乙葉しおりの朗読倶楽部:第16回 宮沢賢治「やまなし」 想像して楽しもう

「やまなし」作・宮沢賢治、絵・遠山繁年(偕成社)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「やまなし」作・宮沢賢治、絵・遠山繁年(偕成社)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第16回は、宮沢賢治の「やまなし」だ。

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 暖かくなって、お花見のシーズンですね。

 先日、私も朗読倶楽部のみんなとお花見してきました。

 お花見は、今から1200年以上前の奈良時代に皇族の催しとして行われたものが、記録に残る最古のもののようです。

 お話の中ですと、平安時代を舞台にしている源氏物語の第八帖「花宴」(はなのえん)にもお花見のシーンが出ているんですよ。

 でも、一般に広まったのはそれから900年も後の江戸時代になってからだそうですから、本当に限られた人たちの娯楽だったんですね。

 今はお花見といえば桜の花を思い浮かべますけど、最初のころは梅の花のことを指していたようです。

 その根拠は当時の和歌に表れていて、日本最古の和歌集として有名な「万葉集」では梅の花について詠んだ歌の数が、桜の花の歌を大きく上回っていました。

 ところが、「万葉集」のおよそ100年後に発表された「古今和歌集」では、それぞれの歌の数が逆転していて、この間に花見=桜が定着したと考えられています。

 当時の人たちがどんな気持ちで花を見ていたのか、歌を詠みながら桜を眺めるのも乙かもしれませんよ(*^^*)

 ではここで、朗読倶楽部のお話です。

 今回は「朗読」とは何か、改めてお話をしますね。

 実は、朗読倶楽部を結成したときは「朗読」ってどういうことをするのか、分かっているようでよく分かっていなかったんです。

 じゃあ今はすごく分かってるのかというと、ちょっと自信がなかったりするんですけど……(>_<)

 「朗読」は、本などに書かれた文章を声を出して読むことをいいます。

 「音読」ともいいますけど、「朗らかに読みあげる」というイメージで、朗読の方がしっくりきますよね。

 ちなみに、前もって暗記した文章を読み上げるのは「暗唱」。読書など声を出さずに読むのが「黙読」です。

 朗読を録音したものを含めた、音声主体のCDなどを総称して「オーディオブック」と呼びます。

 これは海外留学をしていたみかえさんから聞いたのですが、オーディオブックは日本よりも海外で人気だとか。

 視覚の不自由な方、教育環境の問題などで読み書きのできない方、ドライブなどで手が離せない方など、さまざまな事情で本が楽しめない方々が本を読む機会を得られるんです。

 また、朗読は読み手の個性が反映されます。

 分かりやすくするために感情を入れず淡々と読む方、演劇のようにオーバーに気持ちを込める方。

 同じ文章なのに、読み手によって作品の印象が変わってしまうのも、朗読の面白い点です。

 でも、文章を書いた方の意図に合って朗読できているかどうか、できるだけ考えて朗読をするのがマナーなんじゃないかなって、私は思っています。

 こうしてお話しすると、朗読って奥が深いって思いませんか?

 次回もまたよろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 宮沢賢治「やまなし」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、宮沢賢治さんの「やまなし」です。

 人が普段目にすることのできない川の中の生活を幻想的に描いたこのお話は、1923年4月8日の岩手毎日新聞に掲載されました。

 没後に発表された作品の多い宮沢賢治さんですが、「やまなし」は生前に発表された数少ない作品の一つなんです。

 お話は、小さな谷川にすむカニの兄弟が出会うさまざまな出来事を、二つの季節に分けて描いています。

 第一章となる5月は、まだ小さなカニの兄弟の目を通して、クラムボンや、動き回る魚、魚を捕食するカワセミ、水面を流れる白い樺の花など、自然あふれる谷川の様子が彩り豊かに描かれます。

 第二章では季節が移り変わり12月、夏から秋が過ぎて川底の景色も様変わりしていきます。

 カニの兄弟も大きくなって、吐き出す泡の大きさ比べをしています。

 夜遅くまで起きている兄弟をお父さんカニがいさめていると、川の中に何かが落ちてきました。

 それは、熟したやまなしの実だったのです……。

 私たちはテレビ番組などで海の中でも川の底でも、家にいながらにしてさまざまな生き物の生態を見ることができます。

 でも、そんな便利さのない時代に書かれたこのお話は、独特の擬声語や比喩(ひゆ)が相まって、文章を読むだけで川底の映像が頭の中に浮かび上がってくるようです。

 ただ、その独創さ故に意味が分かりにくい部分もあり、研究家の間でもさまざまな議論がなされています。

 まずは題名にもなっている「やまなし」。

 これは食べる「梨」の実だと想像できますが、お話の中では12月と梨の実る秋の季節からずれていて、実は何か別の木の実では?という説もあるんです。

 他にも第一章でカニの兄弟が話す「クラムボン」、第二章での「イサド」という場所など、いろいろと想像して楽しめるのも、このお話の魅力なのではないでしょうか(^−^)

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