SF映画の金字塔とうたわれるリドリー・スコット監督が手がけた映画「ブレードランナー」(1982年)。その30年後を描いた映画「ブレードランナー2049」(ドゥニ・ビルヌーブ監督)が27日に公開された。今作のPRのために来日したアナ・デ・アルマスさんとシルビア・フークスさんの2人のヒロインが取材に応じ、役作りや演じた役の魅力、さらに、美しさを保つ秘訣(ひけつ)を語った。
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「ブレードランナー2049」は、ライアン・ゴズリングさん演じるブレードランナー“K”が、人造人間である“レプリカント”の旧式モデルを“解任”する業務をこなす中で、人類の存続を揺るがす驚くべき秘密を知ってしまう……というSF映画だ。その秘密を暴く鍵を握る男として登場するのが、30年間行方不明になっていた、かつてのブレードランナーのデッカードで、スコット監督のオリジナル版に引き続き、今回もハリソン・フォードさんが演じている。
フークスさんが演じるのは最新型レプリカント、ネクサス9型の「ラブ」で、Kにとって敵となる。当然ながらKとの格闘シーンもあり、もともとモデルとしてキャリアをスタートさせたフークスさんにとって、今回のアクションはかなりのトレーニングを必要とした。しかし万全の態勢で臨んだため、撮影中、危険な目に遭うことはなかったという。
「最初の数カ月は、武術の先生について、実際に相手を蹴ったり、殴ったりして動きを覚えました。そのあとしばらくしてからライアンと一緒に、相手に当てない戦い方を学んでいきました」と振り返るフークスさん。それでも、ゴズリングさんとの格闘シーンの撮影前夜は「戦々恐々としてよく眠れず、悪夢を見たほどでした」と苦笑交じりに明かす。
一方、Kを献身的に支えるヒロイン「ジョイ」を演じたアルマスさんは「私がジョイを特に好きな理由は、彼女が、ほかの誰かの夢をかなえさせてあげたいと思うからです。彼女は頭脳明晰(めいせき)でいろんなことを学び、自立しています。その一方で嫉妬もするし、怒りもする。そして、自分を犠牲にしてでもKに尽くそうとし、他者とつながりたいという気持ちがとても強いのです」と説明する。
隣に座るフークスさんもその言葉にうなずきながら、「彼女(ジョイ)は“女性の革命”のようなものを具現化していると思う」と話すと、アルマスさんがその言葉を引き取り、「将来の完璧な女性像であり、男性が持っている女性に対するイメージ以上の存在であるということを、彼女は見せようとしているのだと思います」とその魅力を語った。
フークスさんは、その美貌はもとより、「鑑定士と顔のない依頼人」(2013年)での演技が高く評価され、米国の「VARIETY(バラエティー)」誌では、「2017年注目すべきヨーロッパ俳優の10人」に選出された。かたやアルマスさんも、06年に女優デビューをして以来、ロバート・デ・ニーロさんやキアヌ・リーブスさんといった大物と共演。そして今作でのヒロイン役と、今後の活躍が期待される美人女優だ。そんな2人だからこその美しさを保つ秘訣を聞いた。
アルマスさんは「寝ることね」と笑顔で即答。すかさずフークスさんも「私も寝るの、大好き(笑い)」と賛同する。運動や食事について、フークスさんは、今回のラブ役でのトレーニングが「あまりに過酷だった」ことから、スポーツは「嫌になってやめました(笑い)」と明かし、「でも、ヨガやピラティスは好きです。あと、犬を2匹飼っていて散歩をしています。スポーツといえば今はそれだけ。でも、無条件に愛情を注げる犬と一緒にいると、とてもリラックスできるので、おそらくそれが、私の健康や美に役立っていると思います。あとは水をたくさん飲むこと」と独自の美の秘訣を披露した。
一方、アルマスさんは、「(美容のために)やらなければいけないのは分かっているのだけど、やっていません」と打ち明け、「そのとき任せ。気にし過ぎないようにしています。美の基準というのは変化するものだし、トレンドも変わっていくでしょう? いま一番新しいのはこれ、という情報は入ってくるけど、そういうことにはあまり影響されないようにしています。日課にしていることもありません。食べたいときに食べて、好きなときに寝る。そうしている方が、たぶんストレスを受けずに済むでしょうし、それが私の美の秘訣かしらね」と話した。
ところで、レプリカントは、人間のように“老化”しない。たとえ“劣化”しても、修理すれば元通りになり、さらに“進化”できる。その部分だけ切り取ると、レプリカントの方が人間より優れているように思われる。そこで、今回レプリカントを演じたフークスさんに「それでもやはり人間の方が優れていると実感したこと」を聞いてみた。
するとフークスさんは「(人間は)自分の記憶を持っているということね」と回答。そして、「他の人から与えられたものではなく、自分の世界観を持ったり、考えを持ったりできるということ。その記憶の上に、さらに記憶を重ねていけるということ。年を取ることで人格も変化していく。自分だけの記憶を持っているということは、自分が人間だと自覚できることでもあり、それは自立につながる。そういうことがすごく重要なことだと思うわ」と力を込める。
さらにフークスさんは「年を取らない、イコール、女性の美が衰えない、という意味での質問だとしたら……」とした上で、「私たちは、若さを保ちたい、死ななければいいと思う。でも、年を取るということは、おそらく、自分をもっと満足できるようにしていけるということでもあると感じています。それは人間が、そういう(老いという)ものを受け入れることができるからです。つまり、自分のことをどんどん好きになっていける。そして、外見だけではなく、自分の内面をもっと磨くことができる。ですから、年を取るということは、より深みのある、面白みのある人間になれることだと思います」と言い切る。
その言葉を引き取るようにアルマスさんは、人々がネット上で自分の情報を公開する最近の風潮に言及しながら、美の本質を置き去りにした外見偏重の傾向が、女性に必要以上のプレッシャーをかけていることを「とてもデリケートな問題」と指摘する。その上で、「特に若い人には間違ったメッセージを送らないよう、私たちを含め、社会全体が注意していかなければいけないと思います」と呼びかけた。映画は27日から全国で公開中。
<アナ・デ・アルマスさんのプロフィル>
1988年4月30日生まれ。キューバ出身。14歳からシアター・スクールで演劇を学び、「カリブの白い薔薇」(日本未公開、2006年)で映画デビュー。ほかの出演作に「ノック・ノック」(15年)、「スクランブル」(17年)がある。
<シルビア・フークスさんのプロフィル>
1983年6月1日生まれ。オランダ出身。14歳のときにスカウトされ、モデルとしてキャリアをスタートさせる。2007年に映画デビュー。日本で公開された出演作に「鑑定士と顔のない依頼人」(13年)がある。
(取材・文・撮影/りんたいこ)
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