ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
岐阜県多治見市が舞台で、伝統工芸品・美濃焼がテーマのマンガが原作のテレビアニメ「やくならマグカップも(やくも)」。舞台の多治見は、2007年に日本最高気温(当時)である40.9度を記録したことから「日本一暑い街」とも呼ばれている。現在、多治見では街中に「やくも」のポスターが張られ、同市の公用車が、キャラクターをあしらったラッピングカー仕様の“痛公用車”になったことも話題になるなど“暑い街”から“熱い街”に変わりつつある。多治見やアニメの関係者、アニメ化の立役者に同作、多治見への思いを聞いた。
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「やくならマグカップも」は、2010年に多治見の有志や企業が集まり、プロジェクトが始動。2012年から地元IT企業のプラネットがフリーコミックを発行している。脱サラした父親と幼い頃に亡くなった母の故郷・多治見に引っ越してきた豊川姫乃が、母が伝説の陶芸家であったことを知り、陶芸の世界に引き込まれていく姿を描く。前半15分がアニメ、後半15分が実写パートの2部構成で、実写パートに声優の田中美海さん、芹澤優さん、若井友希さん、本泉莉奈さんが出演し、多治見のさまざまなスポットを訪れ、魅力を紹介する。放送はCBCテレビ、BS11、TOKYO MX、MBS、AT-X。
多治見は、戦国時代の武将で茶人の古田織部が焼き物を作らせたことでも知られる岐阜県南部、東濃地方の中核都市。焼き物の街として知られている。フリーコミックを発行するプラネットは1995年に多治見で設立。同社の小池和人会長が「多治見の活性化」を目指して「やくも」を企画した。「多治見に新しい物語を作ろうとしたんです。物語を作れば、100年後には、それが昔話になります」という思いがあった。
「赤字でも続けることが大事だと思っていました。続けないと地域活性化はできない。気付いたら10年です」と採算度外視でフリーコミックを発行し続けてきた。アニメ化も考えていたが「いつかアニメに……とは思っていましたが、全くアプローチしていませんでした。弊社はIT企業で、グラフィックにも強い。自分でスタジオを作ろうかな?とも考えていました」と積極的に動いていたわけではない。
そんな中、「ちびまる子ちゃん」や「世界名作劇場」シリーズなどで知られる日本アニメーションからアニメ化の相談があった。アニメ化の立役者となったのが日本アニメーションの石田祐貴さんだ。
現在27歳の石田さんは、高校生まで多治見で生活していた。関西で暮らすようになった大学生の頃、「やくも」の原作に出会った。たまたま手に取り、「多治見を舞台にしたアニメやマンガを見たことがなかったし、地元が舞台になっていることがうれしかった。焼き物のことをしっかり描いているところに引き込まれました。懐かしい気持ちもあったのかもしれません」と魅了された。
石田さんはIT企業に就職したが、「アニメを作りたい!」という気持ちから、2017年に日本アニメーションに転職。同社の企画会議で「やくも」のアニメ化を提案した。「地域と密着したアニメも増えている。多治見に興味を持ってもらえる。姫乃たちが動いているのを見たい!」と熱い思いをぶつけた。
プラネットの小池会長が約10年にわたってまいてきた種が花を咲かせた。「続けることが大事」という考えは間違っていなかった。
多治見は現在、市内に横断幕が掲げられ、街中にポスターが張られるなど「やくも」一色になっている。同市の古川雅典市長は「2020年は市政80周年ですが、これまで多治見が全国に情報を発信したのは、日本最高気温を記録した時の一回だけ。グッドなニュースではないんです。もっとこの街のよさを日本中、世界中に伝えていきたい。『やくも』には、換算できないほどの経済効果があるはず」と大きな期待を寄せる。
地元の物流サービス業・平中サービスは、アニメのビジュアルと声優陣の写真をデザインしたトラックの運行を開始。小池会長が「地域活性化は行政に頼りがちですが、民が続けるからこそ、行政が動いてくれる」が話ように、官民一体となって“聖地”を盛り上げている。
日本アニメーションの手塚健一プロデューサーは、地元の応援、期待を受けて「原作のプラネットさんも含めてみんなでアニメを作っています。それがこの作品の核になっている。思わず応援したくなる作品を目指しています。商業誌ではなくフリーコミックのため認知度がまだまだのところもあるかもしれないけれど、地元の人の強い思いなどで補い、応援してもらえる作品にしたかった」と語る。
多治見には焼き物以外にもさまざまな魅力がある。古い街並み、自然などが美しく、アニメでもそんな風景が描かれている。田中さんら声優陣は、多治見を訪れ「風景が東京とは違って、遠くを見ると山が見えます。晴れの日、雨の日でも表情が違います」と魅了されたという。
「やくも」は、多治見を知らなかった人には新鮮に見え、住民を含めた知っている人には魅力を再発見できるアニメになっている。多治見を“熱く”盛り上げてくれるはずだ。
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