ウィリアム・シェークスピア没後400年を記念して「英国王のスピーチ」(2010年)の製作チームの元で作られた「マクベス」(ジャスティン・カーゼル監督)が、13日から公開された。マイケル・ファスベンダーさんとマリオン・コティヤールさんがマクベス夫妻に扮(ふん)している。燃えたぎるような赤の背景と迫真の芝居にくぎ付けになる。
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中世スコットランドが舞台。反乱軍から国を守ったマクベス(ファスベンダーさん)は、戦友のバンクォー(パディ・コンシダインさん)とともに荒野で3人の魔女と出くわす。魔女たちはマクベスがスコットランドの王となり、バンクォーの子孫が未来の王になると予言。その後、マクベスはコーダーの領主となり、妻(コティヤールさん)から国王ダンカンの暗殺をけしかけられる。実行して王位についたマクベスだったが、次第に心をむしばまれていき……という展開。
とにかく、主演のファスベンダーさんの芝居が絶品だ。かぶりものをしたミュージシャンを演じた「FRANK-フランク-」(2014年)や、「スティーブ・ジョブズ」(15年)のジョブズなど、常人ではない人物の心の内を繊細に演じることにたけている俳優だが、その力量がいかんなく発揮されている。「ハムレット」「オセロー」「リア王」とともにシェークスピアの4大悲劇と呼ばれる「マクベス」。日本では、黒澤明監督作「蜘蛛巣城」(57年)の原作として、また、12日に亡くなった蜷川幸雄さんの舞台でも有名だ。人間の欲望の奥底がえぐり出され、権力についた者の孤独と猜疑(さいぎ)心が浮き彫りにされる内容もさることながら、今作ではスモーキーな色合いの戦場や、血なまぐさい赤などの色彩が強烈で印象に残る。野望に燃えるマクベス夫妻の心の内だけでなく、戦争にあけくれ、おびただしい数の命が失われていった時代がリアルに胸に迫ってくる。
権力を得て人の心を失ってしまう人間の弱さを、ファスベンダーさんがジワジワとした狂気とともに演じ、見ていて圧倒されっ放しだった。照明もわざとらしくなく、城や衣装なども重厚。スコットランドの荒地の引きの風景も印象的で、顔と顔が近い対話のシーンとのメリハリで見せる。オーストラリア出身のカーゼル監督は、人気ゲームの映画化である次回作でも、再度ファスベンダーさんとコティヤールさんをキャスティングしている。TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほかで13日から公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。黒澤明監督の「蜘蛛巣城」を銀座並木座で見たことが懐かしく思い出されます。
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