伊藤沙莉さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」(総合、月~土曜午前8時ほか)。直近の第12週「家に女房なきは火のない炉のごとし?」(6月17~21日)では、ヒロインの寅子(伊藤さん)らが、戦争孤児の問題と向き合う姿が描かれたが、同週で新たに登場し、視聴者の注目を集めたのが、道男役の俳優・和田庵(わだ・いおり)さんだ。2021年公開の映画「茜色に焼かれる」で新人賞“3冠”に輝いた若き実力派の“横顔”を紹介する。
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和田さんは2005年8月22日生まれ、東京都出身の18歳。8歳で芸能活動をスタートさせ、映画「ミックス。」(2017年)で俳優デビュー。連続ドラマ「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系、2018年)などにも出演してきた。
そんな和田さんは2021年、「舟を編む」(2013年)や「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(2017年)で知られる石井裕也監督がメガホンをとった「茜色に焼かれる」で、主演の尾野真千子さんの息子役にオーディションで抜てきされる。
石井監督が「愛と希望」をテーマに、時代に翻弄(ほんろう)される一組の母子を描いた同作。尾野さんが逆風を受けながらも前向きに歩もうとする母親・田中良子、和田さんが良子の13歳の息子・純平を演じた。
和田さんいわく「茜色に焼かれる」は、「母と子を取り巻く矛盾や理不尽さの中でコントロールできない感情に振り回されながら、それでも幸せになりたいと願う親子を描いた作品」で、自身にとっては当時、海外留学を挟んで約2年ぶりの演技だった。
「どこか演じることに、飢えていたのかもしれません」との言葉通り、その“飢え”は純平役へと昇華される。学校の上級生グループに家を放火されて、涙を流すシーンでは、石井監督から「泣いている純平の画(え)がほしいわけじゃない、気持ちがほしいんだ」と言われ、初めて泣く演技にも挑戦。結果「第95回キネマ旬報ベスト・テン」で新人男優賞、「第76回毎日映画コンクール」でスポニチグランプリ新人賞、「第35回高崎映画祭」で最優秀新人俳優賞を受賞するなど、俳優として評価を一気に高めた。
ちなみに同作のオーディションで石井監督と対面した際にかけられたのが、「“和製リバー・フェニックス”みたいだな」との言葉。リバー・フェニックスといえば、映画「スタンド・バイ・ミー」(1986年)で若くして注目を集め、「ジェームズ・ディーンの再来」などと呼ばれるも、ガス・ヴァン・サント監督の「マイ・プライベート・アイダホ」(1991年)などを経て、23歳でこの世を去ったカリスマ。だが和田さんは、その比較に最初はピンとこなかったという。
それでもそのはず、リバー・フェニックスが亡くなったのは1993年で、和田さんが生まれる10年以上前の出来事。それでも和田さんは「(石井監督の発言に)周りから『おおー』という声が上がったので、『すごい人なんだな』とは思いました。その場では『ありがとうございます』と言って、帰って調べてみたら、本当にすごい人でした」と振り返っている。
「茜色に焼かれる」以降は、WOWOW初のハリウッド共同制作ドラマシリーズとして、2022年4月に配信・放送がスタートした「TOKYO VICE」に出演。さらに2023年公開の映画「エゴイスト」で鈴木亮平さんの中学時代に扮(ふん)した。
さらに、今年4月1日にカンテレ・フジテレビ開局65周年特別ドラマとして放送された「GTOリバイバル」の生徒役を経て、今回出演したのが、和田さんにとって初の朝ドラとなった「虎に翼」だ。
演じる道男は、生きていくために犯罪に手を染めている戦災孤児。「轟法律事務所」に出入りし、寅子ともそこで出会う。その後、道男は猪爪家に居候するようになり、花江(森田望智さん)にとった態度が誤解され、一度は家を飛び出してしまうが、死期が迫るはるに会うため舞い戻り、はるからは「全てを突っぱねちゃダメ」などの言葉を贈られる。
はるはその後、この世を去るが、道男は花江に謝罪。そして、再び商売を始めようと東京に帰って来た「傍聴マニア」の笹山(田中要次さん)の元で、すし職人を目指すことになり……。
「茜色に焼かれる」の純平とはまた違った形で、思春期特有のどこか粗野だけど、傷つきやすい繊細さ、揺れ動く心を表現した和田さん。2022年のインタビューでは、“恩師”の石井監督から「茜色に焼かれる」で新人賞“3冠”に輝いたときに「2年後が危ない」と言われたことを明かしてて、今年がちょうどその2年後にあたる。和田さん自身は「多分、『調子に乗るなよ』って戒めの言葉で、初心を忘れず、注意深く、これからもこのお仕事に励んでいけたら」と受け取っていて、この先の成長がとても楽しみだ。
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