アメトーーク!
ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
残り少なくなった2019年、映像界に大きなインパクトを残した若手女優――。そんなお題にパッと思い浮かぶのが福原遥さんだ。福原さんと言えば、2009~13年に放送されたNHK・Eテレの番組「クッキンアイドル アイ!マイ!まいん!」で“まいんちゃん”の愛称で親しまれた“女の子”を連想する人も多いのではないか。そんな彼女もいまや21歳になり、女優として幅広い演技で視聴者を魅了している。
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2019年は、まず日本テレビ系の連続ドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」で大きなインパクトを残した。本作で福原さんは、恋愛体質の女子高生で元水泳部の水越涼音を演じたが、自身にスポットが当たった回で、軽率な行動により、人を傷つけてしまう危険性があることを、菅田将暉さん演じる担任の柊一颯から厳しく指摘され、感情を露わに号泣するシーンがあり、その鬼気迫る芝居がSNSを中心に大きな反響を呼んだ。特に“まいんちゃん”として福原さんを認識していた人たちからは、“あのまいんちゃんが素晴らしい女優さんになっている”“本当に鬼気迫る演技だった”と称賛の声が相次いだ。
続く5月に公開された「映画 賭ケグルイ」では、“非ギャンブル、不服従”を謳(うた)う白装束の集団「ヴィレッジ」の幹部・歩火樹絵里(あるきび・じゅえり)役として、浜辺美波さん演じる主人公・蛇喰夢子(じゃばみ・ゆめこ)と真正面から対峙する。「3年A組」での迫真の演技が記憶に新しかったが、本作で演じた樹絵里でも、“静”から“動”へ一気に沸点に達するふり幅は、見ているものに“サプライズ”を演出する役割として大いに活(い)きていた。
そんな“まいんちゃん”的なパブリックイメージを覆すような激しい役を演じたかと思えば、自身の持つ透明感のある美少女ぶりを存分に発揮した映画「4月の君、スピカ。」や、甘い恋愛模様が描かれた連続ドラマ「コーヒー&バニラ」(MBSほか)で見せる顔など、とにかく作品ごとに違う表情を見せる福原さんには、見ている側も翻弄(ほんろう)され、女優としての力強さも感じさせられた。
杉野遥亮さんとのダブル主演で11月29日に公開された映画「羊とオオカミの恋と殺人」では、大人しく清楚(せいそ)な女子大生という一面を持ちつつ、その実はいとも簡単に人を殺(あや)めてしまう殺人鬼・宮市莉央を演じている。この作品も、いままで福原さんが演じたことがないようなエキセントリックなキャラクターだが、自身にとっては「ずっとやりたいと思っていた」という念願の役柄だった。
過去の取材などでも、人が理解しがたいような役への憧れを語っていたが、その言葉の真意を「他人に理解されないような人物というのは、アプローチ方法の選択肢が多いため、演じる人によってまったく違うキャラクターになる。自分なりの役を構築できるので、やりがいにつながる」と説明していた。
誰もが想像できる範囲内のキャラクターではなく、いわゆる“難役”に挑むことが高いモチベーションとなるという、女優としての志の高さがうかがえる発言だ。実際、劇中では福原さんの持つ柔らかい印象と、頸動脈をなんのためらいもなく掻き切る姿のギャップに魅了される。ファニーな印象を持つ福原さんが、淡々と人を殺めていく姿は、非常に個性的であり、福原さんならではの“殺人鬼”に仕上がっている。
「3年A組」や「映画 賭ケグルイ」では、菅田将暉さん、浜辺美波さんという受け止める相手がいる上で、感情を爆発させるという役。しかし「羊とオオカミの恋と殺人」は、福原さんが、相手を吸収しつつ、ストーリーを引っ張っていく “主体”としての安定感も見せたところが、女優としてまた一つ大きな前進だったように感じられた。
7歳のころから芸能活動をしている福原さんにとって、撮影の現場は“非日常”ではないリアリティーを感じる場所なのかもしれないが、だからこそ、その場で生まれてくる感情や、自然と手足が動いてしまうような衝動は、女優という仕事に向き合う上では、大切なことなのだろう。普段の生活でも「喜怒哀楽はしっかり出せるように心掛けています」とインタビューで語っていた。
子役のときは「習いごと」として芸能活動を行っていたという福原さん。それがさまざまな現場を経験することで、自分だからこそできるキャラクター構築に思いを馳(は)せるようになった。その分、悩みも多くなったというが“演じること”への探求心は高まったのではないだろうか。
2005年から始めた芸能活動も、2020年で15年になる。1月9日深夜からテレビ東京「木ドラ25」枠でスタートする連続ドラマ「ゆるキャン△」では、ソロキャンプを好む主人公・志摩リンを演じる。2019年、さまざまな役を演じ、ふり幅を広げた彼女にとって、自身の持つパブリックイメージに近いような可愛らしい役柄だとしても、これまでとは見え方が違うはず。キュートな笑顔が魅力の“まいんちゃん”から、若手実力派へと変貌を遂げた福原さんの進む先には、輝かしい道が広がっていることだろう。(磯部正和/フリーライター)