田鎖ブラザーズ
ep.03
5月1日(金)放送分
俳優の岡田将生さんが主演を務め、染谷将太さんも出演するTBS系金曜ドラマ「田鎖ブラザーズ」(金曜午後10時)。主題歌『愛々』を手がけた森山直太朗さんと、ドラマを手がける新井順子プロデューサーが対談を行い、オファーの背景や楽曲の制作秘話を語った。
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ドラマは、刑事の兄・田鎖真(岡田さん)と検視官の弟・田鎖稔(染谷さん)の「田鎖ブラザーズ」が、日々目まぐるしく発生する凶悪事件と、公訴時効廃止の2日前に時効成立となった2人の両親殺害事件の真犯人を追う物語。映画「ラストマイル」やドラマ「アンナチュラル」「MIU404」「最愛」といったクライムサスペンスのヒット作を手掛けてきた新井プロデューサーの最新作。脚本は「タンブリング」などの渡辺啓さん、演出は「最愛」などの山本剛義さんらが務める。
新井P:この作品の企画書を書いている時、実は森山さんの『愛し君へ』(2004年)を繰り返し聞いていたんです。私の中では「あのドラマ(『愛し君へ』フジテレビ系/2004年放送)といえばこの曲」という強いイメージがあって。なので、最初から本作の主題歌は森山さんというイメージで書いていました。
森山さん:でも『愛し君へ』って、実は主題歌じゃなくて挿入歌なんですよ。主題歌は『生きとし生ける物へ』で。『愛し君へ』の印象が残っているのは稀有(けう)だなと思って。
新井P:そうなんです。でも私の中では、あのドラマといえば『愛し君へ』で。すごくいい場面で流れる印象が強くて、勝手に主題歌だと思っていました。それに、『愛し君へ』が入っているアルバム『新たなる香辛料を求めて』も持っていて、どの曲も本当に素晴らしくて、ずっと“鬼リピート”していたんです。そんなふうに聞きながら企画を練っていたので、自然と森山さんの歌声をイメージしていました。
森山さん:とはいえ、必ずしも僕じゃなくてもよかったわけですよね。『愛し君へ』のような曲を書く人は他にもいるわけですし。
新井P:森山さんの声が好きなんです。声は音というか、楽器のようなものだと思っていて。声だけでしびれる感覚があって。企画書を書いている時に流していた曲のご本人に、まずは当たってみるというのはよくやるんです。玉砕することも多いですが、願えば叶うこともあるなと。
新井P:具体的に「こういう曲を」とは言っていません。あまり言わないほうがいいと思っているので。『愛し君へ』をイメージしていたことはお伝えしましたが、歌詞や曲調について細かくお願いはしていないですね。
森山さん:そうですね。ただ、『愛し君へ』を聞きながら書いていたと伺っていたので、情報量の少ない、ピアノ1本のシンプルな世界観なのかなとは感じていました。でも、自分をなぞるような作り方、いわゆる“自己模倣”は、クリエイティブにとって“敵”のようなものだと思っているので、一度それは忘れて、ドラマの中の景色やパッションをフラットに感じる時間を持ちました。
だから、もし「『愛し君へ』っぽくない」と言われたら、それは仕方ないとも思っていて。時間やクオリティのバランスもありますし、焦ったら終わりなので。もしダメだったら、新井さんなら「ごめんなさい」と言えば許してもらえるかなと(笑)。
ただ、その振れ幅を持っておくことはすごく大事で。締め切りに追われる気持ちは原動力にはなりますが、クリエイティブそのものとはあまり関係ないとも思っています。
新井P:本当にいい曲だなと思いました。『愛し君へ』とはまた違いますが、この物語をしっかり噛みしめて作ってくださったことが伝わってきて、この作品に間違いなくハマるなと感じました。
森山さん:こだわったというより、この曲のアイデンティティーになっているのは、メロディーに収まりきらない語り口調の部分だと思います。少し昔のフォークソング、例えば吉田拓郎さんやボブ・ディランさんの影響もあると思います。
一見すると何の変哲もない曲なのですが、その中に収まりきらない思いや旋律があって、それが崩れたメロディーや譜割りとして表れている。それがこの曲の“揺らぎ”になっているのかなと。ただ、エンディングで流れるとセリフと重なる可能性があるので、「もう少し間引いてください」と言われて、確かにそうだなとも思いました。
新井P:でも、それが“森山直太朗らしさ”でもあるよね、という話になって。2回目にいただいた時も、そこまで減っていなかったんですが(笑)、これ以上言うと“らしさ”がなくなってしまうし、「なぜオファーしたのか」という話になるので、いただいたもので進行しようと。もし修正をお願いしていたら、どうなっていたんでしょうね。
森山さん:もっとのっぺりした曲になっていたかもしれないですね。フックはなくなるけれど、その分ドラマは見やすくなるかもしれない(笑)。
新井P:聞き込むほどに噛みごたえがあって、特に最後の大サビは、風が吹き抜けるような感じがして。
森山さん:そこは原摩利彦くんと須原杏さんのアレンジですね。ドラマとの境界が溶けるような瞬間があって、映像の力も大きいですし、編曲にもすごく助けられました。
新井P:兄弟の叫びのようにも聞こえませんか。あの二人は表にはあまり出さず淡々としていますが、内側では強い感情が燃えている。その思いを曲が代弁してくれているようで、「この兄弟の曲だな」と感じました。
森山さん:純粋に感動しました。物語そのものに引き込まれたのはもちろんですが、音楽と映像の融合の仕方にも驚かされて。音楽単体でも、映像単体でもなく、重なった時にこんな表現が生まれるんだと。新井さんのビジョンがあって、それを具現化していく過程も含めて、総合芸術なんだと改めて感じました。
それと、この曲をドラマの最後の“一筋の救い”のような存在にしたい、ただ絶望だけを描く作品にはしたくないというお話も伺って。その先にもまた困難は続いていくと思うのですが、「言ったことはやる」という新井さんの姿勢がかっこいいなと感じました。
森山さん:この兄弟に限らず、曲の中には1対1の関係が描かれています。人はそれぞれの人生の中で、親や友人、先輩後輩、ライバルなど、さまざまな関係に支えられて生きている。でも、その関係がずっと続くこともあれば、どこかで断ち切らなければいけない瞬間もある。依存や癒着を離れて、次のステージに進むために……。
そうした小さな“対”の関係が連なって、世界ができている。そんな俯瞰的なイメージも込めて、『愛々』という言葉にしました。それに、日本語の「宵々」や「折々」といった響きが好きで、この繰り返しの言葉に惹かれるんです。『愛々』という言葉も、なじみがあるようで新しい。その響きから、このタイトルにしました。
新井P:今回は、放送に先駆けて楽曲を公開しています。あらかじめ曲を体になじませておくことで、より作品に入りやすくなると思ったんです。実際にスポットをご覧いただいた方からも「泣きました」という反応をいただいていて、この曲があることで、単なるサスペンスではなく“兄弟愛の物語”として伝わると感じています。きっと自然と物語に入っていただけると思いますので、それぞれの『愛々』を感じながら楽しんでいただけたらうれしいです。
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