水谷豊:神の手を持つ天才外科医に 海堂尊のノンフィクションをドラマ化「外科医 須磨久善」

ドラマスペシャル「外科医 須磨久善」に主演する水谷豊さん
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ドラマスペシャル「外科医 須磨久善」に主演する水谷豊さん

 「相棒」シリーズの主演で知られる俳優の水谷豊さん(58)が、“神の手”を持つ世界的天才外科医を演じるスペシャルドラマ「外科医 須磨久善」(テレビ朝日系)が今秋放送されることが決まった。「チーム・バチスタの栄光」などの海堂尊さん初のノンフィクションが原作。

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 須磨久善医師は1950年、兵庫県出身の心臓外科医。86年に世界初の胃大網動脈を移植する心臓バイパス手術を成功させた。胸部と腹部を同時に手術する難しい手術法だったが、“神の手”といわれるテクニックと超人的な集中力で新しい領域を開拓。その後、須磨医師は心臓外科医として国内でトップクラスの地位を築きながらも、理想の医療を求めて地方の民間病院へと移り、心臓病に苦しむ人に希望を与えた。ベルギーでの公開手術、ローマでの教授経験、そして1万人に1人の難病といわれる「拡張型心筋症」の唯一の治療法として、生きている心臓の一部を切り取る「バチスタ手術」と出合い、96年に日本初のバチスタ手術を成功させた。

 海堂さんは「チーム・バチスタ」シリーズの原点として、須磨医師についてのノンフィクションを09年に講談社から出版。これを基に、弘兼憲史さんのマンガ「人間交差点」やNHKドラマ「監査法人」(08年)の脚本などで知られる矢島正雄さんがシナリオを担当し、須磨さんの足跡に登場人物や団体名などは仮名にし、創作したエピソードを加えてドラマに仕立てた。

 主演の水谷さんは、同局の人気刑事ドラマ「相棒」シリーズで天才的な捜査能力を持つ杉下右京役で知られているが、今回は全く異なるジャンルの「天才外科医」を演じる。手術シーンは須磨医師本人が監修し、臨場感たっぶりに仕上がったという。島川博篤プロデューサーも「水谷さんの繊細な指さばきが見どころ」と自信を見せる。

 水谷さんは「須磨先生は、心臓外科医として世界的な道を作った方。その過程では計り知れない障害や困難があったと思います。それを乗り越え続けてきた医師としての素晴らしさはもちろんのこと、何が須磨先生をそこまで突き動かすのか? そのことにとても興味を覚えました。心臓外科医・須磨久善。人間・須磨久善。役者としてどこまでたどり着けるのか、不安より楽しみの方が大きい作品です」と話している。

 島川プロデューサーは「バチスタ手術を扱うドラマが最近はありますが、その手術の日本人第一人者とは? 世界初の胃大網動脈バイパス公開手術、そして日本初のバチスタ手術を成し遂げた須磨先生ですが、シンプルに『患者さんを救いたいという原点がブレない』という生き方に感動しました」と制作のきっかけを明かした。

 須磨医師は治療を第一に考えながらも患者やその家族の気持ちにも心を配る優しさを持っており、単なる天才ではなく、人間的な奥深さを水谷さんがどう演じるのかが注目される。ローマでロケも行い、ドラマのスケールを超えた映像も見どころだ。共演は、明るく支える妻役で薬師丸ひろ子さん、水谷さんとの共演は30年ぶりという宇津井健さんほか、中村雅俊さん、小泉孝太郎さん、田中美里さん、患者役で戸田恵子さん、平田満さん、東ちづるさん、森迫永依さんら。(毎日新聞デジタル)

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