俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)第20回「家康への文」が5月31日に放送された。同回では、尾張へと侵攻する今川軍の先鋒(せんぽう)を任された松平元康(後の徳川家康、風間俊介さん)に、母の於大の方(松本若菜さん)が、戦から手を引くよう文を送るシーンがあった。子を思う母の心情を見事に体現した於大役の松本さんに対して、視聴者からは「引き込まれた」などの反響があった。
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第20回では、駿河の今川義元(片岡愛之助さん)が再び尾張への侵攻を開始する。かつての人質で、成人した元康(旧名・竹千代)が、その先鋒を任されることになる。そのことに目を付けた光秀(長谷川さん)は、この戦を回避させるべく、帰蝶(川口春奈さん)と信長(染谷将太さん)に、元康の母・於大と伯父・水野信元(横田栄司さん)と接触をするように仕向ける。
於大は信長と帰蝶を前にし、「元康とは16年、会うておりませぬ。顔も忘れ、声も忘れ、もはや母と言えるのか、子と言えるのか」としながらも、信長に「わしが元康殿なら、16年会わずとも、20年会わずとも、名を聞けば胸を刺される。母は母じゃ」と諭されると、元康宛てのつたない文をしたためてきたことを告白。そして、目に涙を浮かべながら「もはや道ですれ違(ちご)うても、我が子と分からぬ愚かな母ではあるが、この戦で我が子が命を落としたと聞けば、身も世もなく泣くであろうと書きました」と明かす。
その文は菊丸(岡村隆史さん)によって元康の元へと届けられる。そこには「この戦は勝っても負けてもよきことは何もない。互いに傷つくばかりで。それゆえ、戦から身を引きなされ。母はひたすら元康殿に会いたい。穏やかに、何事もなく、他に何も望まぬ」という於大の心情がつづられ、文の向こうにいる母の姿に元康は涙をこぼした。
同シーンは視聴者の感動を呼んだほか、松本さんの醸し出すはかなげの雰囲気と美しさにもスポットが当たり、SNSでは「竹千代ママの文、泣ける」「美しい母君」「その美しさにハッとさせられた」「松本若菜さんの演技に目を奪われてしまった」「頬に落ちる一筋の涙も美しい」といった声が次々と上がっていた。
「麒麟がくる」は59作目の大河ドラマ。1991年放送の「太平記」などで知られる池端俊策さんのオリジナル作。若いころ、下克上の代名詞・美濃の斎藤道三を主君として勇猛果敢に戦場を駆け抜けると、その教えを胸に、やがて織田信長のもとで、多くの群雄と天下を巡って争う智将・明智光秀が主人公。ドラマでは謎めいた光秀の前半生に光を当て、戦国の英傑たちの運命も描く、エネルギッシュな群像劇だ。
ドラマは6月7日放送の第21回「決戦!桶狭間」をもって一時放送休止となる。
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