グリコ・森永事件:新事実盛り込みNスペで初ドラマ化 記者役の上川隆也「すべてが本当」と

会見に登場した上川隆也さん
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会見に登場した上川隆也さん

 事件発生から27年となる企業脅迫事件「グリコ・森永事件」を初ドラマ化したNHKスペシャルの新シリーズ「未解決事件」の会見が13日、同局であり、俳優の上川隆也さん(46)が出席した。同席した同局報道局社会番組部の中村直文制作統括は同事件について「新事実はあります」と明かし、事件を追う実名の記者役で主演する上川さんは「とにかくすべてが本当。真実から作り上げたドラマであるという重みを1カット、1カット感じて演じた」と熱を込めて語った。 

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 「未解決事件」は、日本中に衝撃を与えながらも未解決となっている事件を、再現ドラマやドキュメンタリー、ルポルタージュ、当時の記者たちの証言などで徹底検証する番組。番組ホームページでは、視聴者から事件の情報を募り、その後の取材や真相究明につなげる。「グリコ・森永事件」は、同シリーズの第1回で3部構成。第1部と第2部は、ドラマを中心にドキュメンタリーと新聞記者たちの話を織り交ぜ、第3部は同局独自の取材で事件の真実を探るルポルタージュを放送する。

 ドラマは、事件の時効成立の00年2月12日、事件を20年以上追い続けてきた読売新聞の記者・加藤譲(上川さん)を主人公に語られる。84年、報道合戦が過熱する中、毎日新聞は加藤のライバルで“ハンター”と呼ばれた敏腕記者・吉山利嗣(池内博之さん)を投入。一方、大阪府警捜査1課は犯人の動きを察知し、メディアや警察内部に極秘で犯人逮捕の準備を進めていた……というストーリー。大杉漣さん、国分佐智子さん、石丸謙二郎さん、升毅さん、眞島秀和さん、鶴見辰吾さん、宅麻伸さんらも出演する。

 上川さんは「(事件を)役者として伝えられるという喜びを感じました。事件を追体験できるのは役者の特権。NHKだからできる突っ込んだ表現や新事実を脚本で誰よりも先に知ることができる。常に興奮を覚えながら現場に臨んだ」とコメント。「ここまで“こてこて”の関西弁というのは初めてだった。楽しみでもあり、ハードルでもあった」と苦労を語り、「(記者は)事件と闘いながら、横並びでも(他紙とも)闘っている。一方で(記者同士は)戦友でもある。人間が息づいているドラマ」と話した。事件記者になりたいかと問われると「家に帰れないんですよ。成し遂げられる気にはなりませんでした」と苦笑いを見せた。

 中村制作統括は新事実について「警察の見立てが違う部分が明らかになったり……という部分はあります。証拠品を現代的な解析にかけたりしている」と明らかにした。また「この企画は7~8年前に1回持ち上がり、実現しなかった。その後、時効が撤廃され、(取り上げるための)機が熟した」と語り、グリコ・森永事件を第1回に取り上げたことについて「(同事件は)メディアが何を伝えるかという原点がある」とコメント。「未解決事件は警察の“失敗学”。失敗を検証しなければならない」と持論を述べ、「大阪報道局から段ボール20箱近いメモを取り寄せて分析し、事実関係をベースにして脚本に落とし込んだ。(警察への取材で)犯人と警察の丁々発止のやり取りの現場もかなり実感を持って見てもらえる」と自信を見せた。登場する記者は、ほとんどが実名で、せりふなどについても当時の記者本人と議論を重ねて作り上げた。

 「未解決事件」の第1回「グリコ・森永事件」は、総合テレビで7月29、30日の2夜連続放送。第1部と第2部を両日午後7時半~同8時43分、第3部を30日午後9時~同10時13分に放送する。(毎日新聞デジタル)

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