葉室麟さん:5回目の候補で直木賞受賞 「ホッとしたのが一番」

直木賞を受賞した葉室鱗さん
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直木賞を受賞した葉室鱗さん

 17日に第146回直木三十五賞(以下、直木賞)に選ばれた葉室麟(はむろ・りん)さんが受賞後、東京都内で会見した。おもなやりとりは以下の通り。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−今の気持ちは。

 どういうふうに話せばいいか分からないが、ホッとしたのが一番。

 −−受賞の知らせはどのように聞いた?

 東京都内のホテルで編集さんたちと少人数でお酒も飲まずに。

 −−候補5回目での受賞です。

 5回は長いといえば長い。でも注目していただいて仕事をいただける。うれしいが、大きな賞でプレッシャーが大きく、これで候補にならなくて済むというのが今の一番の気持ち。5回は長くもあり短かった。(受賞作の)「蜩(ひぐらし)ノ記」は読者からの反応が違った。思いが伝わっているという感じ。これで受賞できたのはうれしい。

 −−今後、どのように書いていきたいか。

 地方で歴史物、時代物を書いている。地方にいると歴史の断面が見える。地方は(戦で)負けた人の話が多く、考える機会が多い。これまでの有名な作家が地方在住のままお仕事をされていた理由はそのへんにもあるのかなと。

 −−登場人物のキャラクターは背筋がピンとのびる。人物への思いは?

 モデルという意味でなくて、これって自分の体験の中にあるという思いがよみがえった。登場人物は尊敬している人を訪ねていく。私の中にもそういう経験があり、それを伝えたいなという思いがあった。

 −−昨年、還暦を迎えられましたが。

 この作品も残り10年の命という設定。60歳になるとみんなそうだと思うが、残り時間を考える。自分の思いを描く作品として個人的にも感慨がある。

 −−これから小説を書く際にどんなことを物語に込めていきたいか。

 歴史物を書いているが、「蜩ノ記」は時代物。第二次大戦の日本、戦前の日本をどこかで伝えるものとして時代小説を書いていると思う。戦前の日本を私は知らないが親は戦前の人。親子で伝わる物はあるだろうと思うし、そういうものを歴史小説の中で書いていくのでは。

 −−なぜ江戸時代の設定にしたのか。

 日本は戦争に負けて日本が日本であることを許されなかった時期があった。(11年のNHKの連続テレビ小説の)「おひさま」でも、それまでこうだと思ってきたことが否定されている場面があった。否定される前の時代、明治より前、そういう意味での江戸時代を書く意味があるのかな、と思う。

 −−受賞作は伸び伸びとした印象がある。筆が乗ったのでは。これまでと違った部分は?

 単純にいうと、書き始めるときに編集者さんから「武士の矜持」「武士の覚悟」を書いてほしいといわれ、すっぴんのストレートでいこうと最初に思った。なぜ思ったのかは分からない。それに努力を傾けていった。途中で難しく、ストレートだけでいいのかいろんな形にした方がいいのかと思ったが、押し通したい自分の気持ちがあった。

 −−会見の様子を生中継で見ている20、30代のユーザーにメッセージを。

 それをすっかり忘れてました。特別ないけど、そういう意味でいうと田中さんのように話せばよかったかなとちょっと反省しております。

 −−今後も地方で執筆するのでしょうか。地方で住んでいると良い点、悪い点は?

 良い点の方が多い。こういう形で東京に出てきて会見しなくていいという点がある。悪い点はとくにこの仕事に対してはない。

 −−編集者、同業者と会うなどコミュニケーションの面では?

 コミュニケーションがいっぱい取れた方がいいと思いますけど、多いからいいものではないかなと思って。

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