藤巻亮太:ソロデビューで「人間くさかったり弱かったりする部分を描きたい」

ソロデビューシングルについて語った藤巻亮太さん
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ソロデビューシングルについて語った藤巻亮太さん

 レミオロメンのボーカルとして知られる藤巻亮太さんが、2月29日にシングル「光をあつめて」をリリースし、ソロデビューを果たした。10年12月にバンド結成10周年を迎えたことを一つの節目に、ソロ活動をスタートさせた藤巻さん。意気込みやソロ作品について聞いた。(水白京/毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−まず、ちょうど卒業シーズンということで、卒業ソングとしても親しまれているレミオロメンの楽曲「3月9日」についてお聞きしたいんですが、もともとは、友人の3月9日の結婚式で歌うために書き下ろした曲で、実際に当日、演奏をしたんですよね。

 新郎が友だちだったんですけど、「ドラムの音がめちゃくちゃデカくて歌はよく分かんなかった」って言われたのを覚えてますね(笑い)。ホントに2人のために作った曲だったので、こんなに大きな曲になるなんて当時は思ってなかったけれど、ドラマの影響(「1リットルの涙」劇中歌への起用)もあって、結婚式だけじゃなく、人生の旅立ちや新たな門出で歌ったり聴いたりしてもらえる曲になったなあっていうのは改めて思います。

 −−10年にバンド結成10周年を迎えたわけですが、ソロ活動をやろうと思い始めたのはいつごろだったんですか。

 (11年の)1月くらいから考えていて。でも、(3月の)震災以降、音楽をやっていいのかどうか、何を作ったらいいのか、みたいなことは、一時期答えが出なかったんです。そんな中、4月に被災地の避難所にカレーを届けるっていう炊き出しに参加したときがあって、当時、音楽をやるような雰囲気じゃないなと思ってたんですけど、そこで「何か1曲歌ってください」って声をかけてもらった経験が自分にとっては大きくて……。

 −−そこで実際に歌うことになったんですね。

 「3月9日」を歌ったんですけど、そのときに“必要としてくれている喜び"みたいなものをすごく感じたんです。それで「やっぱり自分の存在意義は音楽を作って届けることでしかない。そこに1回立ち返ろう」って思って。そこからすごく曲が作れるようになって、一番最初にできたのが、今回の「光をあつめて」なんです。震災のこともそうだけど、“すぐに答えは出ないかもしれないけど、目の前にあることを一歩でも二歩でも進めていこう"という思いがあって、その言葉「答えは出ないけど、歌は続いてゆく」が歌い出しで書けたとき、気持ちがすごく楽になったんですよね。「歌い続けること、作り続けることに意味があるんだ」と思って。それで徐々に、今やることはソロで何かに挑戦することだなあって自分の気持ちが整理されていって。11年は、1年がかりでいろんな気持ちが動いていった年でしたね。

 −−なるほど。では、その「光をあつめて」に込めた思いとは?

 光を光として素直に受け止められる気持ちで生きていきたい、光を見過ごしてしまうような気持ちでいたくないっていうのが根底にはあって。人は一人では生きていけないし、作用し合って生きてるわけですよね。その“光"が自分だけのものじゃないからこそ、誰かにスッとそれを渡せる気持ちがほしいし、もらったときに感謝の気持ちを抱きたいし。

 −−ソロならではの曲作りのアプローチはありますか。

 パーソナルな部分をより出して、素材の持ってるゴツゴツ感、デコボコ感を大事にしたいなって。削ったり磨いたりして形を整えていくことをあえてしないで、そのままの言葉を残したりとか。すごく人間くさかったり弱かったりするんだけど、そういう部分を描けたらなあと思って。そういう意味では「光をあつめて」より、2曲目の「ひとりぼっち」のほうがソロのマインドに近いのかも。“弱さを見せられる強さ"みたいなものがソロではテーマになっていくのかなと思っていて、そこにチャレンジしていきたいっていう気持ちの一端を担ってる曲だとは思います。

 −−3曲目のライブバージョンの「キャッチ&ボール」については?

 これはもう(「八月一周目。変化の兆し」という歌詞の通り)、8月の1週目にちょっとやる気を出したっていう歌ですよね(笑い)。7月ごろに「光をあつめて」を書き上げて、そっからさらに何曲か作っていった中の1曲で、気持ち的にはソロに傾いていて、手探りしながら作ってる曲だなって。ジャンプ台からまだジャンプしてない感じというか、まだ動き出してはないなっていう。ライブバージョンを聴くと、“過渡期な感じ"がすごくしますね。

 −−ソロ活動が始まる今の心境を表すなら、“身の引き締まる緊張感"なのか、“ワクワクして楽しみ"なのか、どっちですか?

 これがまた日々揺れ動く感じなんですよ。どっちも入り交じりますよね。でもそれは、いろんな価値観に出合っていけているということだと思うから、そのすべてを(作品に)詰め込んでいけたらいいんじゃないかなって。今、アルバムを作ってるんですけど、アルバムができるころには、もうちょっと上手に(こういうインタビューで)語れるようになっていたいなって思いますね(笑い)。

 <プロフィル>

 80年1月12日生まれ、山梨県出身。00年12月にレミオロメンを結成し、03年3月ミニアルバム「フェスタ」でデビュー。04年3月に3枚目のシングル「3月9日」、05年11月に8枚目のシングル「粉雪」をリリース。初めてハマッたポップカルチャーは「ガン消し」(ガンダム消しゴム)。「小学生のころ、ガン消しを“ガチャガチャ”で集めてました。友だち(のガン消し)と闘わせて、一緒に闘ってる気持ちになれたり、あのころは感情移入の仕方がハンパなかったです。今は、全部どこにあるのかも、もはや分からないですけど(笑い)」と話した。

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