注目映画紹介:「アウトレイジ」 北野監督初出演者が見せる、意外な“極悪人”の顔

「アウトレイジ」の1場面。(C)2010「アウトレイジ」製作委員会
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「アウトレイジ」の1場面。(C)2010「アウトレイジ」製作委員会

 「HANA−BI」(98年)でベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、自ら主演した「座頭市」(03年)が監督賞である銀獅子賞を受け、仏芸術文化勲章の最高章のコマンドールを贈られた北野武監督。最新作「アウトレイジ」は、「不法行為」や「乱暴」という意味を持つタイトルの作品らしく、組同士の権力闘争を描いたヤクザ映画だ。山王会という暴力団組織に身を置く男たちの生きざまが、強烈なバイオレンス描写とともに描かれていく。

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 山王会本家会長・関内(北村総一朗さん)の命令には従順に従い、そのくせ配下の人間が勝手なことをするのを嫌う山王会池元組組長の池元(國村隼さん)。貧乏くじを引くのはいつも、池元組配下にある大友組組長の大友(ビートたけしさん)だ。たとえ不条理な命令でも、それに従うしかない大友と、その手下の哀れさ。やがて、その力関係が、ある出来事をきっかけに崩れ始める。

 これまでの“寡黙”や“静謐(せいひつ)”なイメージだった北野映画に比べ、圧倒的にせりふが多い。とはいえ、その大半は「なんだこのやろー」「テメー、ぶっ殺してやる」という罵声(ばせい)だ。暴力シーンの数々は強烈だが、暴力にかかわらざるを得ない男たちが人間くさく、同情心さえわく。

 劇中には、北野監督の過去の作品、「3−4×10月」や「ソナチネ」を思い起こさせるシーンも登場する。北野映画のファンへの、北野監督ならではの持ち前のサービス精神の現れか。大友の右腕、水野役の椎名桔平さんはじめ、加瀬亮さん、三浦友和さんら、北野映画初登場の俳優たちによる豪華共演。「全員悪人」というふれこみで、出演者全員が普段は見せない“極悪人”の表情で登場するのも見どころだ。12日から丸の内ルーブル(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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