2月3日公開の映画「ぬけろ、メビウス!!」(加藤慶吾監督)に主演する坂ノ上茜さん。24歳にして大学進学に向けて突っ走る、主人公・櫻川優子を演じた。劇場公開こそ、昨年の主演映画「愛ちゃん物語(ハートマーク)」の後になってしまったものの、撮影では「ついに主演を背負わせてもらえるんだと思って挑んだ作品だったので、感慨深い」と語る。また「作品を(視聴者に)届けるまでが役目」と主演女優としての自覚ものぞかせる坂ノ上さんに話を聞いた。
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「ぬけろ、メビウス!!」は、建設会社で契約社員として働く主人公・櫻川優子が、正社員になる前に雇い止めを宣告されたことをきっかけに、かつて諦めた教員になる夢をかなえるべく、24歳にして大学進学に向けて走り始める、“遅咲き青春映画”だ。
演じた優子は20代半ばという年齢や、地方で生まれ育った点など、熊本出身で現在27歳の坂ノ上さんにとって、決して遠くない存在。「役柄が全て自分に当てはまったわけではないのですが、なんとなく自分や、自分の身近にいる人に近かったりしたので、“こういう女の子いるよね”とイメージはしやすかったです」と明かす。
実際に役作りでは、優子に近しい実在の友人をイメージしながら固めていったという坂ノ上さん。また優子の衝動的な部分は、数年前の自身と重なる部分があったといい、「思いつきで走ってしまうところとかは似ているかもしれないです」と認める。
「基本的に私は怖がりで、本格的に何かをやるってなったときはメリットとデメリットを並べて、どっちの比重が大きいのか、考えてしまうタイプだったんですが、その反動で、突発的に行動してしまう瞬間がありました。それこそ20代前半までは。だから、その頃の自分と優子は似ていると思います」と語った。
そんな、坂ノ上さんにとってある意味“等身大の女性”の優子として、劇中では車の運転も披露。「この作品で車を運転するシーンがあったので、2カ月くらい教習所に通って免許を取りました。車の免許を取るつもりはなかったのですが、役作りの一環として取るならいいかもと思い、挑戦してみました。そのあとにほかの作品で運転シーンがあったので、あのタイミングで取っておいてよかったなと思いました」と笑顔を見せた。
坂ノ上さんいわく、車の運転免許取得が「小さい挑戦」なら「大きい挑戦」となったのが、主演としての現場の環境作りだ。
「私も含めてみんながみんな、主演であるとかないとか関係なく、普段からより良い環境作りを心がけていると思うのですが、今回は特に、いろいろな方と積極的にコミュニケーションをとるようにしようと。そうすることでキャストもスタッフも、何かあったときに言い出しやすい環境になればいいなと思いましたし、そのためにも一人一人、きちんと顔と名前を覚えて、それぞれ役職ではなく名前で呼ぶ、というのも心がけました」と振り返る。
手本にしたというのが、坂ノ上さんが出演した2019年の映画「見えない目撃者」の主演・吉岡里帆さんだ。
「私は1日だけの撮影だったのですが、すごく印象に残っている現場で。なじめるかどうか、少し心配しながら控室に入ったら、吉岡さんが最初に『茜さん、よろしくお願いします』と名前を呼んでくれたのが、すごくうれしかったですし、いまだに忘れられなくて。それからずっと吉岡さんが大好きです。自分がされてうれしかったことを、自分が主演をするときがきたら、同じことをしようと思っていたので、それを少しは実践できたかなと思っています」とほほ笑んだ。
さらに「主演って演者ではあるのですが、スタッフと演者のパイプみたいだなってことを、撮影中に実感して。(主演は)“間をとりもつ人”という新たな発見もありました」と振り返る坂ノ上さん。
改めて完成した映画について「自分の代表作になると思う」と打ち明け、「評判が全てとは思っていないですし、届いてほしい人に届くことが一番大事」とも話すと、「最初、見たときにピンとこなくても、作品はずっと残り続けるから、何年後かに見返したときに、『すごく良かった』と思えることが映画の魅力の一つだと思います。そう言った意味でも、主演は作品を(視聴者に)届けるまでが役目。そのためにも、自分の思いを取材や舞台あいさつで、きちんと言語化できるようになりたいです」とさらなる目標を掲げた。
「ぬけろ、メビウス!!」の一足先に公開された小沢仁志さん主演の映画「BAD CITY」では、ヒロインの女性刑事を演じ、バキバキのアクションにも挑戦と、「ぬけろ、メビウス!!」やバラエティー「町中華で飲(や)ろうぜ」(BS-TBS)出演時とは、まったく違った顔を見せている。「『町中華』やラジオで私のことを知ってくれた方にとっては、ものすごくギャップがあると思います。本当に顔つきもヘラヘラしていないので(笑い)。『怒らせたら怖いぞ』って思ってもらえるんじゃないかな」とアピールした。
女優デビュー作の特撮ドラマ「ウルトラマンX」(2015年)から今年で8年。「その時々でいろいろなことがあって、悔しい思いもしたりしましたが、8年くらいやってきて、最初は現場で初めまして』ばかりだったのが、少しずつ『またよろしくお願いします』とか『お久しぶりです』と口にする機会が増えて、これまでやってきたことが無駄じゃなかった、次につながっているんだと実感できるようになってきました。本当に一つ一つの積み重ねで、そういう機会をこれからもっと増やせるよう、今の枠にとどまらずに、挑戦していけたらと思っています」と前を向いた。
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