小林聡美&市川実日子:「物がない豊かさ」語る WOWOWドラマW「山のトムさん」

WOWOWのドラマW「山のトムさん」に出演する小林聡美さん(右)と市川実日子さん
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WOWOWのドラマW「山のトムさん」に出演する小林聡美さん(右)と市川実日子さん

 女優の小林聡美さんが主演し、石井桃子さんの児童文学を実写化するWOWOWのドラマW「山のトムさん」が26日に放送される。東京で暮らしていたハナが友人のトキやおいのアキラ、猫のトムらと田舎暮らしをする姿を描いた作品で、小林さんがハナ、市川実日子さんがトキを演じている。小林さんと市川さんに撮影エピソードや田舎暮らしへの思いなどを聞いた。

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 ◇ささいな暮らしに「小さい幸せが感じられる」

 「山のトムさん」は石井桃子さんの児童文学書「山のトムさん ほか一篇」(福音館文庫)が原作。東京で暮らしていたハナが、友人のトキとその子どもとともに慣れない田舎生活を始める。そこにおいのアキラや、ネズミ退治の目的で子猫のトムもやってきて……というストーリー。トムを中心に、静かで温かい日々の営みが描かれている。

 台本を読む前は、戦後の話をどのように現代風に落としこむのか「不安と期待があった」という小林さんだが、撮影を終えて改めて「今の時代にも共感していただけるような温かさとか、のんびりした感じとか(がある)。自然の中で豊かに暮らすってすごく幸せなことだな、ということが伝わってくる(作品)」と語る。「原作がすごく面白かった」という市川さんも「(原作とは)まったく別物になるかなと思ったけど、出来上がったのを見たら、時代も環境も違うけど、人が人を思う気持ちとか、ささいな暮らしの中の小さい幸せが感じられる作品になったなあと思いました」と感慨深げに振り返る。

 舞台は周囲にコンビニもスーパーマーケットもない自然の中の家。ゆったりした時間の流れの中で、農作業で土と触れ合いながらハナやトキの姿が現代の目には新鮮だ。小林さんは「物語の舞台が『世間の情報をどう知るんだろう』というぐらい切り離された場所での暮らしだけど、そういう(場所での)時間を目で見ることって、必要なことなんじゃないかなと思う」と話す。

 ◇独特の口調が世界観を形作る

 同作に取り組むにあたって、撮影前にどのようなことを心がけていたのだろうか。まず意識したのは「言葉遣い」と小林さんは明かす。「せりふの言い回しが、『~だわ』とか、そういう口調は普段は使わないけれど、不思議な世界観でいいのかな、と。『ネズミだわ』とかね(笑い)。どう折り合いを付けてのみ込むか、という感じだった」と小林さん。市川さんも「いつもなら直してしまうけれど、逆に『山のトムさん』の世界観が作られるのかなと」と話す。

 共同生活を送るハナたちの中で大きな存在になっているのが、ネズミ退治の目的で飼い始めた猫のトム。猫との共演について小林さんは「すごく可愛かった」といい、「彼(猫)はまだ若くてデビュー作だったので、ずっときょとんとした顔をしていた」と撮影を思い出して笑う。

 ◇物がない豊かさを実感

 ドラマでは、淡々とした暮らしの中でお互いを思いやる姿が描かれている。そういった“優しさ”について、小林さんは「優しさって、他人を思う気持ち、思いやり。余裕がないと出てこないと思う。忙しすぎるとダメなんじゃないかな、と。隙間(すきま)が作れれば、そういうのも生まれてくるのかなあと思う」と話す。市川さんも「隙間を埋めようと思えば、今はいくらでも埋められちゃうから。自分で意識しないと余裕って生まれないし、何を感じているのかさえまひする。なんでも考えられちゃうから……。余裕を作るというのが大事なのかもしれない」と話す。

 作中には、今ではあって当たり前の存在になった携帯電話もゲームも登場しない。小林さんは「年寄りみたいなこといいますけど……」と笑いながら、「ゲームとか携帯とかって、人との付き合いの中での想像力がなくなっちゃって。いくらでもうそをつけるし……」といい、「(昔は)現代人からは想像できないような、考えたり、感動したり、悲しんだりというバリエーションがあったんじゃないかなと。つくづく物がないって豊かだなと思いました」としみじみ。では、こういった田舎暮らしをしてみたいかと聞くと、小林さんは「もうちょっと近いところでこんな環境があれば(笑い)。うーん、憧れます」と楽しそうに語っていた。

 番組は26日午後9時からWOWOWプライムで放送される。

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