市川染五郎:「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z」で初アニメ声優 「ギャップを楽しんで」

劇場版アニメ「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧のマギアナ』」で声優を務めた市川染五郎さん
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劇場版アニメ「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧のマギアナ』」で声優を務めた市川染五郎さん

 劇場版アニメ「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z『ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ』」(湯山邦彦監督)が全国で公開中だ。人気ゲーム「ポケットモンスター」の劇場版アニメ19作目で、超カラクリ都市「アゾット王国」を舞台に、空から現れた大きなポケモン「ボルケニオン」と不思議な鎖でつながれてしまったサトシが、未知なる力を秘めた人造ポケモン「マギアナ」を助け出すために奮闘する姿を描く。ゲスト声優として、アゾット王国の王女・キミア役で松岡茉優さん、ポケモン・オニゴーリ役でお笑い芸人のあばれる君らも出演。今回の“主役ポケモン”で、人間たちのことが大嫌いな幻のポケモン・ボルケニオン役で、アニメ声優に初挑戦した歌舞伎俳優の市川染五郎さんに聞いた。

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 ◇アニメ声優のオファーに「想定外でびっくり」

 今作のオファーを受けた際のことを、「自分にそういうチャンスが巡ってくるということも含めて、本当に想定外だったのでびっくりしました」と染五郎さんは笑顔で振り返り、「誰もが知っているほど愛され続けている作品で、自分がその作り手側に回れるというのは不思議な興奮を覚えました」と当時の心境を明かす。そして、「どういうものなんだろう、どういうことができるんだろう、どういうふうにするんだろうという感じでした」とアニメ声優への期待と不安を募らせたという。

 「ポケモン」に出演することについて、周囲の反応は、「子どものときから(『ポケモン』の)ファンの後輩がいて、逆に彼の方が『えっ!?』ってびっくりし、興奮していました」と笑顔で明かし、さらに「歌舞伎の舞台で一緒だった子役さんは、今まさにはまっているという子だったので、尊敬のまなざしで気持ちよかったです(笑い)」とちゃめっ気たっぷりに話す。

 初めての声優挑戦だが、「舞台やドラマ、映画などではいろいろな役を演じていますが、当然ですけれど自分の体を使っていて、自分の(体の)大きさの中で役を作っていきます」と前置きし、「アニメの場合、(自分の体ではなく)“物体”から違うもので芝居ができるという面白さはありますが、逆にそれが難しい部分でもありました」と実写とアニメの違いを交えながら語る。

 ◇アフレコではキャラクターの「大きさを常に意識」

 染五郎さんが演じたのは巨大なポケモン・ボルケニオンだが、「監督から『大きさをイメージして芝居をしてみてください』ということを言われたので、ただ振り向くだけでも人と比べるとはるかに大変な動きになるわけですから、その大きさを常に意識していました」と言い、「振り向くだけ、息を吸うだけでも、スケールというか大きさは想像するしかないのですが、どうやって自分ではないものに化けられるかということをイメージしました」と役作りについて説明する。

 アフレコの感想は「画(え)があってそれに合わせていくというのが難しく、本当に試行錯誤しながらという感じでした」と言い、「本職の方はやはりすごい。声ですべてを表現するというのは、また違うと思いました」としみじみと語る。

 役柄的には松本梨香さん演じるサトシとの掛け合いがメインだが、「歴史ある作品に初めて参加させていただくので、もう松本さんの声に乗っかろうと」と染五郎さんは考え、「テンポや色合いにうまく合わせていければと思いましたし、(『ポケモン』を)ずっと見られている方、携わっている方々の中に入れていただくわけなので、空気感や色合いに染まってできるようにと思ってやりました」と振り返る。

 自身が演じたボルケニオンについて、「ただなんか怖い、強いということではない、ちょっと愛嬌(あいきょう)があって、大きい割には可愛らしいところがあるというところが魅力的だなと思います」と言って笑顔を見せる。

 ◇子供の頃のヒーローは…

 染五郎さんは「ポケモン」の魅力を、「海外に行ったときにもポケモンを見かけましたし、日本だけでなく世界中で、そして幅広い世代に愛されている作品ということを、改めて感じました」と言い、続けて、「自分が生まれる前からあって誰もが知っているという作品はありますけれど、(作品の)誕生のときから知っていて、それが誰もが知っているものになっているというのもすごい」と「ポケモン」という作品の成長に驚く。

 子供も大人も楽しめる物語が繰り広げられるが、「前向きさも魅力で、ボルケニオンも暗い過去がありますけど、常に進んでいるという感じはします」と今作と絡めて説明し、「だからこそ、いろんな壁をクリアし前に進んでいく力強さ、進むことで何かが達成できるなど、前を向いて進んでいくことの大切さというのはあるのかなと」とメッセージ性を強調する。

 染五郎さん自身が子供の頃は、「ヒーローもので遊んでいたこともありますが、それと同じところに歌舞伎もありました(笑い)」と言い、「歌舞伎のヒーローというのもたくさんいますので、そういうものに憧れて、まねして遊んだりもしていました」と幼少時のエピソードを明かす。続けて、「歌舞伎は自分の親がやっているもので、それは親への憧れもあったのでしょうし、そのキャラクターのカッコよさでもあったのだろうと思います」と自己分析する。

 ◇アニメ声優にもう一度挑むなら「悪役も面白い」

 今作の見どころを、「愛され続けている作品に参加させていただけて自分自身、興奮していますし、いまだに信じられない感じですが、人と交ざり合うことはできないと背中を向けて心を閉ざしているボルケニオンが変化したり、(サトシやマギアナとの交流を通じて)絆といったものが強く出ている」と解説し、「バトルは激しいですが、そこに温かさや優しさを感じていただける作品だと思うので、この夏、興奮してさらに温まってほしいと思います」とアピールする。

 そして、「自分としてもどれだけ“化けられるか”と思って演じてみたので、市川染五郎とボルケニオンの声に違和感を感じていただきつつ、ギャップを楽しんでいただきたい」とアピールする。

 今回のアニメ声優挑戦について、「歌舞伎も男に限らず女にもなれるし、それこそ化け物にもなったりと、いろんなキャラクターに化けられますけれど(笑い)」と前置きし、「自分の体の大きさ以上のものはできないわけで、そこはアニメには制限がないので、そういう魅力はとてもあります」と目を輝かせる。再び声優に挑戦するなら……。「悪役も面白い。ボルケニオンもそうですけれど、超人的な何か力や技を持った役というのは魅力的です」と笑顔で語った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1973年1月8日生まれ、東京都出身。79年の歌舞伎座「侠客春雨傘」で三代目松本金太郎を襲名し初舞台を踏む。78年、NHK大河ドラマ「黄金の日日」でドラマデビューを飾る。81年の歌舞伎座「仮名手本忠臣蔵」で七代目市川染五郎を襲名。97年には映画「ラヂオの時間」に出演。「アマデウス」などの現代劇や、劇団☆新感線の舞台といった歌舞伎以外の演劇や、テレビや映画などでも幅広く活躍している。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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