スタジオジブリの劇場版アニメ(宮崎駿監督)を舞台化した「千と千尋の神隠し」に、ハク役で出演している増子敦貴さん。超人気作の実写舞台、さらに人気の登場人物・ハクという大役に「出来事として特別すぎて、出演している実感が湧きにくい(笑い)」と語る。増子さんにハク役のオーディションについてや演じての心境、また「間違いなく一つのターニングポイントになった作品だし、青春の一つ」と目を細めるスーパー戦隊シリーズ「機界戦隊ゼンカイジャー」(テレビ朝日系、2021~22年)への思いなどを聞いた。
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舞台「千と千尋の神隠し」は、2022年に東宝創立90周年記念公演として初めて舞台化され、今年3月から再演。ヒロインの千尋役を橋本環奈さん、上白石萌音さん、川栄李奈さん、福地桃子さんの4人が交互に務め、帝国劇場(東京都千代田区)からスタートし、名古屋、福岡、大阪、札幌で上演予定。4~8月には英ロンドンでも公演が行われる。
「初日が開けるまでは、初演のハクの評価を下回らないかプレッシャーと不安でいっぱいだった」という増子さん。「でも初日のカーテンコールの景色を見てからは安心感も出たし、何より帝劇に立つ目標が叶(かな)ったうれしさがこみあげてきました」と笑顔で話す。
醍醐虎汰朗さん、三浦宏規さんとのトリプルキャストで演じるハク役は、オーディションで勝ち取った。「マネジャーさんからオーディションがあると聞いた瞬間に、家を飛び出しそうになるほど、『オーディションがあるけどどう……』のタイミングで『やります!』と言うぐらいの勢いでした(笑い)」と振り返る。
そこまでハク役に前のめりになったのは「自分が好きな作品だし、初演も見たのですが、その感動が忘れられなかったんです。あと、ハクが自分に合っている自信がありました」と語る。
自信の源はビジュアル。「一番は色白なところかな(笑い)。それとクールな目つき、凛(りん)としている感じが自分の骨格と合っている気がした」と説明する。
オーディションの思い出を聞くと、ハクが竜になるシーンを披露する際に「ダンス&ボーカルグループ(GENIC)に所属しているので『ダンスで見せよう』と、オリジナルのダンスを考えて挑んだのですが、そんなに手応えはなかったです……」と苦笑いで明かした。
ハクは試行錯誤しながら演じているという。
「ハクはどういう気持ちで竜になっているのだろうか?とか、可能な限り袖に居て、壁に向かいながら気持ちを作る作業をしていました。あと、湯婆婆に従っているときと千尋と二人きりになった瞬間の二面性を、どうニュアンスをつけるかはいまだに模索中です。今は強めにつけています」
今後の公演に向けては「毎回初日のつもりで新鮮に、緊張感と熱量を持って演じるので、ハクが目の前にいるドキドキ感と作品の世界観にどっぷり浸かって、味わって帰ってもらいたいです」と話した。
増子さんといえば、昨年出演した人気BLマンガが題材のドラマ「体感予報」(MBS系)でアジア圏で注目を集め、中国ではファンイベントも開催。SNSのフォロワーは20万人増えたという。ドラマに舞台と大きなチャンスを続けてつかみ、ブレーク必至な現状だが「自分はまだまだ」と冷静に話す。
「街中にいる人に『増子敦貴です』と言ってもピンとこない人もいるけど、例えば(千尋役の)橋本環奈さんなら誰でも『おお!』となると思う。そういう方々との間に壁を何個も感じています。その点、自分はまだまだです。どんなエンターテインメントでも、知名度があって人を呼べると思うので、生で見たいと思われる人になりたい。そして、俳優として朝ドラ(NHK連続テレビ小説)に出て、GENICとしては日本武道館に立つことが今の目標です」
そんな増子さんが「間違いなく一つのターニングポイントになった作品」と語るのが、「機界戦隊ゼンカイジャー」。放送終了から2年たつが、「もう2年ですか……うわーってなります」と笑う。
ただ「ゼンカイジャー」キャストとの交流は続いているといい「きいちゃん(駒木根葵汰さん)はラジオによく呼んでくれるし、一緒にご飯にも行きます。スーツアクターの皆さんとは連絡も取り合うし、最近あまり会えていないけど、(世古口)凌くんのことだから頑張っているだろうし、ひなみん(森日菜美さん)もインスタで見る限り元気そうで何よりです」とにっこり。
おのおのがそれぞれのフィールドで活躍中だが「誰か一人が飛び抜けるのではなくて、みんなで一緒に上に行きたい。仲間なので」と力を込めた。(取材・文・撮影:遠藤政樹)
※宮崎駿監督の「崎」は正しくは「たつさき」