海に眠るダイヤモンド
最終話後編(10話)記憶は眠る
12月22日(日)放送分
女優の仁村紗和さんが主演する放送中のNHK“夜ドラ”「あなたのブツが、ここに(あなブツ)」(総合、月~木曜午後10時45分)が、「リアリティーがある」「せりふが心にしみる」と評判だ。今年4月にスタートした1話15分の“夜ドラ”枠で、NHK大阪が初めて手がけたドラマ。兵庫県尼崎市を舞台に、コロナ禍でキャバ嬢から宅配ドライバーに転身したシングルマザーの主人公が、自分の人生を肯定できるようになっていく姿を描く。9月26日から放送される最終第6週の見どころも含めて、作品に込めた思いなどを制作統括の櫻井壮一さんに聞いた。
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ドラマは、コロナ禍で激変する日本の飲食、物流業界がテーマ。企画の発端はコロナ禍ではなく、宅配業界だったという。
「もともとキャバクラ嬢が宅配ドライバーになるという企画だったんです。コロナ前から配送業への需要が増え続けている現象があって、宅配ドライバーになる女性も現実に多くいらっしゃる。この題材でやるということになったとき、どちらの業種ともコロナ禍の影響をとても受けており、大きな変化を求められている。だからコロナを無視して描くのは不自然じゃないかと思いました。取材をして、コロナ禍の実情を重ね合わせることで、このドラマのストーリーが導かれたなと思いましたね」と明かす。
ドラマの舞台は兵庫県尼崎市。櫻井さんは「どこでもない架空の場所という設定もできたと思うんですが、尼崎という人が体温を持って暮らしている場所を描いていくことが大事だなと思ったんです。結果的には尼崎に決めて、(関西弁が飛び交う)自然なやりとりがとてもいいと思っています。それがNHK大阪らしさということに結びついたのかもしれません」と考えている。
主人公の亜子を演じる仁村さん、亜子が一人で育てている小学校5年生(最終週では6年生)の娘、咲妃を演じる毎田暖乃さんは、共に大阪出身で、NHK大阪が制作した2020年後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おちょやん」で共演経験がある。
櫻井さんは、仁村さんについて「キャバクラ嬢から宅配ドライバーになって、かつシングルマザーというキャラクターをリアリティーをもって演じられる方は誰かなと考えたときに、誰が一番われわれにとっていいヒロインたりうるかということを優先して考えた結果、仁村さんでどうかという話が出てきました」とその実力は折り紙つきの女優に白羽の矢が立った。
娘を演じる毎田さんについても「暖乃ちゃん自身がちょうど小学校5年生。兵庫県の尼崎が舞台のドラマで、『おちょやん』で知っているスタッフが多いということで受けていただけると。もちろん、(毎田さんの演技が)間違いないのは分かっていたので、うれしいなと思いました」と話す。
2人は、「おちょやん」での関係をリセットして役作りをし、「撮影の合間やもちろん撮影中も常に親子の関係で2人はいようとしてくれた」という。結果、「物語を生きてくれている」と感じ、さらに「2人だけじゃなくて、キムラ緑子さんが演じる祖母(亜子の母)と3人の関係も本当に素晴らしい。これまでもそうですし、最終週でもドラマの見どころの一つになっています」と明かす。
ドラマは30代女性をメインターゲットにしている。すると視聴者が気になるのが男性キャストだ。
運送会社で亜子に一目ぼれする“ミネケン”こと峯田健太役に関西ジャニーズJr.内のユニット「Aぇ! group」メンバーで、兵庫県出身の佐野晶哉さんを抜てきした。櫻井さんは佐野さんの演技について、「性格の良さが出ているなと。人に愛される人ってこういうことなんだなって見ていてよく分かります。マスクをしていても笑顔だと分かるし、真面目さだったり、純真さがちゃんと出ていて、そこが好感が持てるんじゃないかと思います」と絶賛する。
峯田は亜子に対し、ことあるごとにアプローチするが、亜子はその気がなくそっけない。そんな中、峯田は勤務中に事故を起こし、会社に辞表を出した。今後2人はどうなるのか。「決着がつくかどうかは分からないですけれど、良い方向での予感を感じさせる終わり方になっているかなと思います」とラストに含みを持たせた。
声優として活躍し、イケボで知られる大阪府出身の津田健次郎さん演じるエース配達員の武田浩三は、当初、亜子に厳しく当たるが、その裏には優しさを秘めている絶妙な役どころ。櫻井さんは「周りの女性の話を聞くと、『すてき』という人がたくさんいて、人気がとても高いというのを改めて実感しました。この先もいいシーンがありますので、楽しみにしていただけると」と語る。
月曜のエンディングでは、ウルフルズの「バカサバイバー」に合わせてキャストが踊るのも話題だ。そこには仁村さん、毎田さんはもちろん、佐野さん、津田さんの姿もあるので、お見逃しなく。
「あなブツ」は、メインキャストを関西弁ネーティブで固め、尼崎を舞台にしたリアリティーのある設定のNHK大阪らしい“夜ドラ”といえる。毎回放送後の反響は、「好評な意見が多い」といい、「一つ一つのせりふがしみると。シビアなテーマが描かれており、シリアスな場面も多く、もちろん笑えるところもありますけれど、そういう面も含めてちゃんと受け取ってもらえている方が多いなと感じ、ホッとしています」と櫻井さんは胸をなで下ろす。
朝ドラと同じ1日15分の放送だが、「夜だからとか朝だからということはそんなに意識はしていないです。ただ、(夜向けの)シビアな内容だけれど、笑えて楽しめて、ちゃんとカタルシスになるようにしたいなというのが一番」という。15分の夜ドラ枠は「今は試行錯誤の段階」と前置きしつつ、「今後も、いろんなタイプのドラマが出てくると思いますので、楽しみにしていただければ」と語った。
第6週(26~29日)は、お中元で大変な時期に、社長の葛西(岡部たかしさん)はコロナ感染のため自宅療養、峯田(佐野さん)は事故が原因で辞職することになり、2人が抜けたマルカ運輸は、目が回るような忙しさだった。そんな中、亜子(仁村さん)の元夫・祐二(平埜生成さん)が金を貸してほしいと会社にまでやって来る。祐二は「咲妃(毎田さん)に自分が父親だとバラすぞ」と脅し、亜子は深く悩み始める……というストーリー。
櫻井さんは、最終週について「2021年、ちょうど東京五輪が開催されている夏休みで、大きな危機が訪れたマルカ運輸をみんなでどう乗り切るかということと、ヒロインの亜子が、目の前に現れた元夫との過去とどう向き合って、新しい一歩を進めるのかということを、最後まで見ていただければ」と視聴者に向けてメッセージを送った。
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