フェイクマミー
第9話 ニセ母計画崩壊!?追い込まれた家族の決断
12月5日(金)放送分
今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第107回(8月26日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? 第107回は、「結ばれるのでは?」と視聴者の間で期待度が高い蘭子(河合優実さん)と八木(妻夫木聡さん)の関係性に変化の兆しが見られた注目回だ。テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移で、2人のシーンが本当に“注目”されていたか調べてみた。
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「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせたかしさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。
八木のひらめきで作った嵩(北村匠海さん)の詩とイラストが入った陶器のグッズは、追加注文が来るほど売れていた。第107回は、嵩の詩が入ったそのカップで紅茶を飲むのぶ(今田さん)が、詩を声に出して読み上げ、一緒にテーブルを囲む嵩を冷やかす楽しい場面から始まる。主題歌が流れるオープニングの後、カフェで嵩と健太郎(高橋文哉さん)が食事をしながら八木について話している場面へと続く。実は注目度は、スタートから午前8時4分までは61~63%台と、ずっと低いままだ。
午前8時3分台の途中から、場面は八木の会社へ。事務仕事を手伝うため、事務所を訪れていた蘭子は、やって来た孤児たちをいとおしそうに抱きしめる八木の姿を見て、頰を緩める。2人の関係が少しずつ進展している感じを与える場面だが、この場面も4分台後半。期待度はまだ伸びてこない。
午前8時5分に70.4%と、ようやく期待度が70%台の大台に乗る。柳井家に電話してきた八木が「もっともっと詩を書け、とそこにいる詩人に伝えてくれ」と、のぶに伝言を頼む場面だ。のぶが「うちの人はマンガ家ですから、もっと、もっとと言われても、そんなに次から次へと詩は書けません」と反論する。のぶのそんな一言が、視聴者の視線を集める“号砲”になったのかもしれない。
その後は注目度が伸び続け、最初のピークは午前8時7分の74.7%。自分が届けた嵩の詩を一心不乱に読み続ける八木の姿を、蘭子がじっと見つめ、かすかにほほ笑む。午前8時4分台の、八木を見つめる蘭子の表情と大きな違いがあるように見えないが、ここは不思議と注目度が高くなった。
八木が粕谷(田中俊介さん)やアキラ(齊藤友暁さん)に「出版部門を作るぞ。わが社最初の作品はやないたかしの詩集だ」と告げる午前8時8分台で一時69.1%と70%を割り込むが、その後は再び浮上。9~11分台の、事務所で二人きりになった八木と蘭子のシーンへと突入する。
嵩が描いた八木と子供たちの絵を目にした蘭子は「子供たちにプレゼントを渡すとき、いつもあんなふうに抱きしめてあげるんですか?」と八木に尋ねる。
「ああ。この世の中で子供たちが生きていくのに必要なのは、まずは栄養のある食べ物、住まい、そして音楽に物語に詩」と答える八木。「もう一つ必要なのは……」と切り出し、「人の体温だ。あの子たちは親から無条件に与えられるぬくもりを知らない」と話した。蘭子が「八木さんは、これまで何百人という子供たちを抱きしめてきたんですね」と言うと、八木は「そういうことになるかな」と返した。
それを聞いて、 思わず「そういう八木さんを、誰か……抱きしめてくれる人……」と口にする蘭子。八木は蘭子を見つめ、「いや……俺は……」と動揺を隠せない。蘭子は「すみません。変なこと聞いて」と気まずそうな表情を浮かべ、事務所を出ていった。事務所を出た後、蘭子は扉の前でしばらく動けない。八木もまた、立ちすくんだまま、何か考えている様子だった。
この約3分の2人のシーンは次第に注目度が上がっていき、長いシーンだが、つかんだ視聴者は離さなかったことが数字からうかがえる。この日、最高の74.9%を記録した後半の午前8時11分台に入ったタイミングが、「そういう八木さんを、誰か……抱きしめてくれる人……」と蘭子が口にしてしまったあたり。最後の「人(ひと)」の「と」の音程を外し、言ってはいけないことを言っちゃった感を出す河合さんがうまい。それまで意識して目線を合わせていなかったであろう2人の視線が重なり合うあたりは、特にぐっと引き込まれた。無言で、音楽も入らない静かなシーンだが、そんなことは気にもならない2人の熱演だった。
その後、注目度は緩やかに下降線を描くが、午前8時14分台まで70%を維持する。八木が柳井家を訪ね、詩集の出版を伝える場面だ。この場面も見ごたえがあったが、蘭子と八木のシーンの余韻が最後まで続いていたような気がする第107回だった。
活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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