注目映画紹介:「タケオ ダウン症ドラマーの物語」 アフリカン・ドラムに魅了された青年描く

(c)足立剛一
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(c)足立剛一

 アフリカンドラムの奏者で、ダウン症の新倉壮朗(にいくら・たけお)さん(24)の道のりをたどるドキュメンタリー映画「タケオ ダウン症ドラマーの物語」が東京都内の劇場で公開されている。両手がたたき出す時に激しく、時に優しいリズムで周囲を魅了する「タケオ」。テレビアニメ「まんが日本昔話」で声優を務めた常田(ときた)富士男さんの温かい声がその世界を案内する。

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 作品は、子供時代からのホームビデオと、08年にあこがれの地である西アフリカ・セネガルを訪れた3週間の記録で構成。壮朗さんは小学6年生でセネガルの太鼓「サバール」と出合ったことをきっかけに、さまざまな仲間や楽器を知り、コンサートなど活動の幅を広げていく。セネガルでは太鼓の腕を披露しあうパーティーに飛び入り参加。大地を踏みならすダンスや、地元のミュージシャンを驚かせるような激しいソロ演奏を見せる。セネガルの“人間国宝”で国際的パーカッショニストのドゥドゥ・ンジャエ・ローズさんと、音楽を通じて心を通わせる様子も描かれる。

 常田富士男さんはタケオさんの演奏について「たたけば音楽になることにびっくりした。素直で正直。意味じゃなくて気持ちが伝わってくる。おれだってその気になればできそうと思わせ、励まされる部分がある」「僕が刺激を受けた岡本太郎の『芸術は爆発だ』という言葉がタケオ君を見ていると理解できる」と魅力を語る。

 セネガルでの撮影も担当した常田(ときだ)高志監督は「最初に演奏を聴いたときは、これは『めちゃめちゃじゃないの?』と思った」と話す。「でもアフリカに行ってから、既成の音じゃなくてタケオの中から生まれてくる音だと気付いた。自分のリズムを知り、タケオのリズムを知り、それぞれが違うんだと分かって初めて『タケオの音っていいな』と思いはじめた」といい、観客にも同様の体験をしてほしいと望んでいる。

 現在、東京都中野区の映画館「ポレポレ東中野」で上映中(16日まで)で、6日には監督のトークがあり、10、11日には壮朗さんのミニライブや、子供を対象にしたリズム楽器のワークショップ(1000円)も開かれる。17日からは横浜ニューテアトル(横浜市中区)で、その後、大阪など全国で順次公開の予定。(毎日新聞デジタル)

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