朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第75回「クトゥルフ神話」

「ラヴクラフト全集<1>」作・H・P・ラヴクラフト(創元推理文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
1 / 1
「ラヴクラフト全集<1>」作・H・P・ラヴクラフト(創元推理文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第75回は「クトゥルフ神話」だ。

あなたにオススメ

 ◇

 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 以前にもお話ししましたが、6月19日は「朗読の日」。

 そこで、今回は朗読がより普及することを願って、「朗読セールストーク」に挑戦してみたいと思います。

 誰かの朗読を静かに聴き入るのもよいですけれど、一度は「朗読する側」になってみるのはいかがでしょうか?

 お気に入りの本を手に取って、声を出して朗読してみてください。

 物語の主人公になった気分を味わえると同時に、表現することの楽しさに気付くはずです。

 朗読には、他にもちょっとうれしい副産物があるんですよ。

 皆さんも、おしゃべりに熱中していたらおなかがすいた……という経験が一度はあるんじゃないでしょうか。

 「声を出す」という行為は、意外とカロリーを消費する運動なんです。

 ダイエット効果を期待して始めてみる、というのもいいかもしれませんね。

 声を出すのは頭の体操にもなりますから、頭と身体の両方を一度に運動できてしまうとってもお得なトレーニングと言えるのではないでしょうか!

 しかも、必要な道具は本だけです。

 図書館で借りてくれば、お金もかかりませんから、お財布にもやさしい。

 皆さんも、この機会に「朗読」を始めてみませんか?

 ……どうでしょうか?

 少しでも「朗読、してみようかな?」という気持ちになってもらえたらうれしいです(*^^*)

 ちなみに朗読でおなかがすいたときは、おにぎりがよいですよ。

 なぜなら朗読の日の1日前、6月18日は「おにぎりの日」ですから……。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……最後の大会前のお話、第3回です。

 先生に案内されてやってきたカラオケボックス。

 朗読の秘密特訓メニューを期待した私たちでしたが、先生は普通に歌を歌い始めてしまいました。

 気分転換に誘っただけだと言う先生に対し、あっけにとられてしまった私たちでしたが……。

 その沈黙を破ってマイクを手に取ったのは、みかえさんでした。

 そのまま先生と同じように歌い始めてしまったみかえさんにつられてか、部長さんも半ばやけになったように。

 「こうなったら、もう歌っちゃおう!」

 と、みかえさんとデュエットを始めてしまったのです。

 一人置いていかれそうになってしまった私もあわててマイクを握り、歌い始めました。

 声を合わせて歌う難しさは文化祭のコーラス部飛び入りの件で痛感していましたから、ずれないようにずれないようにと必死で歌い続けているうちに、いつしか大会のプレッシャーも頭の中から追い出されてしまっていました。

 それは一緒に歌っていたみかえさんと部長も同じだったようで、何曲か歌っているうちに、暗く沈みきっていた表情がみるみる生き生きとしてくるのがわかりました。

 きっと、私も同じ顔をしていたんだと思います。

 「気分転換できたか?」

 という先生の問いかけに、私たち3人は笑顔で返事をしました。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 「クトゥルフ神話」

 こんにちは、今回はアメリカの怪奇・幻想文学の巨匠、ハワード・フィリップス・ラブクラフトさんと、彼の生み出した世界観に賛同した作家さんたちによって作り上げられた神話体系「クトゥルフ神話」をご紹介します。

 神話というと「ギリシャ神話」や「北欧神話」、そして以前ご紹介した古事記での「日本神話」など、古い言い伝えがほとんどですが、これらと比べて「クトゥルフ神話」は、「指輪物語」などと同様、言い伝えによる本当の神話ではなく、最初から創作された神話体系という点で大きく異なります。

 ラブクラフトさんは1920年代から、「宇宙の中では極めて矮小(わいしょう)な存在」である人類が、人知を超えた存在からもたらされる「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」を主題とした物語を執筆し、一部で熱狂的なファンを獲得していましたが、1937年に46歳の若さで亡くなられてしまいました。

 ラブクラフトさんを尊敬し弟子を自任していた作家のオーガスト・ダーレスさんは、生前に「インスマウスの影」一冊しか出版されず、世間の認知度が低いラブクラフトさんの作品集を出版するため、1939年、同じくラブクラフトさんを師と仰ぐ作家のドナルド・ワンドレイさんと「アーカム・ハウス」出版社を設立。

 また、ダーレスさんはラブクラフトさんの創造した世界観、作品内に登場する神々を整理・体系化し普及に努めました。

 ラブクラフトさんが生みの親とするなら、ダーレスさんは育ての親ともいえる功労者で、彼がいなかったら後に続く多くの作家さんたちがこの作品世界を知り、影響を受けることもなかったでしょう。

 ただし、神話体系化の際にダーレスさんが付け足したとされる「善悪二元論」と「四大元素」については作品世界の主題である「宇宙的恐怖」から外れてしまっているという批判の声があり、功罪両面を持つ彼の実績としてよく取り上げられています。

 最後に余談ですが、神々の容姿の多くがタコやイカなどの海産物に似たイメージを持っているのは、ラブクラフトさんが魚介類嫌いだったためだと言われています。

 嫌いな食べ物も、恐怖の対象とも言えるのかもしれませんね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

ブック 最新記事