薬屋のひとりごと
第13話 外廷勤務
12月27日(金)放送分
劇場版アニメ「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)のブルーレイディスク(BD)、DVD「シン・エヴァンゲリオン劇場版 EVANGELION:3.0+1.11 THRICE UPON A TIME」が3月8日に発売された。「エヴァンゲリオン」シリーズは、1995~96年にテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」が放送され、その後、劇場版が公開された。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、2007年から公開されている「新劇場版」シリーズの完結編として2021年3月8日に公開され、興行収入が100億円を突破するなど大ヒットした。テレビシリーズから25年以上、アスカを演じてきた宮村優子さん、「新劇場版」シリーズの「:Q」から北上ミドリ役としてシリーズに参加した伊瀬茉莉也さんに、“完結”から約2年たった今の思いを聞いた。
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伊瀬さん 長年、作品を愛してくださっているファンの方たちが、年代問わず本当にたくさんいらっしゃるので、SNSで多くの皆さんのお声を目にしました。そういうところで、本当にこれだけ多くの方が最終章を待ち望んでいて、しかもそれが皆さんのすごく納得できる形で終わりを迎えられているんだなということを肌で感じました。
伊瀬さん 私たちが新作を制作する話を聞いたのは、去年の秋ごろでした。
宮村さん 特典って何かな?と思いましたよね。
伊瀬さん どんなエピソードを描くんだろう?みたいな。ミドリは、ヴィレクルーの一員なので、登場するとしてもそんなにしゃべらないのかな?なんて思っていたのですが、ふたを開けてみたら、ミドリの過去、バックボーンが描かれたお話だったので、本当にとても驚きました。でも、同時にミドリの過去を知ることができて、しかもアスカに命を助けてもらっていたということも知れて、改めて「シン・エヴァ」の時のせりふも違った捉え方ができるというか。もっと一歩先に進んだ深い意味が込められていたんだなと。例えば、「式波少佐の回収はいいですよ」というせりふがそうですね。
伊瀬さん 「シン・エヴァ」の収録の時は、シンジと比べてアスカが仲間だから「式波少佐の回収はいいですよ」と言ったとフラットに捉えていたんですけど、特典映像を演じたことによって「そうか、ミドリにとってはアスカは命の恩人でもあるんだ」ということを知れたので、よりそのせりふに深い意味合いがあったんだなと。あと、何よりミドリの髪の色ですよね。元々は黒髪ロングだったのが、なぜピンクの色になったのか?という理由がなかなかに重かった。びっくりしました。
宮村さん 私は、空白の14年間にいろいろあったんだろうけど、アスカとミドリの間にもこんなことがあったんだという驚きがありました。ミドリとアスカは一緒にヴィレで働いてるから、もちろん面識はあっただろうけど、こんなバックボーンがあったんだなと。いかにも生き残った者の寄せ集めで形成されたヴィレで、思いはそれぞれいろいろあってというのが熱いなって。ただ、先にちょっとぐらい教えてよって思っちゃいました(笑い)。
伊瀬さん 一番印象的なのは、ヴィレクルーのみんなにミドリがシンジを助けに行くのは嫌だというシーンです。なんであんな疫病神を助けにいかなきゃいけないんだと。でも、ヴィレクルーはミドリをたしなめて、シンジを擁護したり、かばったりする。そこで、ミドリが言う「みんな身内に甘すぎ、誰のオシッコかも分からないこの再生水と同じ、清めれば済むと思ってる……そんなワケないっしょ」というせりふにミドリのこれまでの思いがすごく表れていて。ミドリは家族を失って、その元凶に一発食らわせることを心の支えにして生きてきた部分があるのなら、それをみんなに否定されると、自分でもどうしていいか分からなくなっちゃうのではないかと考えました。復讐(ふくしゅう)心を糧に生きてきているので。なので、「そんなワケないっしょ」に怒りがこもっている。あのせりふとシーンはすごく好きです。
宮村さん 私はシンジくんにレーションを食べさせるところが一番好きです。あのシーンの台本を読んだ時、アスカちゃんがシンジにぶつけたい思いをまさに言ってくれている!と感じて、ありがたいシーンだなと思いました。あのシーンはモーションキャプチャーを使ったCGも使われているとのことで、アスカがシンジに馬乗りになった動きがすごく気持ちとよりマッチしていて。まるで無気力な相手だから、いくら声をかけてもうんともすんとも答えないんだけど、そうせずにはいられないし、後になって自分の中で「やっちまった」「こんなふうにする予定はなかったのに」みたいな後悔もあるんだろうなと。そういうことも含めて、全部を吐露しちゃっている。アスカの14年間たまっていたものと、出会ってから言いたかったけども言えなかったことを全部ぶつけられたシーンだと思っていて、すごく好きです。
