モリのアサガオ:原作者とドラマプロデューサーが上智大で講義 死刑制度を語る

上智大学で講義を行った郷田マモラさん(左)と森田昇プロデューサー
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上智大学で講義を行った郷田マモラさん(左)と森田昇プロデューサー

 新人刑務官と死刑囚の友情を描いたドラマ「モリのアサガオ」(テレビ東京)の原作者、郷田マモラさんと森田昇プロデューサーが28日、上智大学文学部新聞学科で「メディアを通した死刑について」と題して講義を行った。

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 「モリのアサガオ」は、郷田さんが04年4月~07年4月、「漫画アクション」(双葉社)で連載したマンガ。まるで深い“モリ”のように閉ざされた拘置所の凶悪犯ばかりの死刑囚舎房で、何の前触れもなく、当日の午前中のうちに執行されるため、自分たちのことを「アサガオのようだ」と称して、いつ訪れるとも分からない死の影におびえながら過ごす死刑囚たちと、温室育ちの新人刑務官・及川直樹の交流を描き、死刑制度の是非を突きつけた社会派の作品で、07年度の文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。

 ドラマは、テレビ東京10年ぶりとなるプライムタイムの現代ドラマで、直樹を伊藤淳史さん、直樹と深いきずなで結ばれる死刑囚・渡瀬満をARATAさん、直樹の恋人で新聞記者の沢崎麻美を香椎由宇さんが演じている。

 郷田さんは死刑制度について、連載開始前に「自分自身が賛成か反対かを決めなければ描けない」と考えていたものの、「参考資料に目を通すほど、分からなくなった。分からないという思いを作品に反映させ、自分自身と主人公が一体化するような描き方をした」と明かし、「死刑制度反対に関する書籍は数多くあるが、分からないという言葉で死刑を語った初めての作品だと思う」と自らの視点で解説した。

 原作コミックの全7巻を通じ、リアルな拘置所の描写と人間同士のやりとりが続くが、郷田さんは「実際に被害者家族など関係者に会って情が移ってしまうのを避けたかったので、あえて想像力を使った」と、書籍など参考資料を用いる以外、取材は行わなかったことを説明。若き女性監察医を描いた作品「きらきらひかる」が98年にドラマ化されており、「自分の作品が生身の人間に演じてもらえるのは最高の喜び。(本作も)映像化を狙っていました」と語った。ドラマについては、「原作に忠実に作っていただいた。ドラマで選ばれたエピソードは僕自身が好きなエピソードなので大満足」と話していた。

 「人間を見られるドラマにしたかった」という森田プロデューサーは「企画を通すことのハードルが高かった。人が死ぬドラマはスポンサーが付きにくい」とドラマ化の実現までに6年かかった裏話を明かした。マンガと比べて「生身の人間が演じると迫力がすごい」とアピールし、「死刑についてぜひ考えてほしい」と学生に訴えた。

 受講した新聞学科3年の女子学生は「ドラマは10回を通して、最後には死刑に賛成か反対かを示すものだと思っていた。自分自身で考えてほしいと言っていたのが印象的だった」と話していた。ドラマ「モリのアサガオ」は毎週月曜午後10時放送。(毎日新聞デジタル)

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