名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
毎クールごとに“今期の覇権アニメ”をひたすら探し求める傾向がある昨今。そんな中、大ヒット作の続編が、以前と同じように盛り上がりを見せるケースはほとんどない。どうして続編はそこまで盛り上がらないのか。“オタレント”の小新井涼さんが、ファンの目線から分析する。
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どんなに人気の作品でも、アニメの続編が1期を上回る盛り上がりをみせるのはなかなか難しいようです。かつて一大ムーブメントを起こしたあの「進撃の巨人」でさえ、今期放送中の続編は、1期ほど爆発的な盛り上がりは見せていないように思います。出来が残念なわけではなく、より迫力が増した映像で世界観の謎に迫ってゆく緊張感は、むしろ期待にたがわぬ面白さです。だとすると、単純にファンの心離れが原因なのでしょうか。
かく言う自分も、好きなキャラの生誕祭を行い、朝イチでコラボグッズを買いに走っていた1期放送当時と比べれば、確かに「進撃」熱は落ち着きました。とは言え続編放送までの間に「飽きた」、「嫌いになった」というマイナスの変化があったわけではありませんし、今でももちろん大好きです。そこでふと気になったのですが、実は続編作品の盛り上がりを阻害する大きな壁となっているのは、心離れなどのマイナスの変化ではなく、むしろそういった“一見ポジティブな変化”の方なのではないでしょうか。
“一見ポジティブな変化”とは、まずファンの中でその作品が「今の一番」から「殿堂入り」へと変化することです。作品に夢中になった時の情熱を続編放送時までそのまま維持するのは難しく、その間に他の作品に夢中になることもあります。でもこれは「熱が冷めたわけではない!」と、ファンの中でちょっとした葛藤が起きる時、妥協策として、作品の位置付けが「今の一番」から「殿堂入り」へと変化するのです。
どういうことかといいますと、自分の中でその作品を「不動の名作」に据える代わりに、ファン活動の優先順位からはいったん外します。そうすることで、作品への愛は保ったまま、「『進撃』は変わらず好きだけど、今の一番は『けものフレンズ』!」という状態にするのです。
そして、それと同時に起こるのが、「推し」から「好き」への変化です。「推し」が言葉の通り、周りに勧めたり積極的に情報収集や情報発信をしたりするほど夢中になっている状態だとしたら、「好き」は積極的な行動をあまり伴わないいわば「スタンバイ状態」です。「好き」な作品には思い出も思い入れもあり、たまに見るとやっぱり楽しい。しかしファンを積極的に行動させてムーブメントを起こすのは、「推し」な作品の方なのです。
こうした変化は、作品人気のマイナスにはならない“一見ポジティブな変化”です。しかし「殿堂入り」した「好き」な作品の続編は、一定の人気が保てる代わりに、いわゆる「今期の覇権アニメ」にもなりにくくなります。“予想外の大ヒット”が多い最近は特にそうで、変わらず面白いものを改めて共有するよりも、自分たちで新しく発見した面白さを広める熱量の方がはるかに大きくなっているからです。「進撃」が1期ほどは盛り上がらないのも、良くも悪くも「今さら騒がなくても面白いのは周知の事実」な作品になってしまったからなのでしょう。続編の盛り上がりを阻害する“大きな壁”となっているのは、よく挙げられる作品のクオリティー、飽き、トレンドの変化といったマイナス要素というよりも、このように「作品は変わらず好き」という、一見ポジティブなのにその実消極的な変化の方なのだと思います。
そうなると、続編作品が1期を超えるほどのムーブメントを起こすには、作品の出来はもちろん、もう一度ファンの「今の一番」の「推し」作品に返り咲く必要があります。これはある意味、アンチや期待はずれといったネガティブなものよりよっぽど手強いものです。「ユーリ!!! on ICE」や「おそ松さん」と、まだまだ話題作の続編が控えていますが、それらがこの大きな壁を超えるには、ファンが1期で作品にハマった時の記憶を塗り替えてしまうほどの、強烈なインパクトが必要になってくるのではないでしょうか。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。明治大学大学院情報コミュニケーション研究科で、修士論文「ネットワークとしての〈アニメ〉」で修士学位を取得。ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)の全アニメを視聴して、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続中。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、現在は北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程に在籍し、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。
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