リュック・ベッソン監督の最新作は、20世紀初頭のパリを舞台に、「ニキータ」「ジャンヌ・ダルク」のように、ヒロインが大活躍する「アデル/ファラオと復活の秘薬」だ。フランスの人気マンガが原作の奇想天外なアドベンチャー作。
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1911年のパリ。博物館に展示されていたジュラ紀の翼竜プテロダクティルスが現代によみがえる事件が起きた。政府の要人を襲って飛び去った翼竜をつかまえようと、警察が必死に追うが苦戦していた。そこでカポニ警部(ジル・ルルーシュさん)らは、ジュラ紀の研究で知られる専門家エスペランデュー教授(ジャッキー・ネルセシアンさん)の家を訪ねた。教授こそが翼竜をよみがえらせた張本人だったのだ。一方、ジャーナリストのアデル(ルイーズ・ブルゴワンさん)は、エジプトの砂漠を越えて、医師のミイラを発見。事故で死の縁にいる妹を救うために、「復活の秘薬」を探していた。パリに戻ったアデルは、医師のミイラを教授によみがえらせてもらい、妹を治すことを思いつく……。
全編アデルの冒険活劇かと思いきや、いい意味で予想を裏切ってくれる。コミカルなオカルトとでも評したらいいだろうか。そもそも物語の軸にあるのが「よみがえらせること」にあるのだから、オカルトチックではないか。
ファンタジックで明るい映画だ。アデルのテンポのいいしゃべりと、親しみやすさ。アデルが翼竜の背中に乗って勢いよく飛ぶシーンはワクワクする。事件を追う食いしん坊のカポニ警部といい、翼竜退治のハンターといい、脇にはコミカルなキャラクターが並ぶ。よみがえったミイラでさえ、「スター・ウォーズ」のC−3POみたいな動きで笑わせる。しかし、その中に1人だけ、笑えない状態の人物がいる。それはアデルの妹だ。
アデルの妹は生死の境にいる。明るさの中に妙な怖さが漂っているのは、そこだろう。時代は20世紀初頭であり、そこにジュラ紀や古代エジプトといった要素も含み、映画はとてつもない時間(=死)を内包している。そして映画は、ラストに奇妙な余韻を残して終わる。果たして魂は永遠に死なないのか。「死」を直視することから遠ざかっている現代だからこそ、感じる怖さ。この映画には、そんな魔力も潜んでいる。3日から丸の内ピカデリー1ほか全国で公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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