M-1グランプリ2024 決勝戦
決勝戦 FIRST ROUND 前半戦 1~5組目
12月22日(日)放送分
今年5月にプロ16戦目で世界3階級制覇を成し遂げ、10月には元王者を70秒KOで退けたWBA世界バンタム級王者、井上尚弥選手。今後も活躍が期待される井上選手が、インタビューで先の初防衛戦と今後の展望について語ったほか、日本時間12月2日に米国で行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、デオンテイ・ワイルダー選手(33=米国)対タイソン・フューリー選手(30=英国)のこと、12月9日にアメリカで行われるワシル・ロマチェンコ選手(30=ウクライナ)対ホセ・ペドラサ選手(29=プエルトリコ)も展望した。
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――10月7日のファン・カルロス・パヤノ選手(34=ドミニカ)との初防衛戦、鮮やかな70秒KO勝ちでした。自分でも理想的だったと思いますか。
一発で終わらせたので理想的ですね。自分では長丁場になって、もっともつれるかと思っていたので1ラウンドKOのイメージはなかったんです。実際に戦ってみてサウスポーのパヤノは、半身で懐が意外に深くスピードもありました。踏み込みは早かったけれど思ったほど出てこなかったので最初の10秒、20秒は「どうやって崩そうかな」と思っていました。
――勝負が決するまで70秒でしたが、濃い時間だったわけですね。
濃密な時間でしたね。最後の右ストレートの感触はズーンという感じで、バッチリでした。その前の左は踏み込んで打ったもので、それが良かったと思います。
――あの雰囲気のなか、もっと戦っていたかったという思いもありますか。
それはないです。まわりのファンはもっと長く見たかったかもしれないけれど、自分も身内も1秒でも早く終わった方がいいんですよ。
――試合は何度も見直しましたか。
ダイジェストも含めれば50回ぐらいは見たと思います。あの舞台と同じ状況、同じ条件で、ああいう勝ち方は二度とできないんじゃないかと思います。
――パヤノ戦の2週間後、アメリカで次戦の相手、IBF王者のエマヌエル・ロドリゲス選手(26=プエルトリコ、19戦全勝12KO)の試合を偵察していますが、どんな印象を持ちましたか。
(ロドリゲス選手は)すべての面でまとまった選手という印象です。後半に失速しましたが、前半に見せた一つ一つの技術はさすがチャンピオンというものでしたね。良い面、そうでない面、両方見ることができました。
――攻略の糸口は見えましたね。
なんとなく見えたかなという感じです。誰が相手であろうと僕が勝負のカギにしているのは距離感で、自分のパンチを当てる距離にいかに入るかということなんです。ロドリゲスとは噛み合うと思うけれど、お互いにパンチが当たる距離になると思うので、集中力を欠かした方がやられるという勝負になると思います。
――プロデビューから6年がたち、17戦全勝(15KO)、3階級制覇という実績を残しています。予想どおりの歩みですか。
自分で思い描いていた予想だと、まだ世界チャンピオンになっていないんですよ。 17戦じゃないですか、チャンピオンになる前にそのぐらいのキャリアを積みたいと思っていたので。早いけれど、頑張ったとは思うし、いいところに来ていると思います。
――この先の目標も教えてください。
まずは出場中のトーナメント(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)で優勝して、そのうちにスーパー・バンタム級に上げて、とそこまでが考えられる範囲ですね。
――さて、12月2日にアメリカのロサンゼルスで行われるWBC世界ヘビー級タイトルマッチ、デオンテイ・ワイルダー選手対タイソン・フューリー選手に話題を移したいと思います。井上選手はヘビー級というとどんなイメージを持っていますか。
迫力、パワー、派手なKO……2メートルを超えるような大きな男たちが戦うわけで、軽量級にはない倒し方などが見られますよね。たとえばロープにもたれこむようなクリンチであったとしても迫力があるじゃないですか。そういうところがヘビー級の魅力だと思います。
――ヘビー級と聞いて真っ先に誰をイメージしますか。
マイク・タイソン(米国=1980年代~2000年代に活躍した元世界王者)ですね。もちろんライブでは見ていませんが、映像で見てもすごいスピードですよね。体の大きな相手にスピードを生かして潜り込む、そしてワンパンチで倒してしまう。これから僕も階級を上げていった場合、踏み込みのスピードは重要になってくるはずなんです。僕はバンタム級でも大きい方ではないので、スーパー・バンタム級、フェザー級と上げていく場合、相手はもっと大きくなる。そう考えると、角度、頭の位置、踏み込みなどタイソンの戦い方は参考になりますね。
――現役のWBC世界ヘビー級王者、ワイルダー選手についてはどんな印象を持っていますか。
