ファイルーズあい:「ジョジョ」徐倫と共に成長 「血のにじむような」熱い収録 「星を見るわ」に込めた強い思い

「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会
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「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」の一場面(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険SO製作委員会

 荒木飛呂彦さんの人気マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」の第6部が原作のテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」。第13~24話が10月7日深夜からTOKYO MX、MBSほかで放送される。主人公・空条徐倫を演じる声優のファイルーズあいさんは、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの大ファンで、中でも「憧れの人」という徐倫と出会い、声優を志すことになったという。気負いもあったという第1~12話を経て、その後のエピソードでは「徐倫に引っ張ってもらって一緒に成長していくことができた」と感じているという。「血のにじむような思い」という熱い収録の様子、作品にかける思いを聞いた。

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 ◇「反省すると強いぜ」 音石明マインドで挑んだ第2クール

 「ジョジョの奇妙な冒険」は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)1987年1・2合併号で連載が始まった人気マンガ。数世代にわたる個性的な悪人たちとの戦いを描いた壮大なストーリーや独特の擬音を用いた表現、独特な立ちポーズなどが人気を博している。第6部「ストーンオーシャン」はシリーズ初の女性主人公で、空条承太郎の娘・空条徐倫が、無実の罪で刑務所に収監され、脱獄しようとする。アニメはNetflixでも配信されている。

 アニメ「ストーンオーシャン」の第1~12話は、2021年12月にNetflixで先行配信され、2022年1月からテレビ放送された。ファイルーズさんはアニメが配信、放送されたことで「日本国内のみならず世界で『ジョジョ』が愛されてるんだなと、より一層身近に感じることができた」という。

 「SNSなどで『徐倫がすごく格好いい』『徐倫が大好き』というメッセージが世界中の方から届くようになって、ファンの方にそう思ってもらえることがすごく光栄です。事務所に届くファンレターでも『ファイちゃんの徐倫に勇気もらいました』『本当に格好よくて憧れます』と言ってくれて、私がまさに中学生の時にコミックスを読んで徐倫に抱いた気持ちと同じだったので、本当に胸に感情がこみ上げてきて、すごくうれしかったです。イベントでも、徐倫のぬいぐるみを持って応援してくれている女の子の姿が見えるとすごく励まされて。徐倫のことを好きでいてくれる人がたくさんいるんだなと身近に感じられて、すごくうれしかったです」

 第1~12話では、不良娘だった徐倫が父・承太郎と出会い、戦いの中で目覚ましく成長していった。第13~24話は、敵の策略により記憶とスタンド能力を奪われた承太郎を救うため、徐倫がさらなる激しい戦いに挑むことになる。ファイルーズさんは、第13話以降は意識に変化があったという。

 「事前に鈴木健一総監督から『第13話からの徐倫は、成長に合わせてより格好よくキャラクターデザインが変わる』と伺っていたので、それに負けないようにするので必死でした。私は、演技プランを立てたりとか頭で考えると、空回ってしまったり、プランに集中してしまったりしてうまくいかなくなるのはこれまでの経験で学んでいて。今回は、もう既に徐倫はストーリーの中で成長しているので、それについていけばいいなと。徐倫に引っ張ってもらって、一緒に成長していった感じです。最初は『徐倫に選んでもらった。どうしよう、プレッシャーが……』と気負いすぎてうまくいかなかったことが多かったので、その反省を生かして第13話からは気負いすぎず、自分が思い描く格好いい徐倫に引っ張ってもらおうと思って。『おれは……反省すると強いぜ……』という音石明マインドで頑張りました(笑い)」

 ◇アニメオリジナルせりふで描く絆 アニメ化の意義を実感

 第13話以降は、徐倫がエルメェス・コステロ、フー・ファイターズ(F・F)ら仲間たちと共に戦う姿も見どころの一つだ。3人の絆を表現すべく、アニメオリジナルのせりふも登場するという。ファイルーズさんと同じく、エルメェス役の田村睦心さん、F・F役の伊瀬茉莉也さんも「ジョジョ」への思い入れが強く、3人でアニメオリジナルのせりふを演じられたことへの喜びもあった。

 「アニメ『ストーンオーシャン』のキャストに選んでいただけたからこそ“私だけが言える”せりふといううれしさと特別感があって、そのせりふを考えてくださった皆さんへの敬意でいっぱいでした。もちろん私だけじゃなく、睦心さんや、茉莉也さんもきっと感じていたと思いますし、そのシーンで見られるエルメェスとF・Fの違った顔が非常に素晴らしくて。そういうスタッフさんの心遣いだったり、遊び心のおかげでよりキャラクターの魅力が増しているのが、アニメのすごいところだなと思いました。私や睦心さん、茉莉也さんも原作を熟読しているので先の展開は分かっていても、毎回台本を読むたびに新鮮な楽しさがあって、実際アニメを見ると新鮮な反応をしてしまう。そこにアニメ化の意義があるんだなと改めて思いました」

