ディズニーの名作アニメを実写化した映画「リトル・マーメイド」の吹き替え版で、主人公のアリエル役に抜てきされ注目を集めている豊原江理佳さん。8月に世田谷パブリックシアター（東京都世田谷区）で上演される舞台「メルセデス・アイス MERCEDES ICE」に出演する。舞台は、18歳以下を限定で無料招待するなど、夏休みの子供たちに心に残る演劇経験を提供することを目指している。豊原さんにも作品に加え、子供時代の“ひと夏の経験”を語ってもらった。
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◇白井晃演出の舞台に立つのは今回が初
「メルセデス・アイス」は英国の作家、フィリップ・リドリーさんの児童小説が原作。街の中心にそびえ立つ巨大なタワー（Shadow Point）を軸に、その街に暮らす3世代にわたる人物たちが、愛や憎しみ、喜びや悲しみとともに生きる様子が描かれる。白井晃さんが演出を手掛け、細田佳央太さん、東野絢香さん、松尾諭さんらが出演する。
豊原さんが、白井晃演出の舞台に立つのは今回が初となる。
「先日、『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』という白井さんの舞台を拝見させていただきました。フランス革命というすごく大きなテーマなのですが、その中でも、一人一人が何を感じ、どういうふうに葛藤し、苦悩して決断するのかが描かれていて。人間の心の中をすごく繊細に描く演出家さんでいらっしゃるのだなと思いました」
「メルセデス・アイス」では、主人公のメルセデス・アイス（細田さん）の幼なじみで、純粋な女の子・ヒッコリーを演じる豊原さん。
「台本を読んだ印象では、大人になるということ、人やその心が成長するということがテーマになっていると感じました。本当に大事なことは何なのか、人を愛するということは何なのか、ということも。私は人を愛することと、自分を愛することはセットになっていると思っているのですが、ヒッコリーを通して、そういったことが描かれているという印象を受けました」
◇ヒッコリー役は「当て書きかなと思うくらい」似ている
演じるヒッコリーに対する印象は「優しい、というか、人の期待に応えようとする女の子だと思っています」と話す。
「ヒッコリーはすごく優しいのですが、どうしたら自分のことを愛してもらえるんだろうとも思っていて。子供ならではの欲求を抱えた子でもあるのかなと感じましたし、物語の中で成長して、自分を大事にする、自分を愛するということを学んでいく女の子という気がします」
また「私は、役と自分とを両方見て、共通点とか探しながら台本を読むことが多い」とも明かす豊原さんは、ヒッコリーと自身の子供時代を重ねて、「すごく似ているなって思いました。正直、当て書きかなと思うくらい（笑い）」と告白する。
「これをしたら私のことを愛してくれるのではないか、というように私も日々、自分の親や、存在が近ければ近い人ほど考えるところはあったので、そういうところですごく似ていると思いましたし、せりふがすごく響きました。子供ってすごく周りを見ているし、自分が愛している人に愛されたいという気持ちがすごくある。そういった意味では、子供の純粋さって、自分の欲望に対しての純粋さだったりもするのかなって思います」
◇「アニー」よりも前、「これが好きなんだ」って燃えた瞬間
現在、舞台を中心に活躍している豊原さん。デビュー作は2008年上演の名作ミュージカル「アニー」で、主人公のアニーを演じた。
「『アニー』をやったときはまだ子供だったので、はっきりと『これを仕事にしたい』とは考えていなくて。ただただ歌うことが楽しい、舞台に立つことが楽しいという気持ちでやっていました」
実は、その「アニー」よりも前に、“原点”となる舞台経験があったと話す豊原さん。8、9歳のころ、夏休みに地域で催された音楽劇に出たことが「それこそミュージカルを始めるきっかけ」となったとか。
「地域の子供がやる市民ミュージカルがあって、ちょうど習っていた剣道をやめて時間ができていたところで、母に勧められて参加したのがすべての始まりです。作品は『ぞうのたまごの玉子焼き』。当時はストーリーもよく分からないし、主役でもない、森の妖精のような役だったのですが、本当に楽しくて。習い事をたくさんやっても逃げたりしていた私が、それだけは『どうしても通いたい』となって。『これが好きなんだ』って燃えた瞬間です。母には感謝しています」
舞台「メルセデス・アイス MERCEDES ICE」は8月11～20日に世田谷パブリックシアターで上演。チケット（一般8000円）は販売中。18歳以下は各回150人限定で無料招待（要予約／別途発券手数料が発生）する。
※クレジット（敬称略）
スタイリスト：津野真吾（impiger）
