乙葉しおりの朗読倶楽部:第15回 「フランダースの犬」地元では意外な評価

「フランダースの犬」作・ウィーダ(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「フランダースの犬」作・ウィーダ(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第15回は、ウィーダの「フランダースの犬」だ。

ウナギノボリ

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 今日は部長さんから電話がかかってきて、「急に対面朗読の欠員が出た」というので、急いで部室へ行ったんです。

 でも部室には誰もいなくて、待ち合わせの場所を聞き間違えちゃったかもってあわてちゃいました。

 その時、入ってきたドアの向こう側から笑い声が聞こえてきて……。

 ……というわけで、4月1日といえば、エイプリルフールなんですよね(>_<)

 この日はウソをついてもいい日とされています。

 対面朗読はウソでしたけど、倶楽部のみんなでおしゃべりをして、楽しい時間を過ごしてきました。

 そういえば、「四月一日」と書いて「わたぬき」と読むことがありますが、どうして「わたぬき」なのかご存じですか?

 昔の日本人が着ていた服といえば着物ですが、冬になると、この着物に綿を詰めて防寒の役割をさせていたそうなんです。

 そして、春になると役割を終えた綿を抜き取ります。

 この日付が衣替えの季節になる四月一日なので、「わたぬき」と読むんだそうです。

 ちなみに綿を入れる日は十月一日とされていますけど、こちらは「わたいれ」と読むことはないみたいです。

 ……あ、このお話はウソじゃないですよ? 念のため(^−^)

 ではここで、朗読倶楽部のメンバー紹介を。

 前回に引き続き、癸生川新先生のお話です。

 先生は現在図書館の司書をされてますけど、他にも副担任の資格をもっていて、臨時教諭として教えていただくことがあります。

 受け持ちは現代国語なんですけど、実は歌と音楽もとても詳しいんですよ。

 朗読の発声法を教えていただいたり、先生の伝手で練習場所の確保や朗読の録音をしたこともあって、朗読倶楽部の実力アップは先生なくしては成し得なかったのは間違いありません。

 でも先生は音楽教諭の資格は持っていません。

 このあたりは先生があまり話したがらないので詳しくは分からないんですけど、司書として学校に来る前は歌手を目指していたことがあったみたいです。

 部長さんはよく先生のことを「枯れている」って言います。

 確かに熱血指導をされるような人ではないんですけど、分かりやすく丁寧に指導してくださいますし、決してやる気がないとか、そんな先生じゃないんですよ。

 ……その、確かにたま~に、若さがないことを言ったりしますけど……あ、い、今のは内緒でお願いしますね(>_<)

 さて、ここまで7回に渡ってお話させていただいた朗読倶楽部のメンバー紹介ですが、今回で倶楽部創立メンバーの紹介が終わりましたので、次回からは新しいお話をさせてください。

 引き続き、よろしくお願いします(*^^*)

■しおりの本の小道 ウィーダ「フランダースの犬」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、ウィーダ(本名・マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー)さんの「フランダースの犬」です。

 日本でもアニメ化され、テレビ番組の名場面ランキングで必ず登場するこの作品は、1872年にイギリスで執筆されました。

 19世紀のベルギー北部、フランドル地方にある農村の外れに、ダースというおじいさんと、ネルロ(ネロ)という少年、そして犬のパトラッシュが、貧しいながらも楽しい毎日を過ごしていました。

 ネルロは絵を描くことが大好きで、将来は画家になるという大きな夢を持っています。

 彼にはアロアという友達がいましたが、彼女の父で村一番の有力者コゼツは、その関係を快く思っていませんでした。

 貧乏なうえに、画家などというなれるはずがない職業を目指すような男を、可愛い娘に近づけてはいけない。

 コゼツは、もうアロアに近づかないようにとネルロへ言い渡しますが、その後コゼツの粉ひき場が火事になり、納屋と大量の麦が焼けてしまいました。

 アロアの件を恨んで、ネルロが火をつけたに違いないと決め付けてしまうコゼツ。

 やがて親切だった村の人たちまでもが、有力者のコゼツに逆らってもいいことはないと、ネルロに冷たい態度をとりはじめます。

 濡れ衣を着せられても恨み言の一つも言わず、ネルロは悲しい出来事にひたすら耐え続けました。

 自分の描いた絵がアントワープの審査会に入選さえすればと、望みをつないで……。

 日本では名作として高く評価されているこのお話、意外なことに舞台である地元ベルギーではそれほど評価されていません。

 欧州と日本の価値観の違いが理由とされていますが、お話の結末にもかかわるところなので、興味がありましたら調べてみてくださいね。

 また、アメリカでは同様の理由から、結末そのものを書き換えられた本が出版されているそうですよ。

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