佐々木蔵之介さんの主演映画「超高速!参勤交代 リターンズ」(本木克英監督)が10日、公開された。2014年に公開され、ヒットした娯楽時代劇「超高速!参勤交代」の続編で、佐々木さん演じる湯長谷(ゆながや)藩(現在の福島県いわき市)の藩主・内藤政醇(まさあつ)と藩士たちの奮闘をユーモラスに描いている。「まったく続編を想定していなかった」という本木監督に話を聞いた。
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前作は、「金」「人手」「時間」のない湯長谷藩の面々が、たった7人で江戸へ向かう参勤交代の様子を描いた。脚本を手がけた土橋章宏さんが第38回日本アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞したほか、第57回ブルーリボン賞で作品賞を受賞した。
本木監督は、前作を「作り手としては自信があったけど、(公開前に)周囲から不安の声もあったので、予想外のヒットだった。娯楽時代劇で(映画賞などの)批評の対象になったことが、とてもうれしいことでした」と述懐。一方で、続編は「想定していなかった」といい、「(前作で)受賞したことは忘れて、楽しくて“乾いた笑い”のある時代劇にしたかった」と語る。
「リターンズ」は、前作の約2カ月後という設定で、江戸から故郷への帰路を描いた。湯長谷藩一行が出発すると、藩で一揆が起きたという知らせが入る。2日以内に一揆を収めなければ、藩はお取り潰しになる運命で、それを阻止するため、一行は、行きの倍の速さで帰ることになる……というストーリー。
続編の制作は、15年の初めごろに決まり、プロデューサーと脚本の土橋さんを交えて、さまざまなバリエーションを考えた。湯長谷藩に戻った後の出来事や、スター・ウォーズを模した「老中の逆襲」という案も出たものの、「単純明快な娯楽作品」を目指して帰路の物語に決まったという。
一行は故郷、湯長谷を目指し、目の前に現れるさまざまな困難を、知恵と工夫で乗り越えていく。今回は、“敵”として幕府の老中、松平信祝(のぶとき)が味方につけた尾張柳生の刺客や、信祝が率いる1000人にも上る幕府軍が登場。前作よりスケールアップしたアクションシーンも見どころの一つだ。
本木監督は「チャンバラは人を殺すことなので、そこをどうやって笑いに結びつけられるのかと、あまりリアルに表現せず、日本人の観客なら“お約束”と分かるぐらいの“手加減”が難しいところでしたね」とこだわりを語る。
また「人物の心情にシンクロした音楽作りをして、かなり丁寧に作り上げられたのが(物語にとって)大きかった。登場人物の心情に合った音楽をミュージカルのように作っていくこともしました」といい、政醇と、前作で政醇の側室になった深田恭子さん演じるお咲との関係を描くシーンにも、その手法が使われている。
岩城弁を話す湯長谷藩に対し、今回、刺客として登場する尾張柳生は尾張弁。岩城弁VS尾張弁の応酬も見どころだ。岩城弁には方言指導スタッフがいたものの、尾張弁には専門のスタッフがおらず、俳優がそれぞれ知人に聞くなどして、せりふを方言に変えたという。
本木監督は「名前がある役だけで80人近くいると、一瞬で色分けをしなきゃいけない。方言は大きな力になりました。真面目な話をしているのに、(尾張弁で)『にゃーわ(=ないわ)』『きゃーるぞ(=帰るぞ』とか言われると、ほほ笑ましい感じがしますよね。人間味が出る」と満足げ。
そして「方言は、その地域の人にとっては間違っていても、その地域以外の人が聞くと(その地域の言葉だと)分かるというぐらいにしました。当時はもっと色濃く、地域色のある話し方をしていたんだろうと思うし、方言が消滅するかもという危機感もある。もっと大事にした方がいいんじゃないかというメッセージもありますね」と思いをはせる。
撮影中は「期待と不安が半々ぐらい。面白いのか、やり過ぎていないか、引かれないか……、自分が“1人目の観客”という気持ちで撮っていった」と振り返る本木監督。公開前から3作目を期待されることが多いと言いながらも、「一作、一作が勝負ですから。まずは往復したので、一区切りと考えています」と、さらなる続編への考えがないことを明かす。
「かつて日本人は時代劇を、青春映画、恋愛映画などの娯楽作品として観てきたけれど、そういう機会が減ってきた。今の若い人にも、時代劇だからこそできる、表現の自由さとか、面白さを感じてもらえれば」と作品に込めた思いを語った。
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