テレビ試写室:「わたしを離さないで」 サスペンスとヒューマンのバランスが絶妙 先が楽しみな仕上がり

ドラマ「わたしを離さないで」のワンシーン=TBS提供
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ドラマ「わたしを離さないで」のワンシーン=TBS提供

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は15日午後10時からスタートする綾瀬はるかさん主演のドラマ「わたしを離さないで」(TBS系、毎週金曜)の第1話だ。カズオ・イシグロさんの英国のベストセラー小説を世界で初めてドラマ化した。

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 「わたしを離さないで」は、イシグロさんが2005年に発表した小説が原作で、本国では100万部を突破するなど、英語圏を中心にヒットし、映画化や舞台化もされている。今回のドラマ版の脚本は「JIN-仁-」「天皇の料理番」(ともに同局系)などを手がけた森下佳子さんが担当。英国から日本に舞台を置き換え、「特別な使命」を抱えて生きる3人の男女を綾瀬さん、三浦春馬さん、水川あさみさんが演じている。そのほか伊藤歩さん、真飛聖さん、甲本雅裕さん、麻生祐未さんらも出演している。

 物語は臓器移植、遺伝子工学などを題材にしたSFヒューマンストーリーだ。ともすると“トンデモ”作品になりそうなモチーフを、生きるということ、命や人生など普遍的なテーマに昇華させることに成功している。

 シーンは大人になった恭子(綾瀬さん)から入り、世間から隔離された施設・陽光学苑で暮らす子供時代の恭子(鈴木梨央さん)へとさかのぼる。大人になった恭子は病院内で謎めいた行動を取る。病院のベッドに横たわる友彦(三浦さん)。美和(水川さん)との3人の関係はこの時点で謎に包まれており、それを病院内という無機質な場面で描かれることによってサスペンスな雰囲気をまとい、その先が楽しみな導入部分になっている。

 子供時代に切り替わると、陽光学苑という世間と隔離された施設で暮らす子供たちの質素な生活ぶりと、謎めいた校長の神川恵美子(麻生さん)の言動などサスペンス要素がさらに加わり、この学校に秘められた謎に対して興味を持たざるを得なくなる。そんなサスペンスフルな状況の中で、子供時代の友彦(中川翼さん)がいじめに遭い、周囲から孤立しているのを、新任の教師・堀江龍子(伊藤さん)がある言葉で励ます様子は、生きる意味を考えさせられ、子育てや教育にも応用できる重要なシーンだ。

 第1話のラストは再度、大人になった恭子の場面に切り替わる。恭子が最後に言った言葉が意味することは……。サスペンスとヒューマンの要素のバランスが絶妙で、サスペンスで物語の行く末に興味を持たせつつ、生きる意味を考えさせられるドラマらしいドラマといえるだろう。第2話以降の展開が楽しみだ。ドラマは毎週金曜午後10時に放送される。初回は15分拡大版。(細田尚子/MANTAN)

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