多部未華子:初のDV被害者役で「共感と戸惑い」  撮影現場での“学び”も語る

「連続ドラマW シャドウワーク」で主演を務める俳優の多部未華子さん
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「連続ドラマW シャドウワーク」で主演を務める俳優の多部未華子さん

 WOWOWのドラマ「連続ドラマW シャドウワーク」で主演を務める俳優の多部未華子さん。同局の連ドラ初主演となる今作で、多部さんが挑んだのは夫のDV(ドメスティック・バイオレンス)に心身を蝕まれた主婦という難役だ。そんな多部さんに、オファーを受けた際の心境、役作りの裏側、現場の雰囲気、撮影を通して得たものなどを聞いた。

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 ◇シリアスなテーマの作品に「新鮮だった」

 ドラマは、江戸川乱歩賞作家の佐野広実さんによる同名小説が原作。夫からのDVに苦しむ女性たちがたどり着いたシェアハウスを舞台に、彼女たちの“究極のシスターフッド”を描くヒューマン・ミステリーだ。

 DVという重いテーマを扱った作品のオファーを受けた際の心境を、「これまで悲しい境遇に置かれた女性の役や、シリアスなミステリー作品のオファーをいただく機会があまりなかったので新鮮でした」と話した多部さん。出演の決め手としては、キャストのほとんどが女性で構成される座組みにも強く惹(ひ)かれたという。

 「キャストのほとんどが女性という環境で演じるのはどういう感じなのだろうって。怖いもの見たさじゃないですけど(笑)。世代の違う女性俳優が集まって芝居をしたらどんな化学反応が起きるのだろうと興味が湧きました。物語の展開や自分の人生を生き抜こうとする決断への共感も含めて、総合的に新鮮な挑戦だと感じて出演を決めました」

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 そんな多部さんは原作を読み、共感と戸惑い、二つの異なる感情を抱いたという。

 「夫によって自分を見失っていた女性たちが結束し、自分の人生を自分の力で切り開いていく物語の核には共感できました。ただ一方で、紀子が置かれている状況の過酷さについては、実際にそういう経験や体験をされた方もいらっしゃる中で誤解を恐れずに言うと、季節の感覚さえ分からなくなるほど自分を見失ってしまうというのは本当にあるのか、と。少し信じがたいような気持ちもありました。理解と想像が追いついていませんでした」

 ◇全員が意見を出し合う現場に刺激

 多部さんが演じる紀子は、口数が極端に少ないキャラクターだ。多部さん自身も「紀子はしゃべっていないけれど、感じたり、何か悟ったり、気づいたり、相手の気持ちに寄り添ったりといったような心の動きを『……(点々)』で語るシーンが本当に多い役でした」と振り返る。沈黙の中に込められた感情の表現には、監督や撮影カメラマン、照明などスタッフ陣との連携が欠かせなかったという。

 「例えば『もうちょっと目線を上げた方が、決意が固まったように見えるのでは』などのように、映像に映った時の見え方も、みんなで工夫しました。監督はじめスタッフの皆さんに話しやすい方が多くて、みんなでアイデアを出し合いながら、発見していくスタイルは新鮮な体験でした」

 キャストやスタッフという垣根もなく意見を出し合って作り上げていく現場について、多部さんは「これまであまり経験したことなくて。学びになった」と口にし、特に衝撃的な体験があったと明かす。

 「若い助監督が監督に『俺はこのカットあった方がいいと思うんですけど、どうですか』とカジュアルに提案して、監督も真剣に聞いて議論していたのは衝撃でした。“時代”なのかなって(笑)。全員で作り上げていくというのは、監督はもちろん、(寺島)しのぶさんの存在も大きかったと思います。しのぶさんは『これってこういうことでいいんだよね?』と問いかけてくださるので、私も聞きやすくなりました。それが学びだったし、新鮮で楽しかったです」

 撮影現場の雰囲気を聞くと、多部さんは「始まる前はシリアスな作品だし、静かな現場になるのだろうなと思っていたら真逆。予想外に明るい現場で、撮影現場としてはずっと楽しかった」と話し、「ムードメーカーはたくさんいらして、寺島しのぶさん、石田ひかりさん、須藤理紗さんたちがとても盛り上げてくださいました」と感謝する。

 「みんなで質問し合ったり作品の内容を話したりして、そこが私にとってヒントになった部分もあって、とっても助かりました。あとは芝居の話というより、『どこのおかきがおいしい』とか家族のこととか子育ての話とか、本当にたわいのない日常の話がほとんどでした(笑)」

 ◇決断の決め手は「直感」

 ドラマの中の登場人物たちは、人生を左右する「決断」を迫られる姿が印象的だ。多部さんの物事の決め方を聞くと「何事もすぐ決めます」と即答。その指針となるのは、自身の「直感」だと口にする。

 「信頼している2、3人に相談しますが、それはアドバイスを求めるというより、自分が直感で決めたことの“答え合わせ”みたいな感覚に近いかもしれません。相談する頃には基本はもう決まっていますね」

 スピーディーに直感に従うタイプだという多部さんだが「お買い物とかはよく失敗します」と苦笑い。「あまり吟味もしないので、(洋服の)サイズが合わないとか、収納ボックスを買ったけど使い勝手が合わなかったとか、結構あります」とチャーミングな失敗談も明かす。

 最後に、今作を通して届けたいことを聞くと、多部さんは「自分の決断次第で人生は変えられることを感じていただけたら」と語る。

 「思い出したくもないような辛い過去を背負った女性たちが、自分の人生のために力強く生きる決断をする物語です。みんなと協力すれば、まだまだ自分の力で挽回できることもあるというメッセージを見ていただけたらなと思っています」

 「連続ドラマW シャドウワーク」は全5話で、WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドで11月23日から毎週日曜午後10時に放送・配信中。第1話はWOWOWの公式YouTubeチャンネルで無料配信中。(取材・文・撮影:遠藤政樹)

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