名探偵コナン
#1146「汽笛の聞こえる古書店4」
12月21日(土)放送分
「さよなら絶望先生」「かってに改蔵」などで知られる久米田康治さんのマンガが原作のアニメ「かくしごと」の劇場版「劇場編集版 かくしごと -ひめごとはなんですか-」(村野佑太監督)が7月9日に公開される。「さよなら絶望先生」の主人公・糸色望役に続き、「かくしごと」でも主人公・後藤可久士を演じるのが神谷浩史さんだ。「『かくしごと』は久米田作品の集大成」と感じているという神谷さんに同作への思い、演技のこだわり、久米田さんの作品の魅力を聞いた。
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「かくしごと」は、2015年12月~2020年7月に「月刊少年マガジン」(講談社)で連載された久米田さんのマンガ。ちょっと下品なマンガを描いているマンガ家の後藤可久士が、一人娘の姫にマンガ家であることがバレないようにしながら過ごす日常を描かれた。テレビアニメは、2020年4~6月に放送された。劇場編集版は、姫目線でストーリーが進行し、テレビアニメでは描かれなかった“もう一つのラスト”が描かれる。
「さよなら絶望先生」「かくしごと」で主人公を演じた神谷さん。久米田作品には、どんな思いを抱いているのだろうか? 神谷さんは「『絶望先生』で原作とアニメが監視し合うような関係性が出来上がり、そこに様式美が生まれた」と感じているといい、「その先に『かくしごと』がある」と説明する。
「僕は元々久米田先生の作品のファンだったのですが、『絶望先生』で主人公の糸色望を演じることになった時、あまりに独特なキャラクターだったので、どんな声で、どんなリズムでしゃべるのか、全く分からなかったんです。それが、第1話のアフレコで『死んだらどうする』というセリフをテストで音にした時に『あ、この人はこういうふうにしゃべるのかも』というのが自分の中に生まれました。第1話で作られた望のキャラクターは、アニメと連動したラジオ番組や原作でもまれて、ラジオから派生したネタを原作に逆輸入して、それをすぐにアニメで使うというような、よく分からないサイクルが生まれてきた」
「さよなら絶望先生」はテレビアニメ第1~3期と期を重ね、「原作とアニメが、互いを考察し合うことによって、よりソリッドになっていった」といい、「そのうち、視聴者の中で『久米田作品のキャラクターたちはこういうふうにしゃべる』という回路ができた。それを作ったのは間違いなく、僕たちだろうなという自負はあるんです」と語る。
「だからこそ、『かくしごと』の後藤可久士という役を任された時は、責任重大だったし、その先にある何かを提示しなければいけない。新しいキャストの人たちがどういう芝居をするのかということも含めた上で、作品の形にしなければいけませんでした」
神谷さんは、久米田さんの作品の魅力を「シンプルさと複雑さが同居しているところ」と表現する。
「僕は、キャラクターは記号だと考えていますが、記号は線が少ないほうが伝わりやすい。久米田先生の引く線はとてもシンプルで、ソリッド。必要最低限の美しい線でキャラクターを作り上げてらっしゃる。ただ、キャラクターはシンプルだけど、情報量は非常に多い。しかも、『かくしごと』は、親子が平凡に暮らしている日常を描いているようで、主人公のマンガ家が下ネタマンガを描いていることを隠しているということが、久米田先生の過去の経歴だったりするから、複雑な構造になっている。久米田先生の集大成ともいえる作品だと思います」
久米田作品の情報量の多さとシニカルな笑い、毒のあるキャラクターは、“久米田節”とも言われる。テレビアニメ「かくしごと」の神谷さんと久米田さんの動画インタビューでは、久米田さんは神谷さんが演じる「間を信頼している」とも語っていた。神谷さんは、どのように久米田節を表現していたのだろう。
「基本的にアニメーションは、演出の方がせりふのリズムを決めるので、声優はそれに準じていかなければいけないんですよね。その中でも、自分が狙っている部分はある。久米田先生が描かれているベースを基に、各話の演出の方、監督が“間”を調整して、そこに我々声優陣が色づけをしていく。決められたベースがあった上で、自分が表現したい可久士のリズム、音、原作から感じ取るニュアンスを自分の体を使って表現していく」
尺が決まっているテレビアニメの中で、表現したい後藤可久士を演じることは「せめぎ合い」だったという。
「『ここは、もうちょっとテンポよくいきたいけれども、尺を使っているな』『もうちょっとここは間を取りたいけれど、そんなに尺がない』というところもあるので、そのリズムの違いをどう自分で消化するのが、僕の課題になる。毎回アフレコのたびに、そうしたせめぎ合いはありました」
「さよなら絶望先生」で培ったものの先にある「かくしごと」。当初は、テレビアニメと原作がほぼ同じタイミングで完結を迎える予定だったが、原作が1カ月遅れて終了することになり、原作とテレビアニメで異なるラストが描かれたことも話題になった。テレビアニメでは描かれなかった“もう一つのラスト”が描かれる劇場編集版について神谷さんは「奇跡的なバランスで出来上がっている」と感じているという。
「原作の終了が1カ月遅れたことによって、久米田先生がテレビシリーズとは違うエンディングを思い付かれて、それをアニメに逆輸入する形で劇場編集版が作られました。当初の計画通りに進んでいたら、もしかしたら存在しなかったかもしれないと考えると、奇跡的な感じでできたなと」
テレビアニメは、神谷さん演じる後藤可久士の目線でストーリーが進行することが多かったが、劇場編集版は娘の姫目線で描かれる。
「姫の目線で物語をまとめるに当たって、ある意味必要ないところがだいぶ斬新なまとめ方をされているなという印象です。娘からすると、父親の交友関係だったりは割とどうでもいいんだろうなというか(笑い)。可久士の人垂らしな部分や、妙に女性にモテるといったエピソードはざっくりとした形で表現されていて、ちょっと面白かったです。これがどういった形で皆さんに伝わるのか、興味がありますね」
神谷さんら声優陣、スタッフが送り出す“久米田節”の集大成を劇場でじっくりと味わいたい。
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