「ニュー・シネマ・パラダイス」(89年)のイタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督が、故郷シチリアに戻って、自身の父親の人生をモデルに家族のきずなを描き出した「シチリア!シチリア!」が全国で公開中だ。2時間31分という長さを感じさせない流麗なカメラワークで、物語の中にスッと引き寄せられる。
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シチリアの田舎町バーリアは、三つの岩山に石を連続して当てることができると秘密の扉が開くという伝説がある自然豊かな場所だ。牛飼いの次男ペッピーノは、子どもながらに貧しい家を支える大事な働き手で、父親に連れられて映画館に行くことが数少ない楽しみだ。町の人々に見守られながら成長し、第二次世界大戦後、青年になったペッピーノは黒髪の美しい女性マンニーナと出会う。しかしマンニーナの両親は、ペッピーノの政治活動や家柄を理由に、結婚を反対。2人は駆け落ちをすることになり……という物語。
第二次世界大戦をはさみ、主人公の人生とともに町も移り変わりを見せる壮大なストーリー。ペッピーノは1930年代生まれで、映画は30~80年代のイタリアが描かれる。日本でも同じだと思うが、大きな戦争をはさんだ激動の時代が背景にあるこの世代の人の人生は本当にドラマチックだ。マフィアと投資家に土地を奪われてきたという背景があるからこそ、ペッピーノが政治活動に向かうのもうなずける。たくさんの人々に囲まれて過ごした彼の人生は、登場人物の多さ(エキストラだけでなんと約3万5000人!)で実感できる。
時代のうねりの中で常に変わらないものとして、家族のきずなと人々の笑顔があったことが伝わってきてしみじみする。叙情的でありながらパスタの大食い大会など、笑えるシーンも多い。映画への愛、故郷シチリアへの愛も存分に盛り込み、トルナトーレ監督らしい作品に仕上がった。音楽はもちろん、トルナトーレ監督作品を数多く手がけるエンニオ・モリコーネさんが担当。前作「題名のない子守唄」(06年)では、どういうわけかあまり印象に残らなかった彼の音楽も、今作の題材を得て存分にその才能を発揮している。ラストの音楽の構成は坂本龍一氏が嫉妬しそう!? シネスイッチ銀座(東京都中央区)、角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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