注目映画紹介:「死にゆく妻との旅路」 逮捕の事実では伝わらない夫婦愛が丁寧に描かれている

「死にゆく妻との旅路」の一場面 (c)2011「死にゆく妻との旅路」製作委員会 配給:ゴー・シネマ
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「死にゆく妻との旅路」の一場面 (c)2011「死にゆく妻との旅路」製作委員会 配給:ゴー・シネマ

 三浦友和さん、石田ゆり子さんが夫婦役を演じるヒューマン作「死にゆく妻との旅路」(塙幸成監督)が19日に石川・富山で先行公開後、26日から全国で公開された。99年12月に実際に起こった事件が基になっている。当事者である夫が書いた手記は、月刊誌「新潮45」に掲載され、後に文庫化された。それを、3億円事件をモチーフにした映画「初恋」を手がけた塙監督が映像化した。

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 長引く不況によって工場の経営が傾き4000万円の借金を背負ってしまった清水久典(三浦さん)。万策尽きた彼は、がんの手術を終えたばかりの11歳年下の妻ひとみ(石田さん)と、なけなしの50万円を持ってワゴン車で旅に出る……というストーリー。

 272日間にわたる夫婦の旅を描いた物語だ。久典は結果的に保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕される。確かに当時の新聞にはその記事が載ったが、逮捕されたという記事だけでは伝わらない夫婦愛が、この映画では丁寧に描かれている。

 石田さんは、5キロ近く体重を減らしてこの役に挑んだ。三浦さんは、不器用ながら根は優しいまじめな男を好演。重く、つらい話だ。だが清水夫妻が互いを思いやる気持ちに胸を打たれる。資料から引用すると、10年以上の歳月がたったいま、ひとみさんに対する気持ちをたずねられた清水さんは次のように答えている。「『いま一番一緒にいたい人といたい』と言ってくれた妻の言葉を、ありがたく受け止めております。亡くなってからたまらなく好きになってごめんね。大事な心の人、今も私の心の中に、ずっと一緒にいます」。26日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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