注目映画紹介:「あしたのジョー」 昭和のにおいがプンプン 美形の2人と香川の怪演が光る

「あしたのジョー」の一場面 (C)2011 高森朝雄・ちばてつや/「あしたのジョー」製作委員会
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「あしたのジョー」の一場面 (C)2011 高森朝雄・ちばてつや/「あしたのジョー」製作委員会

 熱烈なファンを持つボクシングマンガの金字塔を実写化した「あしたのジョー」(曽利文彦監督)が11日に公開された。主人公の矢吹丈役をアイドルグループ「NEWS」の山下智久さんが、ライバル・力石徹役を俳優の伊勢谷友介さんが演じる。イケメンの2トップに丈のトレーナー、丹下段平役を香川照之が怪演。あの超有名なせりふ「立て、立つんだジョー!!」をどのように叫ぶのか、ワクワクする。たとえ結果は知っていても、試合のシーンの迫力には息をのむ。

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 昭和40年代の東京下町。ジョー(山下さん)はケンカに明け暮れる毎日を送っていた。街で暴れているところを、元ボクサー・段平(香川さん)に見いだされボクサーとしてスカウトされる。しかし、問題を起こして少年院へ入ることに。そこでプロボクサーの力石(伊勢谷さん)と出会う。やがてライバル同士になった2人は宿命の対決に臨む……というストーリー。

 アウトロー的ヒーローのスポ根ものという昭和のにおいがプンプンする題材だ。それを現代によみがえらせることで、ある意味、時代劇的な感覚で楽しむこともできる。冒頭でジョーが土手で寝そべっているシーンだけでも、その昭和っぽさを楽しめた。街のセットも本当によく昭和を再現できていて美術スタッフに拍手を送りたい。さらに子役、エキストラも昭和っぽい顔立ちの人を集めているようで、その徹底ぶりには頭が下がる、それでいて山下さんと伊勢谷さんの美しい顔立ちや雰囲気に、昭和っぽさがほとんどないところがポイントだ。そして、宇多田ヒカルさんのエンディングに流れる主題歌も相まって、古くて新しい香りがする、バランスのいい「2011年版あしたのジョー」に仕上がっている。

 曽利監督は試合シーンの重ね方が秀逸だ。役者の表情一つ一つがマンガの一コマを見ているように進行する。山下さん、伊勢谷さんが肉体を鍛え上げて本物のボクサーになり切っている。とくに山下さんは孤独を抱えたジョーを、目つきや仕草で体現している。そして、香川の段平は熱血そのもので、乱闘シーンの撮影中に肋骨(ろっこつ)にヒビが入ったほどだったという。特殊メークで段平のキャラクター作り上げたスタッフの力量も称えたい。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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