超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、ゲーム開発・産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」元代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、話題を呼んだプレイステーション(PS)5の値上げについて語ります。
ウナギノボリ
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物価高の影響がゲーム業界にも飛び火した。ソニー・インタラクティブエンタテインメントは、9月15日よりプレイステーション(PS)5の本体価格を値上げする。新価格は通常版が6万478円、光学ドライブを省略したデジタル・エディションが4万9478円(ともに税込)で、従来価格より5500円の値上げとなる。世界的な物価上昇や為替動向などが原因だという。
今回の値上げはコロナ禍による半導体不足やウクライナ紛争に加えて、世界的なドル高による景気への圧力などが重なり、いたしかない側面もある。一方で気になるのが、ユーザーが今回の値上げを冷静に受け止めているように見える点だ。ゲーム機が同一モデルで値上げされるのは異例の事態で、反発がおきてもおかしくはないのだが、そこにはいくつかの理由が考えられるだろう。
第一に2020年の発売以来、一貫してPS5の供給不足が解消されない点がある。実際に商品を購入できなければ、価格がいくら上がっても、消費者にはあまり意味がない。一方でネットオークションなどでは高額出品が並ぶ。購入時に身元確認を義務づけるなど、転売業者に向けた自衛策も見られるが、抜本的な解決方法にはほど遠いのが現状だ。
一方でユーザーニーズの多様化もある。インディー(独立系)ゲームは好例で、ドット絵のような“枯れた技術”のゲームでも、内用次第でヒットする土壌が広がってきた。逆に人気ゲームの中には、内容はそのままに、グラフィックを刷新したり、リマスター版が発売されるものもある。これまでのように、最新ハードのオリジナルゲームだけがヒットする時代ではなくなっているのだ。
また、家庭用ゲーム自体がニッチな存在になっている点もある。日本は顕著で、約2兆円の市場規模のうち(業務用は除く)、スマートフォンのゲームアプリ市場が約1.3兆円と他を圧倒している(ファミ通調べ)。世界市場も同様で、約20兆円とされる市場規模のうち、約5割をスマートフォン市場が占める。家庭用は約3割で、2022年は2.2%のマイナス成長の見込みだ(newzoo調べ)。
家庭用ゲーム機の動向や遊ばれ方は国や地域で異なるため、一口に論じるのは難しい。しかし、こと日本においては、多くの人々が日常的にスマホゲームに触れる中で、小中学生やミドルコア・ゲーマーはニンテンドースイッチを遊び、コアゲーマーがゲーミングPCを選択している状況がある。こうした中、PS5の存在感が低下している点は否めないだろう。
ポイントは存在感の低下が消費者の「PS5離れ」を招かないようにすることだ。ソニーは先だって次世代VRヘッドセットのプレイステーションVR2を2023年初頭に発売する旨を発表しており、消費者の注目を集める良い契機になる。もっとも、肝心の商品が店頭に並ばなければ意味がない。そのためには、さまざまな準備が必要になる。年末年始の販売戦略に注目したい。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長を経て2000年からフリーランスで活躍。2011からNPO法人国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)の中核メンバー、2020年から東京国際工科専門職大学講師として人材育成に尽力している。
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