吉岡秀隆:演技の楽しさは「いまだにわかっていない」 大切にした“ライブ感”

「連続ドラマW 夜の道標-ある容疑者を巡る記録-」で主演を務める吉岡秀隆さん
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「連続ドラマW 夜の道標-ある容疑者を巡る記録-」で主演を務める吉岡秀隆さん

 9月14日スタートのWOWOWのドラマ「連続ドラマW 夜の道標-ある容疑者を巡る記録-」(日曜午後10時)で主演を務める俳優の吉岡秀隆さん。1996年に起きた殺人事件で2年間逃亡する容疑者を追い続ける担当刑事を演じる吉岡さんに、脚本の印象や役作り、今作との向き合い方、演技観を聞いた。

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 ◇「ちゃんと刺さるものがないと」

 原作は、日本推理作家協会賞「長編および連作短編集部門」を受賞した芦沢央さんの本格社会派ミステリー小説「夜の道標」(中公文庫)。1996年に起きた殺人事件の担当刑事・平良正太郎(吉岡さん)が、容疑者の阿久津弦(野田洋次郎さん)の足取り、殺人の理由を捜査しながら事件の“真実”に迫っていく本格社会派ミステリー。登場人物たちの点と点が“ある容疑者”を巡ってつながった時、思いもよらぬ“社会の闇”が浮かび上がっていく……。

 脚本を読んでの感想を「原作を読んだ人はきっと、知ってしまったし、読んでしまったという感じになったのでは」と口にした吉岡さん。本作への出演にあたり「ちゃんと刺さるものがないといけない」「ライブ感が大事」と感じたという。

 「本格社会派ミステリーという形でお伝えしつつ、その先にエンターテインメントではないけれど、ちゃんと刺さるものがないといけない。演じるというよりは、体験させてもらうとか学ばせていただくとか、監督をはじめ、スタッフやキャストの人と一緒に体現していかないと、“社会派”という部分が抜けちゃう感じがする。だから演じる意識はあまりなく、現場で起こる“生もの”みたいなライブ感の方が大事だと思いました」

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 自身が演じた平良という人物について、吉岡さんは「平良の“痛み”のようなものはわからないではない」と理解を示す。

 「年齢とともに情熱とか正義感みたいなものが摩擦によってすり減って……というのは、『この男も疲れているんだな』とわからないではない。それこそ新入社員じゃないけど、そこから学んでいく自分の職種と社会、正義とか情熱みたいなものがだんだん擦り減っていったのかなという印象はあります」

 そんな平良役を体現したと表現する吉岡さん。刑事として聞き込みを続けていくことでストーリーは展開していくが、「聞き込みをすればするほど『こうだったのかな』と演じる中で“生身”を感じる瞬間が多々あったと語る。

 「台本上も、もちろん書いてありますが、演じていらっしゃる方との間合いのようなもので解釈の仕方が変わり、平良として『ここはこう大事なポイントだったのか』ということも。現場で生まれる生感、ライブ感みたいなのはあったと思います」

 ◇「監督のOKが一番うれしい」

 吉岡さんがインタビュー中にも何度か口にした「体現」というワード。向き合う作品の何がそうさせるのだろうか。吉岡さんは「おこがましいかもしれませんが、演じるという気持ちよりも見てくださった方に考えてほしいと思ってしまう」と神妙な表情で理由を明かす。

 「自分も考えながら作品が出来上がるけど、どうしてもその先にあるものをちょっと考えてほしいというのが、どこか根っこにはあるのかもしれない。そうすると、僕自身も平良という役を通して体現しながら一つ一つやっていかないとなかなか難しい。WOWOWの作品はいつも何か刺さるものがあるし、『刺さった後にちゃんと考えないとな』って。だからこそ僕は生感というか現場のライブ感の方が刺さるようになるのかなと思っています」

 そんな吉岡さんに演技の楽しさを聞くと「まったくないです(苦笑)」と意外な答えが返ってきた。

 「(楽しさは)いまだにわかっていないんだと思います。(役や演技について)どうしてもずっと考えてしまうので、解放されたいのかもしれない」

 常にストイックに作品や役と向き合う姿勢が伝わってくるが、吉岡さんは演技に関して「現場でも『これでいいのかな』と悩んでいます。悩んでいない役者さんって多分いないのでは」と口にする。

 「最初の“お客さん”でもある監督のOKのジャッジメントが下ることが一番うれしい。悩んだ末にある答えを『いいよ』と判断してくれるので。言ってみたらストライクゾーンを決めてくださり、大丈夫と言ってくれる。(撮影)初日の監督のOKが聞けたら、僕の仕事は半分終わっています(笑)」

 「連続ドラマW 夜の道標-ある容疑者を巡る記録-」は全5話で、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで放送・配信。第1話は無料放送される。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

 ヘアメイク:井手奈津子 スタイリスト:椎名倉平(ONWA)

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