尾田栄一郎さんの人気マンガ「ONE PIECE（ワンピース）」の劇場版アニメ「ONE PIECE FILM RED」（谷口悟朗監督）に登場する歌姫・ウタが、大みそかに放送される「第73回NHK紅白歌合戦」に紅組歌手として出場することが話題になっている。ウタは、声優の名塚佳織さんがせりふ、歌手のAdoさんが歌唱パートを担当したキャラクターで、マンガ、アニメのキャラクターが紅白歌合戦に歌手として出場するのは初めて。ウタは作品の枠を飛び出し、キャラクターとしてリアルの音楽番組やイベントに出演し、現実と虚構の架け橋となるような活躍でファンを魅了している。しかし、そもそもウタはどんな歌姫なのか。

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　◇2022年のウタ旋風！　虚構を飛び越えたパフォーマンス

　ウタは、「ONE PIECE FILM RED」に物語の鍵を握る少女として登場する。“四皇”赤髪のシャンクスの娘で、世界で最も愛される歌姫だ。ウタの“別次元の歌声”を表現すべく白羽の矢が立ったのが、歌手のAdoさん。ウタは、劇中で主題歌「新時代」を含め7曲の劇中歌を披露し、その歌唱の全てをAdoさんが担当した。

　8月6日の「ONE PIECE FILM RED」公開後、ウタは、アニメの世界だけでなくリアルの世界も巻き込み、旋風を巻き起こす。ウタが歌った劇中歌7曲は、8月16日時点でApple Musicのランキングで1～7位を独占。中でも主題歌「新時代」はApple Musicで世界1位を獲得し、国内外のランキングで70冠を達成する大ヒット曲となった。Adoさんが「新時代」で「日本レコード大賞」の候補となる「優秀作品賞」に選ばれたことも話題になっている。

　2022年の活動の集大成として、ウタはライブツアー「UTA TV LIVE TOUR」を実施する。歌番組の出演を含めた全6公演のライブツアーで、12月14日放送のフジテレビ系の音楽特番「2022FNS歌謡祭」を皮切りに、TBS、テレビ朝日、日本テレビと各局の大型音楽特番に軒並み出演。番組ごとに衣装を変え、番組司会者とのトークまでやってのけた。キャラクターであるウタが、現実世界で活躍するアーティストと肩を並べ、まさに虚構を飛び越えたパフォーマンスを繰り広げてきた。

　◇紅白歌合戦とウタの奇妙な符合　出場を危ぶむ声も

　ライブツアーの千秋楽として、ウタは大みそかに放送される「第73回NHK紅白歌合戦」の大舞台に立つことになる。アニメのキャラクターが紅白歌合戦に出場することに驚いた人も多いだろう。しかし、興行収入187億円を突破する「ONE PIECE FILM RED」の大ヒット、そしてウタの活躍を見るに「ウタの紅白出場は必然だったのでは？」とも思える。

　紅白歌合戦とウタには奇妙な符合も見られる。ウタの髪は赤と白のツートーンカラーであり、劇場版アニメのタイトル「ONE PIECE FILM RED」にも“RED”の文字が入っている。“紅白のウタ”が、紅白歌合戦に紅（RED）組歌手として初出場するのだ。「ONE PIECE」の原作者・尾田さんもウタの紅白出場が発表された際には「現実と仮想空間があいまいになろうとするこの時代に未来の常識を持って生まれた人物がウタだったのかなと、映画を作り終えようとする時期に、ふと思いました。意図してないからこそ、髪色が紅白のウタが紅白に出場することにさえ、運命を感じてなりません。すごいことです」とコメントしていた。

　一方で、ファンの間では「ウタが紅白に出て大丈夫なの？」といった声も上がっている。それにはウタが持つとある能力が関係している。実はウタは、「ウタウタの実」という悪魔の実の能力者であり、ウタの歌を聴いた者は夢の世界にいざなわれてしまう。そんなウタの歌が日本で最も注目を集める歌番組で披露されるので、視聴者が夢の世界にいざなわれてしまうかもしれない……と心配する声があるようだ。もちろん、ウタはアニメのキャラクターなので、現実にそんなことが起きることは考えにくいのだが……。現実と虚構の架け橋となったウタであれば、何かが起きるかもしれない。

　Adoさんは、紅白の舞台に立つウタに「歌姫としてキラキラと輝き続けるあなたが今回この舞台に立つことを心からうれしく思います。当日はあなたのパフォーマンスで私たちの“今”を鮮やかに彩ってきてください。そして、全ての人たちに夢を見せてもらえたらと思います。応援しています」とエールを送っていた。

　紅白でウタがどんな夢を見せてくれるのか。注目したい。