4人はそれぞれウソをつく:連載終了の危機も逆転 アニメ化の裏側

「4人はそれぞれウソをつく」の一場面(C)橿原まどか・講談社/製作委員会はウソをつく
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「4人はそれぞれウソをつく」の一場面(C)橿原まどか・講談社/製作委員会はウソをつく

 「別冊少年マガジン」(講談社)で連載中の橿原まどかさんのマンガが原作のテレビアニメ「4人はそれぞれウソをつく」が、ABCテレビ・テレビ朝日系の深夜アニメ枠「ANiMAZiNG!!!」で10月15日から放送される。原作は、ヒット作、話題作というわけではなかった。連載終了の危機もあったというが、アニメ化をきっかけに連載を継続することになった。 “逆転”の裏側には、スタッフの熱意があった。アニメを企画したABCアニメーションの多田香奈子プロデューサーに裏側を聞いた。

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 ◇運命的な出会い

 多田プロデューサーは「4人はそれぞれウソをつく」と運命的な出会いを果たした。

 「今でも覚えています。『自分でアニメの企画をたてたい』と思いつつも、疲れていた時に、元気になれるマンガはないかな……と小さな書店に入ったんです。書棚の端の方に差さっていたマンガの背表紙が光って見えました。手に取って、裏表紙の説明を読むと、設定がすごく面白そうなんです。購入して、家で読んでみると、本当にすごく面白かったんです」

 同作は、「別冊少年マガジン」で2020年4月に連載をスタートした。コミックスが第2巻まで発売されているが、多田プロデューサーが出会った時はまだ第1巻しか発売されていなかった。同じ女子校に通う中学2年生で、宇宙人、抜け忍、超能力者、女装男子という秘密があるリッカ、千代、関根、翼のカオスな学園生活を描いており、ぶっ飛んだ設定、ギャグが魅力だ。

 「言葉選びも独特で、エグいギャグもあるのですが、青春が描かれていて、感動しました。衝撃的でした。こんなに面白いので、アニメ化が決まっているんだろうな……とも思ったのですが、講談社さんに連絡したら、『まだ決まっていない』という話だったんです」

 同作は当時、アニメ化が決まっていないどころか、連載終了の危機にあった。多田プロデューサーは「素晴らしいスタッフに運命の巡り合わせで集まっていただけたんです」と企画を進め、アニメ化が決まった。アニメ化をきっかけに連載が継続されることになった。

 多田プロデューサーは「何百万部、何千万部の人気作をアニメ化することは当然大事なことですが、アニメ化されることで、多くの人に魅力を知っていただくのもアニメ化する意義だと思っています。皆さんに、よかった!と思っていただけるアニメにしないといけません。それをずっと考えています」とさらに気を引き締めた。

 ◇30分1クールでアニメ化できるのか?

 「4人はそれぞれウソをつく」はコミックスが第2巻までしか発売されていない。アニメは、ショートアニメではなくいわゆる30分アニメで、全11話を予定している。コミックス2巻分が、30分、1クールのアニメになるのか?という疑問もある。

 「普通はなかなか難しいかもしれません。第1巻のおまけマンガも使わせていただいたり、オリジナルエピソードを追加したりしながら、全11話になっています。橿原先生にもご協力いただいています。本当にできるのかな?と思うかもしれませんが、星野真監督やシリーズ構成の清水恵さんに素晴らしい構成案を考えていただきました。この作品は、いかに『ふざけきるか』が大事。監督にも『自分の全てを出しきっているかも』と言っていただき、全力で遊んでいただいています。私はプロデューサーではありますが、ファンの目線で感動しています」

 アニメ化の際に大切にしていることは「キャラクターのギャップやバランス」だ。

 「例えば、千代や関根が翼を追い込むこともありますが、千代や関根が悪く見えないようにしないといけません。リッカはおバカっぽいけど、本当は賢くて、おバカを演じています。それぞれに抱えているものがあり、実は背負っているものも重いのですが、ギャグとして面白い。そのギャップやバランスを考えています」

 ◇200冊を1人に 斬新な企画も

 多田プロデューサーは、ABCテレビの宣伝、営業を経験した後、ABCアニメーションのプロデューサーになった。人気アニメ「プリキュア」シリーズの第19弾「デリシャスパーティ プリキュア」のプロデューサーも務めているが、深夜アニメの企画を一から立ち上げたのは初めてだった。

 「子供の頃、マンガを描いて投稿をしていましたし、声優さんに憧れて、マンガを読みながら声を録音したりして、いつかアニメを作りたい……と思っていました。大学生の時、『プリキュア』の第1弾『ふたりはプリキュア』の放送が始まり、衝撃を受けました。『プリキュア』のプロデューサーになりたい!とABCテレビに入社しました。プロデューサーとしてはまだまだですし、全力で作品に向き合おうとしています。だから『4人はそれぞれウソをつく』を誰よりも愛して、誰よりも頑張らなきゃいけないという気持ちでやっています。もちろんビジネスとして考えないといけませんが」

 多田プロデューサーは「4人はそれぞれウソをつく」の“宣伝部長”も務めている。原作の第1巻100冊、第2巻100冊の計200冊を1人にプレゼントするキャンペーンを実施するなど斬新な企画を立案してきた。「200人に1冊ずつ」ではない。「200冊を1人に」だ。

 「多くの人にこの作品の魅力を知っていただきたいんです。最初は1000冊にしたかったのですが、200冊で大体、段ボール3箱分だったので、1000冊は無理だな……となって(笑い)。受け取った方に、宣伝メンバーとして仲間になってほしいんです。仲間を一人でも増やしたかったんです。私もできることは何でもします。いろいろチャレンジしたいです。放送が始まったら、4人を応援するうちわを作って、放送を見ます。その様子も発信していきたいです。作品的に、ぶっ飛んだことをやった方がいいでしょうし、私のできる限りをこの作品にささげようとしています」

 多田プロデューサーをはじめとしたスタッフの熱意もあり、「4人はそれぞれウソをつく」は奇跡の逆転を果たした。ただ、大ヒット作が原作ではないこともあり、本当の勝負は放送が始まってからなのかもしれない。多田プロデューサーの“宣伝部長”としての手腕にも期待したい。


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