乙葉しおりの朗読倶楽部:第17回 芥川龍之介「蜜柑」 実体験を元に…

「舞踏会・蜜柑」作・芥川龍之介(角川文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「舞踏会・蜜柑」作・芥川龍之介(角川文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第17回は、芥川龍之介の「蜜柑」だ。

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 あの震災から一月がたちました。

 復興に頑張っているみなさんの努力、本当にすごいと思います。

 そして、4月の新年度が始まってから半月がたちました。

 新しい学校、新しいクラス、新しい仕事、新しい職場……。

 「慣れました」と言うにはまだ早いかもしれませんけど、みなさんはどうでしょうか?

 もし「緊張しすぎてちょっと疲れてきた」と思ったら、無理をしないで一休みするのも大事だと思います。

 張り詰めたまま無理をしすぎて、5月病になってしまったら大変ですもんね(>_<)

 そんな一息つきたい気分のときは、お気に入りの本を持って喫茶店でティータイムなんていかがですか?

 4月13日は喫茶店の日、1888年に日本で初めて喫茶店が開業した記念日なんだそうです。

 あるいは、気分転換にどこかへお出かけするのもいいかもしれません。

 1983年の今日、4月15日は、東京ディズニーランドの開園日だそうです。

 震災の影響がいろいろと出ているようですけど、子供から大人まで夢を与えてくれる場所として、早く今までどおりに戻ってほしいなって思います。

 ではここで、朗読倶楽部のお話です。

 今日は朗読倶楽部ができて、初めてのクラブ活動の思い出です。

 朗読倶楽部で私たちが最初にしたこと……それは、部室作りでした。

 癸生川先生の協力で、図書館の控室を部室として使わせていただけるようになったことは以前にもお話ししました。

 ですがこの控室、段ボールの箱がたくさん積まれて物置になっていた上に、ずっと使っていなかったのかホコリだらけの部屋だったんです。

 まずは部長さんとみかえさんと私、3人で手分けをして部屋のお掃除をしました。

 みんなでホコリを集めて汚れを水ぶきして、部屋の中はきれいにはなったのですが、元が荷物置き場だったこともあって椅子もテーブルもなく、あるのは段ボール箱ばかりです。

 この段ボール箱の中身について先生に聞いてみたのですが、司書として着任される前からあったものだそうで、中は見たことがなかったとのこと。

 開けてみたところ、中にはたくさんの本……宮沢賢治さんや芥川龍之介さん、太宰治さんなどの名作の数々が入っていたのです。

 奥付に図書カードがついていたので図書館の蔵書のようですが、今の本はみんなパソコンで管理していますからかなり古くにしまわれたものなのでしょう。

 これらは図書館内にも置かれている本ですが、古くなって傷んだことで入れ替えられたのかもしれません。

 私たちは先生の許可を取り、本の傷んだ部分を補修して朗読用の蔵書に使わせていただくことにしました。

 ……これが朗読倶楽部、2番目の活動です。

 この本たちは、いまも朗読倶楽部の蔵書として部室に飾られています。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 芥川龍之介「蜜柑」

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は、芥川龍之介さんの「蜜柑(みかん)」です。

 「私の出遇ったこと 一蜜柑 二沼地」として「沼地」と共に発表され、後に改題して独立したこのお話は、1919年5月の「新潮」に掲載されました。

 ある冬の日の夕暮れ、列車の客席に座り憂鬱な気持ちで発車を待つ「私」の前に、13~14歳くらいの「小娘」が慌ただしくやってきました。

 汚れた身なりと、手に持った三等客室の切符では乗れない二等客室に座っていることに対し、「私」はあからさまな不快感を覚えるのですが、そんな感想をよそに列車は駅を発車していきます。

 やがて列車がトンネルに近づくと、彼女は客車の窓を開けようとしていました。

 汽車の煙が客車に入らないように窓を閉めているのに、なぜ開けようとするのか、ずっと開かなければいいなどと考えていると、トンネルに入った瞬間に窓が開いてしまいます。

 一面を覆う煙に息もできないほどせき込んでしまう「私」。

 彼女を怒鳴りつけようとした「私」でしたが、トンネルを抜けた目の前の光景に、心を奪われてしまったのでした……。

 「私の出遇ったこと」という題名通り、このお話は芥川龍之介さんの実体験を元に書かれたものと言われています。

 芥川龍之介さんはこのお話を発表する前年まで、海軍機関学校の英語教官として、作中の舞台となっている列車「横須賀線」を実際に利用されていました。

 横須賀線の線路沿いにある吉倉公園には「蜜柑」の記念碑と、その傍らにミカンの木が植えられていますから、一度見にいってみるのもいいかもしれませんよ。

 最後にひとつだけ。

 お話の中で「小娘」の不潔さに不快感を示す「私」ですが、芥川龍之介さんも大のお風呂嫌いだったそうですから、あまり人のことは言えないんじゃないかなと思ってみたり……。芥川龍之介さんごめんなさい(>_<)

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