おっさんずラブ:目指すは「月9」? 男同士の恋愛を王道で描く

ドラマ「おっさんずラブ」第1話の一場面=テレビ朝日提供
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ドラマ「おっさんずラブ」第1話の一場面=テレビ朝日提供

 俳優の田中圭さん主演の連続ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系、土曜午後11時15分)の初回が21日に放送された。33歳のモテない“おっさん”主人公が、乙女心を持つおっさん上司と、イケメンの後輩男子から迫られるラブストーリー。異色とも思えるドラマだが、「目指したのは“月9”の王道恋愛ドラマ。男女でやると見飽きたと思われるようなラブストーリーを男性同士でやることで、また新しい楽しみ方ができるんじゃないか」と狙いを明かす番組プロデューサーの貴島彩理さんに、制作の意図や見どころを聞いた。

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 ◇ふとした問いからスタートした企画 「結婚相手は異性じゃないといけない?」

 「おっさんずラブ」は2016年12月に単発ドラマとして放送され、話題となった作品。同局ドラマ部の若手のトライアル企画としてスタートしたといい、今回はその連続ドラマ化だ。当時アシスタントプロデューサーだった貴島さんは、ドラマの企画を考えた際に「壮大なメッセージ性のあるドラマを考えていたわけではない」と話す。

 「ある日、大学時代の女友達の家に泊まりに行ったんです。仕事終わりの夜遅くに行ったのに『おかえり』と出迎えてくれて、夕飯も作ってくれて。朝は、いつまでも寝ている私を起こしてくれて、朝食にパンケーキとコーヒーが出てきたんです。その時、『マジか……妻!』と思ったんですよ。それで、同性だけど『この子と結婚しちゃいけない理由ってなんだっけ? いいじゃん、妻で』と思って。その時の思いをそのまま企画にしたんです」と明かした。

 そうした経験が、女好きだけどモテない33歳のおっさん主人公・春田創一が突然、ピュアすぎる乙女心を隠し持つおっさん上司・黒澤武蔵(吉田鋼太郎さん)と、同居しているイケメンでドSな後輩の牧凌太(林遣都さん)に告白される……というおっさん同士の恋愛ドラマになった。単発ドラマの放送後は「続きが見たい」「感動した」という声が多く、「LGBTの方からも『勇気をもらった』という声をいただいて、すごくうれしかった」と貴島さんは語る。

 ◇男同士の恋愛を真剣に描く 胸キュンシーンも満載

 連続ドラマでは、春田の幼なじみの荒井ちず役で内田理央さん、武蔵と30年連れ添った末、離婚を切り出される黒澤蝶子役で大塚寧々さんらも出演する。キャスティングについては「芝居力のある方々にやっていただきたかった。こういう作品だからこそ、制作する側もキャストもすごく真剣にやらないといけない。真剣にやっていることが笑いを生む」と話す貴島さん。

 制作の上で目指したのは「月9の王道ラブストーリー」。男同士の恋愛だからといって別のニュアンスを加えるのではなく、「全く同じように作ることを心掛けている」。「描いているのは真剣な恋愛で、たまたまヒロインがおっさんだっただけ。ヒロイン役の吉田さんにも、『男の人がすごく好きな普通の男の人なんです』というお話を最初にさせていただきました」と語る。

 音楽はドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」、映画「恋空」などを手がけた河野伸さんを起用。台本の打ち合わせなどでも、「普通月9だったら、こうなるじゃないですか」というやりとりが度々あるという。

 男女の恋愛ドラマで描かれるデートや相手の親へのあいさつなどのイベントも「男同士だからと逃げずに全部描いていきたい」と話す。単発ドラマでは、武蔵が春田に手作りのお弁当や手編みをマフラーを渡すといった“ベタ”な愛情表現も描かれた。今回も「武蔵はお弁当も作りますし、壁ドンからデコごつ、耳つぶ(耳元でつぶやく)まで胸キュンシーンは余すところなくお見せできると思います」と笑顔を見せる。

 最近は少なくなりつつある王道の恋愛ドラマ。「みんなそういうドラマを好きだったはずだし、名作もたくさんあります。『もう見飽きた』と思われるような、めちゃめちゃ王道の恋愛ドラマを男性同士でやることで、また新しい楽しみ方ができるかもしれない」と熱がこもる。

 ◇男同士の恋愛に直面した女性たちの視点も

 今回は、春田や武蔵、牧ら男たちの恋愛に影響される女性陣の姿も描かれる。大塚さん演じる蝶子は、突然、熟年離婚を夫に切り出され、その理由が男だったという衝撃の事実を知る。貴島さんは「長年連れ添った好きな人のカミングアウトを受け入れられるかという大きなテーマにも切り込んでみたい」と話す。

 内田さん演じるちずは、実家暮らしで「イケメンの執事と結婚したい」と言いながら、なかなか結婚できない女性。「今は結婚できない男女が増えていて、私もそうなんですけど、ラクすぎて実家を出られない(笑い)。都合のいい考えなんですけど、家に帰ったら洗濯をしておいてほしいし、『お茶』と言ったらお茶が出てきてほしい。そんな条件を捨ててまでなぜ結婚しなきゃいけないんだっていう理論があるから、それを超えて結婚に踏み出せない」と話し、そうした人を象徴しているのが、ちずの存在だという。

 普通の恋愛ドラマなら、幼なじみ同士の春田とちずが結ばれるという展開が多いが、「おっさんずラブ」は筋書き通りにはいかない。「うだうだしていたら、男に取られる」という要素が加わってくる。

 貴島さんは「どのキャラクターも応援したくなるようなキャラクターに描いていきたい。最後に主人公の春田が何を選ぶのか。そんな恋愛ドラマに視聴者の方も巻き込まれていって『最終回、どうなるの!?』と楽しんでくれたら、うれしいですね」と狙いを語った。

 21日に初回が放送されると、SNS上には「部長さんクソ可愛い」「ヒロインもライバルもどっちも可愛くて困る」「おっさんの恋にこんなにハマるとは」といった声があふれ、ラストには男同士のキスシーンも飛び出し、早くも盛り上がりを見せている。異色のように見えて、実は王道。「おっさんずラブ」は、恋愛ドラマを見ながらやきもきした感覚を思い出させてくれるのかもしれない。

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