たくさん映像を見ているわけではないですが……とにかくパンチを当てて倒してしまうという印象ですね。攻撃はシンプルだと思います。特に右ストレートは強そうですね。
――40戦全勝(39KO)という戦績もインパクトがあります。
すごいですよね。戦績もヘビー級ならではですね。
――井上選手の17戦全勝(15KO)も驚異的です。
僕なんかまだまだですよ。これから階級を上げていけば判定が続くかもしれないし。
――そのワイルダー選手が迎えるフューリー選手は構えを左右に変えるスイッチ・ヒッターで、戦績は27戦全勝(19KO)です。
フューリーは頭脳的な技巧派なんでしょう? ヘビー級では珍しいですよね。パワー型のワイルダーと頭脳派のフューリー選手。興味深い組み合わせだと思います。加えてふたりとも2メートル以上ですからね(ワイルダーは身長201センチ/リーチ211センチ、フューリーは206センチ/216センチ)。
――注目ポイントはどこでしょうか。
ワイルダー選手のパワー、フューリーの頭脳、どちらが上回るかという点でしょう。
――ずばり、どちらが勝つと思いますか。
う~ん……ワイルダー、かな。
――12月9日にはライト級の王座統一戦、WBA王者ワシル・ロマチェンコ(12戦11勝9KO1敗)対WBO王者ホセ・ペドラサ(26戦25勝12KO1敗)がアメリカのニューヨークで行われます。ロマチェンコはアマチュア時代にオリンピックと世界選手権を連覇、戦績は397戦396勝1敗です。
オリンピックと世界選手権を連覇するなんて、本当にすごいことですよ。(アマチュアの)戦績もヤバいでしょう(笑い)。アマチュアボクシングは3分×3ラウンドですからね。それであの戦績でしょう。もうロボットですよ。
――井上選手はアマチュア時代、国際大会の現場でロマチェンコ選手の試合を見たことがありますか。
あります。ロンドン・オリンピックの前の世界選手権(2011年)でしたが、アディダス社製の大きなグローブなのにボディーブローで倒していました。それほどパンチのタイミングがいいわけで、当時から目立っていました。
――ロマチェンコ選手も3階級制覇を成し遂げています。
ボクシングは基本的には殴り合いなんですが、ロマチェンコはそれをゲーム感覚でやっている印象ですね。僕のなかではアマチュアの練習で採り入れているタッチゲーム――相手の肩や膝などをタッチしてポイントを取る――のイメージが強いんです。
――それでも8連続KO勝ち中です。
ロマチェンコはパンチが強いわけではなく、タイミングがいいんです。倒すというよりも、どの角度からもパンチを当てるゲームの印象ですね。タッチゲームに耐え切れずに相手がギブアップする感じ。相手は挽回できないと諦めるんでしょう。
――今年5月のホルヘ・リナレス選手(33=帝拳)戦は見ましたか。
いい試合でしたよね。ロマチェンコの気の強さが見えた試合でした。技術はある、スタミナもある、そして精神力も強い。ロマチェンコは完璧でしょう。6回にダウンを喫したけれど(ダメージが)足にきている感じではありませんでした。
――身長170センチ、リーチ166センチ。ライト級では小柄ですよね。
パワーで勝ち上がってきた選手は(階級を上げると)体重の壁に当たるけれど、ロマチェンコは技術で上がってきているので階級(体重)の壁を感じないんだと思います。
――そのロマチェンコ選手がスイッチ・ヒッターのペドラサ選手と対戦します。このペドラサ選手もアマチュア時代に08年北京オリンピックに出場(ライト級初戦敗退)、09年の世界選手権では準優勝しています。
でも、パワー型ではないですよね。そうなると体格では上回っていてもロマチェンコに勝つのは難しいでしょう。ただ、スイッチ・ヒッターは読めないところがあるので、やりにくいのは事実です。半面、慣れてくると崩されやすいというマイナス面もあるんです。結局、パターンは同じなので、ロマチェンコはすぐに読んでしまうと思います。ペドラサも戦っていてイヤになってしまうんじゃないですかね。
――もしも体重や条件が合えばロマチェンコ選手と戦いたいと思いますか。
もちろん戦ってみたいですね。ロマチェンコのスタイルはだいたい分かっているので、それをイメージしてリングに入って、あとはその場の感覚で戦ってどこまで対応できるかということになると思います。
WOWOWでは「最強ボクサー激突!12月2週連続ビッグマッチ完全ガイド」を、WOWOWプライムで12月1日午後6時30分から無料放送。また「エキサイトマッチスペシャル ヘビー級全勝決戦! ワイルダー vs フューリー」をWOWOWライブで12月2日正午から、「エキサイトマッチスペシャル ボクシング史上最高傑作 ロマチェンコ統一戦!」をWOWOWプライムで12月9日正午から放送する。
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2024年12月23日 09:00時点
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