 「ジョジョ」を通して、田村さん、伊瀬さんとの絆も生まれているという。

 「睦心さんは、第1話からずっと一緒にいてくれて、私生活でもいろいろアドバイスしてくれるんです。刑務所に入ったばっかりの徐倫を支えてくれるエルメェスのような面倒見のいい姉御肌で、すごく大好きです。茉莉也さんは、本当にいつも明るくて、すごくキャラ愛にあふれていて、F・Fのことを『この世界中で誰よりも自分が愛してる』というぐらい。だからこそF・Fの気持ちがすごくご自身の中に入っていて『徐倫を助けたい』という気持ちがあふれていて。私も私生活で助けてもらっています。2人がよきお姉さんとして支えてくれたり、一緒に笑い合えたりできることが本当に幸せです。『こんなに心を開いて話せる人ができるんだ』というのが衝撃でした」

 ◇人生で一番叫んだ日 「私は空条徐倫!」という強い気持ち

 これまでにも増して激しい戦いが描かれる。ファイルーズさんら声優陣にとっても収録はまさに戦いで、「名誉の負傷」をしたこともあったという。

 「徐倫と看守のヴィヴァーノ・ウエストウッドとの戦いで、私もウエストウッド役の間宮(康弘)さんも、30分ずっと叫びっぱなし、喉を閉めっぱなしみたいな、かなりハイカロリーなアフレコだったんです。その日は、今までの人生で一番叫んだ日というぐらいで、翌日、口に赤黒い点々ができていたんです。『どうしよう!?』と怖くなって病院へ行ったら『内出血です』と言われて。収録で無意識に歯を食いしばったり、口の中を痛めつけながらやっていたので、内出血していたみたいで(笑い)。本当に文字通り血のにじむような思いでアフレコをしているんですけど、私もやりすぎたとは思ってなくて『やってよかったな!』って。内出血もすぐ治ったので大丈夫。回復力Aなので(笑い)」

 「ジョジョ」の現場は熱量が高く、「モノローグの声がめちゃくちゃでかい」「距離感はあってないようなもの」といった「ジョジョ」ならではのことも多いと語る。

 「そもそも原作のロジックにリアリティーがあるので、演技ではむしろ大げさにやった方がバランスが取れて、それが『ジョジョ』になるんだなと思いました。そういう外連味(けれんみ)が『ジョジョ』では大事なのかなと。徐倫のオーディションの時に監督が持ってらっしゃる声のイメージが示されていて、『女性のしなやかさ』『承太郎の娘感』のほかに『外連味のあるお芝居』というのがあったのをすごく覚えています。そこは徐倫だけでなく皆さんが意識されていたんじゃないかなと思います」

 ウエストウッド戦では、ファイルーズさんが特別な思い入れがある徐倫の「あたしは星を見るわ」というせりふも登場する。

 「ネガティブになった時にそのせりふを思い出して『壁じゃなくて星を見よう』と思わせてくれる本当に力強いせりふです。囚人であるからこそ泥も壁を見てきた徐倫、そしてジョースター家で星を受け継ぐ誇り高い徐倫だからこそ言えるせりふなんだなと思って、すごく好きです。ただ、思い入れが強すぎると失敗するタイプなので冷静に、頑張って抑えられるところは抑えて、徐倫の気持ちになって演じるようにしました」

 作品を愛するからこそ、大好きなせりふだからこその強い気持ちもあった。

 「オタクを一旦封印して、声優のファイルーズあいを出すようにしました。そうじゃないと、『ジョジョが好き』とずっと言っているから徐倫に選ばれたんだ、みたいになっちゃうじゃないですか。オタクのミーハーな気持ちが出ちゃうと、台無しになってしまう。そこの切り替えはちゃんとしないと説得力が生まれないので、まさに『私は空条徐倫!』という気持ちで、謙虚さを持ちつつも『絶対に誰にも譲らない!』ぐらいの強い気持ちで臨みました」

 「本当に予想のつかない展開がずっと続いていくので、毎週ハラハラしながら見ていただくことになると思うのですが、そのハラハラ感が心地よくて、でも時に切なくて。ストーンオーシャンの魅力がものすごく詰まっています」と見どころを語るファイルーズさん。声優陣、スタッフのほとばしるほどの熱い情熱、作品への深い愛を感じられるはずだ。

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