伊瀬さん 「エヴァンゲリオン」の現場は、シーンごとに結構細かく区切って録(と)ることが多いんですけど、テスト、本番だけじゃなく、庵野総監督がいろいろなパターンで、役者さんの引き出しを見たいと、リクエストされることが多いです。同じせりふでも、ちょっとアプローチが違ったり、強弱だったり、ニュアンスが違ったりしただけで、がらっと印象が変わるので、皆さんが一つのせりふに対して何テークも重ねる。でもそれは、ダメだからテークを重ねるんじゃなくて、可能性としていろいろなものを見てみたいという希望からだと思います。
宮村さん ただ、完成を見ても、「あれは何テーク目だ」とかは分からないですけど(笑い)。
伊瀬さん 分からないですね。たしか「シン・エヴァ」は、最初にA、B、Cパートの台本をいただいて、ちょっと期間をあけてD、Eパートという感じだったんです。物語としてはつながっているけど、役者陣の中では、数カ月収録の期間があいたので、A、B、Cパートを録っていた時の熱量、声のテンション感を忘れないようにして、つながるように工夫するなど、不思議な緊張感はありました。
宮村さん ありましたね。映画って長いものですが、こんなに(収録が)分かれていることはないもんね。普通は台本を1冊読めば、「こういう話なんだ」と分かるところが、「この後どうなるんだろう?」と思っても次のパートの台本はまだない、という状況もありました(笑い)。
伊瀬さん ミドリは家族をニアサーで失った経験を経て、ヴィレクルーの一員になっています。今回の特典映像でも、アスカが「この世界をこんなふうにしたバカがいる」「そいつに一発食らわせるために生きろ」ということをミドリに言っていますが、その言葉を支えに生きてきたので、船の甲板でシンジに向かって銃を突きつけるシーンは、すごく大事に演じたいなと思っていました。本当に長年の思いが積み重なったシーンだったと思うんですけど、ミドリよりも取り乱したサクラ(鈴原サクラ)が後ろから現れるんですよね。そこで自分の復讐心だけじゃなく、サクラの気持ちも分かる。そのシーンはすごく大事に演じようと思っていました。
宮村さん アスカちゃんって、本当にギリギリを生きてるんですよ。だから、私自身も余裕を見せちゃいけないというか。アスカを演じる時はいつもギリギリにやって、ギリギリのところで踏ん張っているという感じでした。でも、そんなアスカちゃんだからこそ、みんなが応援してくれているというか、励まされている部分もあるのかなと思って。だから、アスカちゃんは、ケンケンが寄り添ってくれていることはうれしかったのではないかと思います。恋愛とかではなくて。ギリギリで突っ走っている女の子を包み込める男性は、なかなかいないと思いますから。
伊瀬さん 私は、声優として初めてレギュラー出演した作品が安野モヨコ先生のマンガが原作の「シュガシュガルーン」だったんです。その時、高校生だった私は、庵野秀明さんと出会うタイミングがあって、その際「いつか一緒に仕事しようね」と言ってくださって。その一言があったから「私もいつか庵野さんと一緒に仕事をするんだ」と、すごく心の支えになっていました。その夢がまさか「エヴァンゲリオン」でかなうことになって、10年越しの悲願というか、思いをかなえることができたので、私にとっても「エヴァンゲリオン」はすごく特別な、大切な、思い入れのある作品です。さらに、テレビシリーズの頃からずっと応援してくださってるファンの皆さんあってこその今回の「シン・エヴァ」だと思うので、改めてファンの皆さんに最大の感謝の気持ちを送りたいです。本当に感謝ですね。そういう気持ちでいっぱいです。
宮村さん 私は初めてオーディションを受けた作品が「エヴァ」なんですよね。だから、右も左も分からなくて。当時の事務所は、私のことをすごくおとなしい女の子の役をやるタイプの役者さんと思っていたみたいで、最初は「レイ役で受けてください」と言われたんです。それでレイを演じたら「すみません、もっとおとなしく」と言われて(笑い)。「おとなしくやっているつもりなんだけどな」って。その後、「もう一キャラ受けてください。この子は元気でいいので」と言われて受けたのがアスカちゃんでした。それから四半世紀の間、アスカちゃんとお付き合いすることになりました。
宮村さん その頃から、世界の「エヴァ」を知ってくれている人が見てくれて、それぞれ感想を持って、好きになってくれて。あの時は、演じていてしんどかったこともあるけれど、これだけ一つの作品で、みんながつながることができた。これがどうして世界平和につながらないんだろう?と思うぐらい。そして、最後に同じ思いで、エモい感じで完結を迎えられたんですよね。すごい歴史の1ページに参加させてもらえてうれしいし、これからも皆さんと一緒に「エヴァっていい作品だよね」と語り継いで、おばあちゃんになりたいです(笑い)。
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