筒井康隆さんの小説『富豪刑事』（新潮文庫）を原作とし、現代を舞台に新たなストーリー、新たなキャラクターも加わって生まれ変わったテレビアニメ「富豪刑事 Balance：UNLIMITED」が、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」ほかで放送中だ。主人公・神戸大助のバディーで、アニメオリジナルキャラクターの加藤春を演じるのが、宮野真守さん。アニメ声優初挑戦で神戸大助を演じる大貫勇輔さんを「表現に対する追求が素晴らしい方」と絶賛し、イメージとの“ギャップ萌（も）え”を感じているという。作品への思いやアフレコについて聞いた。

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　◇オリジナルキャラクター加藤春は「自分の気持ちで演じられる」

　「富豪刑事 Balance：UNLIMITED」は、ケタ外れの資産を持つ主人公・神戸大助が、型破りな方法で大胆に事件を解決する姿を描く。大助は、警視庁で問題を起こした人間だけが送り込まれる現代犯罪対策本部準備室（通称・現対本部）に赴任となるが、そこで情に厚い加藤春とバディーを組むことになり、2人でさまざまな事件と謎に挑む。

　宮野さんが演じる加藤春は、曲がったことが嫌いな熱血人情派刑事で、元々は若手のエースとして捜査一課に所属していたが、とある事件をきっかけに現対本部所属となり、大助とバディーを組まされる。宮野さんは、加藤について「現対本部では雑用ばかりで、ある種の諦めみたいなものもある。熱血で何でもかんでもやってやるぞというよりは、今ある場所でどうにかこうにか正義を貫き通そうとしている人」と説明する。

　アニメについて「すごくリアリティーがある作品」と語る。

　「加藤が警察に入り、信念を持ってやってきたけれど、それがうまくいかなくて、今は中間管理職ぽくなっている。そのフラストレーションみたいなものが、非常にコミカルかつリアリティーがあるようにも描かれているので、実感できる自分の気持ちで演じられています」

　そんな加藤と大助を中心に展開するストーリーは、普通のバディーものとは雰囲気が違うという。

　「大助の捜査の仕方がダイナミックすぎて、加藤は巻き込まれる形で一緒に行動するはめになる。バディーになったので仕方なく行動を共にしなきゃいけないというのが、ほかの作品とは変わっているところ。ただ、犯人を捕まえるという利害は一致しているので、なれ合いはしないけど、犯人に対して向かっていく2人ではある。お互いを認める気持ちや、バディー感は、徐々に出てきますね」

　◇大貫勇輔に刺激　ギャップ萌えも

　大助役の大貫さんとの共演は「とても光栄」と感じている。

　「僕が拝見したドラマでは、大貫さんは着物姿でとても気品のあるオーラを醸し出していたんです。初めてお会いした時も大助のような貴族の空気感はあったんですけど、普段はおしゃべりが好きだと話されていて。現場では、すごくフランクに一緒にいられるので、僕の中では大貫さんのギャップ萌えが起きていますね（笑い）」

　アフレコ現場の大貫さんを「お芝居や表現に対する追求が素晴らしい方。表現に対する感性が素晴らしい」と絶賛する。

　「みんながアフレコしている姿を見て、『あ、こうやってやるんだな』と瞬時に感じて挑戦している姿に、表現というものに対して感性が素晴らしいんだなと思いました。大助は、本当に難しい役だと思うので、そのアプローチの仕方は本当に素晴らしいし、僕らには出せない魅力というものが存分にそのせりふに含まれている。とある収録で、若手の子が一緒に入った時があったのですが、大貫さんがディレクションを受けて、録（と）り直した際に、その若手が『絶妙……』と漏らしたんです。僕らも大貫さんの表現に刺激を受けながら作品作りができている。非常に素晴らしい座組なんじゃないかなと思います」

　◇アニメと実写の演技はつながっている　チャレンジし続ける思い

　宮野さんは、18歳で声優の仕事を始め、現在は舞台、ミュージカルと多方面で活躍している。大貫さんは、10代の頃からプロダンサーとして活躍し、ドラマへの出演も注目を集めている。アフレコ現場では、大貫さんは「体は動くのに、『この声を出したい』という声が出ない」、宮野さんは「声はこんなに出るのに、体がどうしたらいいか分からない」という会話があったという。アニメと実写の演技の違いとは……。

　「単純にアウトプットの仕方が全然違うので、それは両方やらせていただいている自分だからこそ強く感じられる部分ではあると思います。ただ、役作りや役への向かい方は、いろいろな役者さんや声優さんと話していても、やっぱり同じだし、自分もそう思うんです」

　さまざまな現場を経て、「アニメと実写の演技はつながっている」と感じるという。

　「いろいろなことをやったなかで、『実感すること』がすごく必要だなと思います。両方をやっているからこそ、余計なことも考えるんですよね。例えば、目の前にある水を手に取る時の声なんて、多分実写では考えないと思うんです。声優はそれを頭の中で動かして、声に出さなきゃいけない時もある。それはどうするかとなった時に、僕はそれを知ることが大事だなと思って。

　だから、舞台で体を動かした時、どういう芝居になるんだとか、どういう声の色になるんだということを実感することで、声優の世界でのイメージ力にもプラスされ、よりイマジネーションが膨らむというか。イメージをするのが、声優の世界ではより必要になってくると思うんです。声で動かさなきゃいけない分、どれだけ状況や、キャラクターの体つき、体の動かし方、動き方をイメージできているかで、声の動き方は変わってくる」

　宮野さんに、改めて演じる上で大切にしている信念を聞いた。

　「もちろん『楽しい』がないとできないんですけど、ある意味僕は、信念というものを見つけたいのかもしれないですね。そんなに大それたものではなく、単純に『認められたい』という、すごく単純な思いがないとできないのかなとも思う。直前にやった舞台で『ほめられたい』というセリフがあって、僕もそうだなと思って。もちろん『見てもらえてうれしい』『やっていて楽しい』というのはあるんですけど、『すごいな』と言ってもらえるものをどれだけやっていけるかという、自分へのチャレンジなのかなと」

　「信念というそんな格好いいものはそんなにないんですけど」と笑顔を見せながら、「まずは出会った作品の中で、僕とできてよかったなとスタッフの方々に思ってもらいたいし、そのためにできることは追求したい」と思いを語る。

　今回の「富豪刑事 Balance：UNLIMITED」も「斬新な企画が始まるなと思い、ワクワクが止まらなかった」という宮野さん。「加藤春というキャラクターは演じていて、とても楽しい。大助に存分に振り回されるので（笑い）。一番感情が表に出ているキャラクターなので、そんな加藤に共感したり、面白がりながら、ぜひこの世界観にどっぷりつかって、爽快感のあるエンタメアニメーションを楽しんでいただきたいなと思います。本当に大助のお金の使い方がありえないぐらい豪快です。神戸大助、格好いいです」と魅力を語っていた。