女性ファッション誌「ViVi(ヴィヴィ)」(講談社)専属モデルの嵐莉菜さんが主演を務める映画「マイスモールランド」(川和田恵真監督)が公開中だ。嵐さんは、日本とドイツ、イラン、イラク、ロシアの5カ国のルーツを持つ、18歳の現役女子高生モデル。今作が映画初出演にして初主演となり、日本で育ったクルド人の高校生サーリャを演じている。「日本人と言いたくても、見た目で外国人だと判断されてしまう葛藤が、私と同じだったので、この役は絶対に私がやりたい」という思いで役に挑戦したという嵐さんに、話を聞いた。
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「マイスモールランド」は、日本で育ったクルド人の高校生サーリャと、日本人の少年・聡太(奥平大兼さん)の交流が描かれる。サーリャは、同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていたが、在留資格を失い、これまで当たり前だった日常が一変。アイデンティティーに悩みながらも、聡太との出会いをきっかけに成長していく……というストーリー。第72回ベルリン国際映画祭で、日本作品で初めてアムネスティ国際映画賞・特別表彰を授与された。
英国人の父と日本人の母親を持つ川和田監督がメガホンをとった。オーディションで嵐さんは、川和田監督から「自分は何人だと思いますか?」と聞かれたといい、「日本で生まれて育ったので、『日本人と言いたい』と言いました。それは私の中で難しいとも感じていて、そのことを伝えたところ、監督に共感していただきました」という。
劇中では、サーリャが友達からサッカー・ワールドカップ(W杯)でどこの国を応援するのかと聞かれ、ドイツを応援しているとうそをついた過去を告白するシーンがある。実はこのシーンは、嵐さんの実体験を川和田監督に話したところ、台本に追加されたという。嵐さんは「私は当たり前に日本を応援する気だったんですけど、『そういうことを聞かれるんだ』と驚きました。応援したらダメなのかなと考えたこともあり、そのことを監督に伝えたら、反映していただきました」と明かす。
コンビニでレジ打ちのアルバイトしているサーリャに女性が話しかける場面も、共感したシーンとして挙げる。女性はサーリャを見て「お人形さんみたい」「日本語が上手ですね」「でもいつか国に帰るんでしょ?」といった言葉を口にする。女性としては日常会話のつもりかもしれないが、日本人として扱ってほしいと思っているサーリャは複雑な思いを抱く。嵐さんは「私も同じような経験をすることがあるので、とても共感しました。感情を乗せて、自然に演じることができました」と振り返る。
サーリャの父や妹、弟役は、嵐さんの実の家族が演じた。「父が言っていたのですが、『家族と共演するなんてハリウッドスターみたい』と(笑い)。私もすごくビックリしましたし、『本当にいいのかな?』と思いました。でも、本当の家族だからこそ出せた雰囲気、空気感もあったのかな」と語る。
劇中では、家族とトルコ語で会話している嵐さんだが、日常生活では家族と日本語で話している。トルコ語はまったくしゃべったことがなかったため、撮影に向けて1カ月以上のレッスンを積んだといい、「お仕事や学校の空き時間にリスニングをずっと聞いていました。また父は、トルコの高校に通っていたためトルコ語を話せるので、発音のチェックをしてもらいました」という。
猛特訓の成果もあり、劇中では流ちょうなトルコ語を披露している。「トルコ語指導の先生から、映画を見てくれたクルド人の方が『あの子、(トルコ語を)話せたんだ』と言ってくれたという話を聞き、それがすごくうれしかったんです」とほほ笑む。
「ViVi」モデルとしても活躍する嵐さんは、今作で女優デビューを果たした。「マイスモールランド」に出演したことで、演技に対する興味がこれまで以上に高まったといい、「お芝居の仕事ももっとやっていきたいです。普段なれないような人になれるのが、演技の魅力だなと思いました。悪役とか、超能力を使う人、アニメの実写化もやりたい」と、モデルと女優の“二刀流”にも意欲的だ。
憧れの女優は、事務所の先輩の中条あやみさん。「昔から大好きだったのですが、実際にお会いして、もっと好きになりました。私はあまり人見知りしないタイプなんですが、中条さんの前だと緊張しちゃうんです。本気で憧れていて、中条さんとお仕事で共演するのが夢です」と目を輝かせる。
取材は、舞台あいさつのため訪れた大阪で実施した。嵐さんに大阪の印象を尋ねると、「関西弁やエスカレーターの立ち位置が違うこともあり、他の県に行くよりも、違う場所に来たな!という思いがあります」と語る。
「以前、大阪に来たときはユニバーサル・スタジオ・ジャパンにも行きましたが、すごく面白かったです! 今度は道頓堀にも行ってみたい」と声を弾ませる。また古着屋巡りが趣味で、「大阪の古着屋さんも見てみたい」と話していた。
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