寺島しのぶ:菊地凛子とパリ映画祭に登場 新作「キャタピラー」「トーキョー・ワルツ」を語る

パリ映画祭に登場した寺島しのぶさんと菊地凛子さん=TV5MONDE提供
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パリ映画祭に登場した寺島しのぶさんと菊地凛子さん=TV5MONDE提供

 仏パリで3~13日に開催された「第8回パリ映画祭」で、日本映画特集が組まれ、劇場版アニメを含む邦画計105作品が一挙に上映された。現地には女優の寺島しのぶさん、菊地凛子さんがゲストとして出席し、フランス国際放送TV5MONDEの取材に応じた。

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 ◇寺島「心に残るワンカットを」

 寺島さんの出演作品では、2月に開催された第60回ベルリン映画祭で最優秀女優賞を受賞した若松孝二監督の最新作「キャタピラー」と03年公開の「ヴァイブレータ」(廣木隆一監督)が上映された。

 −−上映作品について紹介してください。

 寺島 今回出品されている「ヴァイブレータ」「キャタピラー」は日本にしかない映画のスタイルで作られているので、作り方はだいぶヨーロッパと違いますね。キャタピラーは、大勢の人に見ていただいて、若松監督という偉大な日本の監督がいることを分かってほしいです。

 −−海外作品への出演や今後の展望は?

 寺島 日本には日本のルールがありますし、日本のいい部分を世界の皆さんに分かっていただけることが一番で、それプラス、海外からオファーがきたらそれに挑戦する、というスタイルです。何かしら人の心に残る演技がワンカットでもあるといいです。全部ではなくても、この人の目の表情がすてきだったなとか、映画全部じゃなくてもそのワンポイントでお客の心をとらえるという、そういう役者になりたいです。「キャタピラー」はベルリンで銀熊賞をとりましたが、ローバジェット(低予算)で作った映画なので、そういう映画を作る若い人たちにも希望を持たせられたんじゃないかなと思います。

 −−日本映画についてどう思いますか。

 寺島 海外ではアジアを一緒くたにされがちで、まだまだ日本は知られていないと思います。日本の女優としていかにもっと日本の映画を見てもらえるかが大事だと考えています。今は日本の映画というと、宮崎駿監督のジブリアニメになってしまうけど、そうではなく、こういう日本の映画もあるのよっていうことを出せる場がないといけないと思います。だから、海外での仕事で日本人だから得なことはなくて、頑張っていかなきゃいけないことばっかりです。でも悪口が聞こえてこなくていいかな(笑い)。海外メディアの質問の多くは、やっぱり裸になると「これはピンク映画ですか?」と聞かれますが、それはちょっと違います。若松さんはピンク映画を通ってきた方だから、そう思われがちだけど、決してそうではありません。監督もこれもあるけど、それもあるっていう考えがあるはず。見ている人たちにも分かってもらわないと、日本はちょっとだめになっちゃうかもしれないですね。

 ◇菊地「海外の方が頭が柔らかい」

 菊地さんの出演作品は、第62回カンヌ国際映画祭に出品されたスペイン映画「トーキョー・ワルツ 愛の音色(原題:Map of the sounds of Tokyo)」(イザベル・コイシェ監督)と、第79回アカデミー賞助演女優賞ノミネート作の「バベル」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督)ほか4本が上映された。

 −−日本映画についてどう思いますか。

 菊地 海外から日本がどういうふうに見られているか分からないですけれど、全部どれも間違っていないし、どれも正しくないし、そういう意味ではいろんな角度から日本をとらえてほしいです。もっとユニークにいろんなバラエティー性を持って、日本映画がこれから大きくなっていくのを私も非常に期待しています。

 −−新作「トーキョー・ワルツ」について紹介してください。

 菊地 「トーキョー・ワルツ」は、カンヌ映画祭でいい反応があったので、今回パリ映画祭で上映されるのがとても楽しみです。監督のイザベル・コイシェは、自由な人で、役者をきちんと丸ごと受け入れてくれる大きい監督でした。映画のプロモーションの時に、監督の家でお世話になったのが、非常にいい経験でした。映画をどのように作っていくかを近くで見ることができたので、映画をより身近に感じられて、女優と監督という関係以外で近くにいられて、とてもよかったと思います。

 −−日本人で有利な点、不利な点。

 菊地 海外で日本人が有利だなと思うところは、タイプキャスト(典型的な例)がないこと。日本人のとらえ方は、国によっても個人によっても違う。単に、アメリカ人といっても、監督によって印象は皆違う。だから、私にユニークな役がやってくるんです。いかにも日本人がやりそうな役もあるし、どう考えてもアメリカ人の役だろうというのも、いろいろ来るんです。つまり、カテゴライズされていないということ。この作品だったらこの女優を使うだろう、という考えではなくて、 一度台本を投げてくれるという意味では、海外の方が寛容で、頭が柔らかい気がします。その点が、海外で仕事する日本人として非常に有利だと感じます。

 逆に不利だと感じることは、海外の方のほうが日本の古い伝統文化を私よりよく知っているということです。生け花やお茶をフランス人の方がよく知っていたり……。だからといって、日本人はこうだ、と決めつけられると悲しいです。私は日本人の代表として世界を回っているわけではなくて、個人として仕事しているので。女優という前に日本人であれ、というのではなくて、個人である後に日本人であると考えているから、ここを追及されちゃうと面白くないなと感じてしまいます。もっと広い意味で日本人をとらえて、その中で、こんなユニークな人たちがいるという個人をちゃんととらえる見方をしてくれたらなと思います。

 *……TV5MONDEは、203の国と地域でフランスとフランス語圏の番組を放送する唯一のフランス語国際公共総合チャンネル。日本では、09年12月から1日10時間の日本語字幕付き放送を開始した。TV5MONDEのサイト(http://www.tv5.org/cms/japon/p-328-lg7--.htm)パリ映画祭特設ページでは、会場の様子、監督や俳優インタビュー動画など映画祭の情報を掲載しているほか、一般公募で選ばれた日本人リポーターによるUSTREAM、Twitter、ブログ、ウェブサイトなどを活用した複合的なマルチメディアリポートを行っている。(毎日新聞デジタル)

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