ほかの出演作に「フランシス・ハ」(12年)、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」(13年)、「奇跡の2000マイル」(13年)などがある。今後、遠藤周作さんの小説「沈黙」をマーティン・スコセッシ監督が映画化する「Silence」、ジム・ジャームッシュ監督の「Paterson」などの新作が控える。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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