草なぎ剛さんの主演映画「台風家族」(市井昌秀監督)が6日に公開された。映画は、10年ぶりに実家に戻ってきた鈴木家の4人きょうだいが遺産相続をめぐって繰り広げる、ある夏の一日を描いたブラックユーモアあふれる物語。草なぎさんは“クズ男”の長男・鈴木小鉄を演じている。草なぎさんにとって今作が「新しい地図」として歩み始めてから初の単独主演映画で、市井監督とは初タッグ。演じる際に「人のせりふを覚えない」という草なぎさんと市井監督に話を聞いた。
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これまでにも映画やドラマで、その演技を絶賛されてきた草なぎさん。市井監督は「生きたお芝居をされる方。いつかご一緒したかった」と初タッグを喜び、「草なぎさんは人のせりふを覚えないで演じるので、純粋なキャッチボールをしている。相手の言葉を新鮮に受けて、自分のせりふを言うから勝手に感情が乗ってくる」と自然体の演技をたたえる。
それを聞いた草なぎさんは「僕は(香取)慎吾のまねをしているんです。あいつができるなら僕もできるだろう、みたいな」とにっこり。「慎吾は、もともとステージに出る時、準備もなく“やっちゃいなよ”という感じで出ていたので、何で全然(準備を)やっていないのにできるんだろうと、前の日からやっている自分が悔しくなってしまって」と自身に影響を与えた香取さんの姿を明かした。
人のせりふを覚えないことで、自分のせりふのタイミングを忘れ、“変な間”ができることもあるが草なぎさんは「変な間もそれっぽくなる。日常にそういう間ってある。(台本を)全部分かっていると構えてしまうので僕としては、いいさじ加減なんです。覚えないのは、役作りかな」とちゃめっ気たっぷりにほほ笑み、「(やり方は)時期によって変わるかもしれないけど、慎吾がずっとそんな感じなので、僕も変わらないかな」と笑顔で語った。
仕事も長続きせず、親の遺産を1円でも多くもらおうとする小鉄のあまりの“クズぶり”に「演じていて笑いそうになってしまった」という草なぎさん。市井監督が12年間、構想を練ったオリジナルストーリーで、脚本は草なぎさんが主演することが決まってから「背中を押されるように書いた」という。市井監督は「大物の草なぎさんが、あえて小物を演じるのが面白いと思った。小鉄は“ずる賢い”のではなく“小ずる賢い”」と役どころを説明する。
草なぎさんは「僕自身も(小鉄と同じ)長男。脚本を読んでクズだと思ったけど、共感できる部分もあった。僕は監督が言うような大きな人間ではなくて、小っちゃな人間。小鉄を演じる上では小っちゃい人間でよかった!」とおどけながら語る。小鉄との共通点を聞かれると「僕も遺産相続の時には、ちょっと多くもらえたらいいなと思う。でも、僕がきょうだいの中で一番稼いでいるから『俺は遺産なんていらない!』と言ったら、かっこいいかな」とジョークを交えて笑わせた。
物語が進むにつれ、小鉄は追い込まれ、自暴自棄になって“クズダンス”を踊る。草なぎさんは「あれは本当に追い詰められて出た踊り」と告白し、「監督に『家で(ダンスを)考えてきます』と言ったのに本番まで何も考えていなかった。『大丈夫です』とうそをついていたので、怒られるんじゃないかと思って焦りました」と回顧。一方で自身が出演するCMでも「いつもアドリブ」だといい、「『自分はできる子だ。俺の中の振付師が出てくるぜ』と思い込んで踊りました」と得意そうに笑みを浮かべた。
草なぎさんは「家族」と聞いて思い浮かべるのは「やはり自分の家族です。僕もいい年だし、ここ1、2年、両親に会うたびに年を取ったなと思います」としみじみ。「映画の中の『父ちゃん! 母ちゃん!』という叫びは、僕の等身大の叫び。若い時には、この役はできなかったと思う」と話し、このシーンが「僕にとってこの映画のクライマックス」と熱を込める。
また、これまでも演じた父親という役どころでも、自身の変化を感じた。小鉄が娘のユズキに「自立しなさい!」と言われるシーンで、泣く予定がなかったにもかかわらず、自然に涙がこぼれた。「年を重ねて(劇中の)子供に対しての思いが、より深くなってきた。以前より尊く感じる」と振り返り、「ユズキの何気ない動きや、ユズキがそばにいること……ちょっとしたことが僕の中で刺さる。あのシーンは自分が泣いていることに気づいていなかった。監督に言われて、俺、泣いてたの?と。自分には子供がいないけど、そういうのが親なのかと思った」と話して目を細めた。
当初、6月に公開予定だった「台風家族」。新井浩文被告が小鉄の弟役で出演していた関係で公開延期になったが、公開を望む声を受け、今回、3週間限定で公開された。
草なぎさんは「この作品を応援してくれる方がたくさんいて、みんなが声を上げてくれたおかげ」と感謝。「映画は普通に公開されることが当たり前だと思っていたので、いろんなケースがあるんだなと思いました。去年の夏、暑い中、みんなで頑張って作ったので一番悲しいのは、お蔵入りになること。今回は3週間ですけど、公開できるのは正直うれしい」と率直な思いを口にする。
市井監督も「本当に感謝しています。これまで映画作りに直接関わる人ばかりを見てきたけれど、映画が公開されるまでには、もっとたくさんの応援してくれる方あってこそと身に染みて感じました」と感慨深げに公開の喜びを語った。
(取材・文・撮影/神取恭子)
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