海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
警視庁の窓際部署「特命係」の杉下右京(水谷豊さん)が天才的頭脳で推理し、“相棒”と共に数々の難事件を解決していく人気刑事ドラマ「相棒」(テレビ朝日系、水曜午後9時)。2015年10月14日放送の「season14」初回で初登場して以来、右京の“4代目相棒”を務めてきた冠城亘(反町隆史さん)の卒業まで残り2話に迫っている。3月16、23日放送の“卒業回”「最終回スペシャル前篇『冠城亘最後の事件―仇敵』」、「後篇『冠城亘最後の事件―特命係との別離』」の脚本を手掛けたのは、亘の初登場回をはじめ、歴代相棒の卒業回を手掛けてきた「相棒」シリーズの生みの親・輿水泰弘さんだ。輿水さんに、亘への思いや、卒業回、そして“右京と亘の別れ”について話を聞いた。
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亀山薫(寺脇康文さん)、神戸尊(及川光博さん)、甲斐享(成宮寛貴さん)に次ぐ“4代目相棒”として登場し、放送中の「season20」をもって7年目になった亘。昨年11月24日放送の「season20」第7話では、歴代の相棒としては最多となる登場回数125回に到達し、今も記録を更新し続けている。
「season14」の初回で法務省のキャリア官僚として初登場した後は、現場に興味があるという理由から警視庁に出向し、特命係に間借りしながら“同居人”として右京と接していた。しかし、右京と関わるうち、次第に興味を引かれ合う関係に。法務省を事実上クビになった「season15」では、警視庁広報課を経て、特命係に正式配属。その後、2人ならではの距離感を保ちつつ、深い絆で結ばれてきた。
時には右京と意見をぶつけ合い、単独行動も多い亘は、歴代の相棒とも異なる持ち味を持つユニークなキャラクター。亘というキャラクターはどのようにして生まれたのか。輿水さんは「反町さんのキャスティングが先だったので、自分の中の反町さんのイメージをベースにまず考えました」と明かす。
「反町さんの顔立ちがとても知性的な感じがしたのと、これまでの相棒とは違った属性を持たせたかったので、最初に思いついたのは『キャリア官僚でワンシーズンを“同居人”として過ごす』という設定。ただ、最初はそれくらいのベースのみで、後は反町さんが実際に演じているのを見て、亘のキャラを肉付けしていきました」
最初は、亘を「二枚目」として書いていたという輿水さんは、今の亘のひょうひょうとしたキャラは“想定外”だったという。「反町さんは“三枚目”なキャラクターを演じたかったみたいで。今の亘のキャラクターは、反町さんの演技のお陰で生まれました」と振り返る。
「最初の頃よりもずっと、シリアスからコミカルまで幅広く動かせるキャラクターになりました。青木(浅利陽介さん)とのやり取りも、反町さんが作ってくれたんです。亘が青木の髪の毛をくしゃくしゃっとする2人のやり取りなんかは、反町さんのアイデアで。“警察学校の同級生”でしかなかった2人が、ああなるとは思わなかった。脚本家としても見ていて楽しかったです(笑い)」
亘といえば、「season15」の最終回で描かれた、右京とあわや一触即発となる展開も印象深かった。互いの考え方の違いから、右京が亘に向かって「想像が及ばないのなら、黙っていろ」と珍しく語気を荒らげると、亘が「右京さん、あなた何様だ」と真正面から言い返す、視聴者をドギマギさせたシーン。同回も手掛けた輿水さんは「亘だからこそ、右京もああいうことを言えた」と振り返る。
「(右京が)亘を“同等の存在”だと認めているからこそ、腹が立ったんだと思うんです。いつもの右京だったら軽く聞き流すところですが、真正面から怒ったっていうのは書いていて初めてでした。亘だからこそ、あのシーンが成立しました」
右京と亘は時にぶつかり合いながらも、「相棒」と呼べる関係性になっていった。“2人の距離感”を脚本で意識した部分はあったのか?
「“明確に変わった”みたいな書き方はしていないのですが、2人の表情とか話すトーンで、距離感が近づいているのを感じたので、それを脚本にも反映していきました。豊さんと反町さん自身が、どんどん仲良くなっていたのとシンクロしていった感もありましたね」
◇「今までの相棒とは違った卒業」
3月16、23日放送の“卒業回”最終回スペシャル「冠城亘最後の事件」は前後編で、元衆院議員の片山雛子(木村佳乃さん)、法務省法務事務次官・日下部彌彦(くさかべ・やひこ、榎木孝明さん)、国家公安委員長を務める大物政治家・鑓鞍兵衛(やりくら・ひょうえ、柄本明さん)、その鑓鞍の後ろ盾で内閣情報調査室トップに上り詰めた社美彌子(やしろ・みやこ、仲間由紀恵さん)ら、亘と因縁のあるキャラクターたちが集結する。
「亘を見送るオールスターみたいですね(笑い)」と輿水さん。「亘にゆかりのある人物たちがそろって、『仇敵』という前編のタイトル通り、敵同士で対立したり“復讐(ふくしゅう)劇”を繰り広げます」と説明する。
今回のエピソードは、これまで数々の事件で暗躍してきた鑓鞍が過去に遭った襲撃事件が物語の鍵を握る。輿水さんは「鑓鞍は、いつかしっかり使いたかったキャラクター。怪しい感じでこれまで登場してきていますが、特命係の敵か味方かはまだ分からなかったので、いつかしっかり事件の中心に据えたかった。今回、亘の卒業エピソードにぴったりリンクするかなと思い、選びました」と語った。
そして、気になるのは、23日放送の後編のラストで描かれるであろう“右京と亘の別れ”だが、どんな結末が待っているのだろうか?
「今までの相棒とは違った卒業」にこだわったという。しかし、「ラストシーンはどういうふうに表現すれば良いかすごく悩みました」と明かす。
「どんな場所でどんなセリフにしたら、亘らしくカッコ良くなるのか……。考えるのは大変でした。反町さん自身も、亘の卒業という以上に、右京との別れ方を気にしていたので、そのシーンはいろんな思いを込めて書きました」
右京の相棒として歴代最多の登場回で、共にあまたの事件解決に走ってきた亘。2人の別れは明るいものになるのか、それとも……。“黄金コンビ”の結末を見届けよう。
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