解説:映画「ゴールデンカムイ」ができるまで ピタリとはまったキャスティング 世界も視野に?

映画「ゴールデンカムイ」のビジュアル(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
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映画「ゴールデンカムイ」のビジュアル(C)野田サトル/集英社 (C)2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

 野田サトルさんの人気マンガが原作でアニメもヒットした「ゴールデンカムイ」が、久保茂昭監督のメガホンで実写映画化。1月19日に全国で公開される。主人公の“不死身の杉元”を演じるのは俳優の山崎賢人さん(※1)。そのほか、アイヌの少女、アシリパ(※2)は山田杏奈さん、鶴見中尉が玉木宏さん、土方歳三を舘ひろしさんら“再現度が高い”キャストが話題だ。映画「ゴールデンカムイ」はどのように作られていったのか。製作幹事社に名を連ねるWOWOWの大瀧亮プロデューサーに、この一大プロジェクトが始まったいきさつやキャスティングの裏側を聞き、作品の魅力を解説する。

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 ◇始まりはコロナ禍の2020年夏

 映画は、2014~22年に「週刊ヤングジャンプ」(集英社)で連載された同名マンガの実写化。原作は、日露戦争終結直後の北海道を舞台に、アイヌの埋蔵金を巡るミステリーと、大自然の中で一癖も二癖もあるキャラクターたちによって繰り広げられるサバイバルバトルを描き、コミックス全31巻の累計発行部数は計2700万部超(2024年1月時点)。テレビアニメも人気で第1~4期までが放送されており、「最終章」の制作も発表されている。

 始まりは2020年の夏。コロナ禍で外出が制限され、“おうち時間”が増えていた時期に外資系配信プラットフォームが国内で急速に勢力を広げていた。

 WOWOWはそれ以前から「上質な作品が見られるチャンネル」として認知されていたが、製作費をかけて世界に向けて発信していく外資系の動きに、指をくわえて見ているわけにはいかなかった。「大きな作品を作ることでもう一度WOWOWらしさを伝えられたら」と、当時のWOWOWの制作局長が立ち上がり、前年に映画「キングダム」の1作目をヒットさせていた「CREDEUS」の松橋真三プロデューサーに声をかけた。

 「当時、松橋さんが追いかけられていたのが『ゴールデンカムイ』でした。大変な労力と製作費がかかりますよと言われましたが、WOWOWとしてもそこにしっかりと覚悟をもって挑みたい、と」と伝え、映像化権の獲得を2社で乗り出すことにした。

 他にも映像化権を得たいという会社が多数あり、コンペとなったが、「2021年の初頭くらいに、集英社さんから、われわれのチームに映像化権と託しますと言っていただいて。そこから製作が始まりました。だから3年くらいのプロジェクトになっているかな」と大瀧さんは振り返る。

 「ゴールデンカムイ」の話に乗った理由は、「見たことのない映像体験を提供できる方が、より日本のIPやスタッフのパフォーマンスの素晴らしさを伝えやすいかなというのもあり、こういう人気のマンガ原作の大作を狙うに至った」といい、そこには世界を視野に入れた戦略があることをうかがわせる。

 ◇すべてに行きわたった「原作リスペクト」

 実写化に当たって最も気をつけたことは、「原作リスペクト」だった。

 「立ち帰るべき設計図は原作ですので、ここからブレないようにということです。熱狂的なファンが多い作品で、原作を愛している方々、そこから派生してアニメにもたくさんのファンがいらっしゃるので、実写になって皆さんがついてきてくださる、認めてくださるものにするのが第一義であろう、と」と考えた。

 松橋さんが「カッコいいアクションを撮らせたら天下一品」と声をかけた久保監督は、「それに加えてオタク級にこの原作が大好きで、グッズも集めてらっしゃるような方だったので、まさに適任者だった」と安心して任せられたという。

 “再現度の高い”キャスティングも“原作リスペクト”から来ている。

 主演の山崎さんに関しては、「名だたるマンガ原作をたくさん実写化で背負ってきてらっしゃいますし、染まり抜くことができる器用さがある。素晴らしい才能をお持ちの方」とたたえる。見どころの一つとなるアクションも「不死身の杉元というキャラクターを体現できるとすると、今の日本の同年代の俳優の中では山崎さん以外にはいない。現場のスタッフも高い水準を彼に求めることができた」と絶賛する。

 アシリパ役の山田さんはオーディションで決まった。「アシリパは自立していてたくましいキャラクター。少女の設定ではあるものの、ちゃんと芯が通った女優さんでないといけない」と考えていた。山田さんに会ったとき、「目力の強さと意志の強さ。人柄を見たときに、アシリパに通じるものがあって。山田さんだったらこの大役をお任せできるなと感じた」という。決まったのち、衣装合わせをした山田さんを見たとき「見事にピタッとはまった」とスタッフ陣は喜んだ。

 鶴見役は玉木さんと「割と初期の段階でプロデューサー陣としては一致していた」という。原作者の野田さんからも名前が挙がっており、「鶴見といえばすごく良い声で、話術で人を引きつけるカリスマ性のあるキャラクター。それを体現していただけるのはビジュアルもさることながら良い声の玉木さんならぴったりだなと、オファーさせていただきました」と明かす。玉木さんは原作を読んでおり、鶴見をやれるといいなと思っていたら、見事にオファーが来て「すごくうれしかった」と即快諾したという。「大きなプロジェクトの中でこういう奇抜なキャラクターをやれることに、すごくやりがいを感じてくれたんだと思います」と大瀧さんは推察する。

 土方役の舘ひろしさんは「土方が生きていたらという想像上のキャラクターではありますけれど、すごくスマートでダンディーなキャラクター。土方だけは、原作の中でもコメディーシーンがないんですよね。この年代でいえば舘さんしか思い浮かばない」とオファーした。役が決まって、舘さんが衣装をまとうと「73歳だそうですが、脚が長くて、この年代でこんなにスタイルの良い方はいないと。土方が舘さんでなかったら誰だったんだろう?というくらい、舘さん以外に考えられなかった」とピタリとはまった。

 ほかにも白石由竹役の矢本悠馬さん、尾形百之助役の眞栄田郷敦さん、二階堂兄弟役の栁俊太郎さん、月島基役の工藤阿須加さん、牛山辰馬役の勝矢さんらも「結果的には皆さん原作が好きだった。役として演じていただく以上にこの作品に愛情があるというところが強みになった」と振り返る。

 ◇今後の構想は?

 今後の構想は? 「まずはこの最初の映画が大ヒットしてくれないことには。今作の2時間8分に没頭してもらえればと思いますね。2時間8分を見終わって、すぐに頭からもう一度見たくなる作品になっていると思います。エンタメのさまざまな要素、ドラマ、サスペンス、アクション、グルメ、コメディー、歴史、アイヌ文化もありと、いろんな角度から、またさまざまなキャラクターの視点で見られる。隅々にまでこだわって作っているので、一度といわず何度でも見てほしいですね」とメッセージを送った。

 ※1:山崎の「崎」は“たつさき”が正式表記。
 ※2:アシリパの「リ」は小文字が正式表記。

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